047「学園に来て1ヶ月が経ちました②」
「もう、へばったのかい?」
「う、うるさい! はぁはぁ⋯⋯ちくしょう⋯⋯」
その時だった。
「あ、いいな〜! ウチも混ぜるアル〜!」
私とライズに声をかけてきたのは、
「「レンレン!」」
ヤン男爵家の令嬢『ヤン・レンレン』。彼女は貴族の令嬢ではあるが、去年、平民から一代限りの貴族になったばかりであるため、その子供であるレンレンは貴族というよりもむしろ平民のような言葉遣いや振る舞いである。
本来であれば、貴族となったからにはその平民の言葉遣いや振る舞いは直さなきゃいけないが、個人的にはこのままのレンレンのほうがいいと思っている。
「はぁはぁ⋯⋯じゃあ、レンレン、早速交代してくれ!」
ギブアップ宣言するライズ。
「オッケー! 選手交代アル〜!」
嬉々とした表情でライズと変わるレンレン。
「あれ? レンレン、木刀は?」
「いらないアル。ウチは『拳』があればいいから」
と、レンレンはいつもの自身が所有している『籠手』を見せる。
「また? レンレンが体術凄いのはわかるけど剣術も練習しなよ」
「いいから、いいから。やるアル〜」
「ったく⋯⋯しょうがないな〜。じゃあ、私も体術でやろうかな」
そう言って、私は木刀を地面に置いた。
「いやいや⋯⋯ラルフはそのまま木刀使っていいアルよ? ていうか、ウチ体術は負ける気しないし、実力差があると思うから木刀使いなよ」
「大丈夫、大丈夫。一応私も体術と剣術は同じくらい小さい頃からやっているから」
「う〜ん⋯⋯まー体術経験者なのかもしれないけど⋯⋯。ウチが使うのは体術じゃなくて『拳法』っていうもので、ちょっと⋯⋯あ、いやだいぶ『体術』とは違うんだよね〜⋯⋯」
「拳法?」
え? 拳法って、まさか⋯⋯あの⋯⋯?
「うん。だからラルフは木刀使っていいアルよ?」
どうやら、レンレンは拳法にかなりの自信があるようだ。しかし、であれば尚更、挑戦してみたくなる。
「ありがとう。でも、今のところ、剣術・体術もテイラー以外には負けてないから」
私はレンレンのアドバイスに抵抗する。
「強情アルね。わかったアル。じゃあ、その余裕へし折ってやるアル!」
すると、レンレンの顔がマジモードに切り替わった。こ、怖ぇ〜。
「⋯⋯お手柔らかに」
「よーし、じゃあ、俺が審判するぞ」
と、ライズが間に入ってきた。
「いいか? それじゃ⋯⋯⋯⋯はじめっ!!」
ドン!
開始の合図と同時に、一瞬でレンレンが間合いを詰めてきた。
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「速っ!?⋯⋯⋯⋯くっ!!」
ビュン!
私は間合いを詰めると同時に拳を繰り出すレンレンの攻撃を上半身を捻ってすんでのところで躱す。
「なっ?! 避けられたっ!!」
私はその捻った上半身を流れのまま地面に両手をつき、攻撃を避けられ無防備となっている背中へ蹴りを繰り出す。
「うぐっ?! チッ! うまいアルね!」
レンレンは私の蹴りが当たる直前、ダメージが軽微となる箇所にあたるよう体を動かし、私の蹴りに対しての衝撃を緩和させる。
そうして、私とレンレンはここで一度距離を取る。
「す、すごいアル⋯⋯。これだけの動きができるなんて⋯⋯」
「ありがとう」
「これだけの動きができるなら、ここからは拳法メインでいくアル」
「え?」
スッ。
そう言うと、レンレンが『構え』をした。それはまさに⋯⋯⋯⋯地球にいた頃に観たことのあるカンフー映画のソレだった。
「哈ぁ!」
ダン!
レンレンが気合いを入れて構えた左足で地面を力強く蹴った。その勢いで真正面から迫ると無数の拳を突き出してくる。
「くっ!?」
私は必死にその繰り出す無数の拳を手で払いのけるが、その払いのける拳は払われて終わることなく、さらに次の攻撃へと連動していく。その動きは私が地球にいた頃のカンフー映画で特に好きだった拳法に酷似していた。それは⋯⋯、
「こ、これは⋯⋯⋯⋯詠春拳!」
レンレンの繰り出す攻撃は、まさにカンフー映画の歴史でその名を刻む『ブルー◯・リー』の師である『イッ◯マン』の拳法『詠春拳』そのものだった。
「哈! 哈! 哈! 哈! 哈! 哈!⋯⋯っ!!!!」
ガッ! ガガッ!
繰り出す攻撃がすべて連動するレンレンの詠春拳に、私は徐々に捌ききれなくなり、そして、
「哈いぃぃ!!!!」
バキッ!
「ぐはぁぁっ!!!!」
「それまで!」
「やったぁぁ! 勝ったアルぅぅ〜〜〜っ!!!!」
レンレンに負けた。
「うおっ! レンレンがラルフに勝った!」
「すげぇぇ!」
わぁぁぁ!
レンレンの勝利に周囲の皆が歓声を上げた。
「ありがとうアル! ありがとうアル〜!」
レンレンが周囲の歓声に応える。そんなレンレンの姿を見て私は彼女に悔しさを感じる⋯⋯⋯⋯ことなど微塵もなく、むしろ、|喜びと感動に満ち溢れていた《・・・・・・・・・・・・・》。
それは、前世でカンフー映画で憧れていた『詠春拳』がこの世界にあることに!
「レンレン!」
「うわっ! な、何アルか?」
「私に⋯⋯⋯⋯私にその拳法を教えてください!」
そう言って、私はレンレンに右手を突き出した。
「え? え? え?」
それはまるで、
「「「「お、おい⋯⋯ラルフがレンレンに告ったぁぁぁ〜〜〜っ!!!!」」」」
レンレンに『愛の告白』をしたかのような状況となっていた。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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『毎週土曜日13時更新』です。
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mitsuzo




