061「検証(ダンジョンにて)①」
——次の日
今日は学園も休みということで、朝早くに生活魔法クラブに皆集合していた。
「皆さん、おはようございます。今日はこれからラルフ君の作った魔道具⋯⋯というよりも、魔石状態の段階ではあるが、これの効果についての検証を行いに、ダンジョンへ行きたいと思います」
「へ〜、これにラルフが創造した魔法が封入されているのか?」
「うわぁ〜、これがそうなんですね〜」
すると、レイカ先輩とミーシャがフリオ先生の持つ魔石を食い入るように見つめている。
「そうです。で、その検証ですが、この中でも戦闘力のあるレイカ君と私で行いたいと思います」
昨日、事前にフリオ先生から話を聞いていたので、『鎌鼬の狂い刃』を封入した魔石をもう一つ用意していた。
「あ、あの⋯⋯」
「何でしょう、テイラー君」
「レイカ先輩とフリオ先生はダンジョンで魔物と戦ったことあるのですか?」
「ええ、もちろん。こう見えて私は『土魔法上級士』ですし、レイカ君は『火魔法上級士』ですからね」
「す、すごい! 二人とも上級士なんすか!?」
「フン。どうだ? すごいだろ?」
レイカ先輩がドヤ顔する。
「あ、先生! 私も戦えますよ!」
とはミーシャ。
「いえ、さすがに第一王女のミーシャ君にはさせられませんよっ!?」
「えー、戦えるのに〜」
ミーシャがブスッとする。やはり、お転婆な感じだ。だが、そんな顔もまた可愛い。眼福である。
「⋯⋯お嬢様。当然です。あなたの身に何かあってはいけません!」
そして、ミーシャの横ではサブリナが注意をするといういつものやり取り。
「大した魔物は出ないと思いますが、サブリナさんはミーシャさんの護衛をお願いします」
「もちろんです」
「では、出発しましょう!」
ということで、一通り話が済むと私たちはダンジョンへと向かった。
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「ここがダンジョン⋯⋯」
学園から出たあと、王都を出て、東へと進んだ先に森があり、その森の少し奥に行くとダンジョンはあった。この世界に来て初めてのダンジョンである。
ダンジョンの入口は洞窟の入口のようになっていて、そこには鉄の扉があり、その前に二人の兵士が立っていた。門番みたいな感じのようだ。
「どうも。セルティア魔法学園から来ました」
「はい。では、こちらにサインをお願いします」
そう言って、フリオ先生が必要事項を記入している。
「ありがとうございます。ではどうぞ」
「どうも」
そうして、ダンジョンの入口が兵士の手によって開かれると私たちは中へと入っていった。
「へ〜、これがダンジョンの中⋯⋯」
中に入ると、ゴツゴツした岩壁と岩壁よりは滑らかな地面が現れた。
「ラルフ君はダンジョンは初めてなんですか?」
「はい」
「俺も初めてです」
「テイラー君も⋯⋯。まー確かにダンジョンなんて成人して冒険者や騎士にでもならないと入る機会はないですからね」
「私は初めてじゃないですよ」
「え? ミーシャ初めてじゃないの?」
「うん。レオお兄様と何回か一緒に来たことがあるわ。ここよりもランクの高いダンジョンだったわ」
「「マ、マジ⋯⋯?」」
「マジ! ね、サブリナ!」
「はい。お嬢様はお二人よりも強いですから。当然です。一緒にしないでください」
「「うっ?!」」
そう言って、サブリナのいつもの辛口コメントと睨みが炸裂する。
「もー! サブリナ! ラルフ君やテイラー君にもうちょっとやさしくしてあげてよ!」
「別に⋯⋯これがいつもの私ですので」
「もー! サブリナったら!」
どうやら、サブリナさんは相変わらず俺とテイラーが『ミーシャお嬢様』と仲良くするのはいただけないと思っているらしい。
「はっはっはっ! 大変だな、お前ら」
すると、横からまさに他人事のようにちゃちゃを入れてきたのはレイカ先輩。
「はいはい、皆さん。私語は慎んでください。一応ダンジョンに入っているんですからね」
フリオ先生は一声注意を入れると、「では、まいります。気を引き締めてください!」と言って進み始めた。
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「お、あれは魔物じゃないか?」
「そうですね」
前を行くフリオ先生とレイカ先輩が魔物を確認すると、
「前から魔物が出ました。あれはジャックウルフですね。数は⋯⋯3匹ですか」
「よーし! それじゃあ、早速ラルフの魔石を使ってみるか!」
そう言って、レイカ先輩が私が魔法封入した魔石を右手に持つと魔物に向かってかざした。
「いっけぇぇぇ!」
ドン⋯⋯っ!!
レイカ先輩の声を合図に魔石が光ると、『鎌鼬の狂い刃』が発動。無数の真空の刃がジャックウルフに向かっていった。
ズバババババババババ⋯⋯っ!!!!
「グギャウ!」
「キャウン!」
「ギャワウ!」
魔法をまともに食らったジャックウルフたちは真空の刃によりズタズタに体を刻まれると、そのまま息絶えた。
「フ、フリオ⋯⋯」
「はい」
「こ、このラルフのオリジナル魔法が⋯⋯生活魔法だってのか?」
「はい、そうです」
「マジか⋯⋯。こんな威力の魔法が⋯⋯生活魔法だなんて⋯⋯」
レイカ先輩は私のオリジナル魔法を見て何か考え込んでいるのか難しい顔をしていた。すると、
「な、なななな⋯⋯何よ、今のぉぉ〜〜〜っ!!!!」
「え⋯⋯?」
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo
 




