041「金髪ポニテヤンキー先輩『レイカ・シュバイツァー』」
「ああっ!? んだ、てめぇ〜⋯⋯?」
目の前に、背中まであるきれいなブロンドロングヘアーを真っ赤なリボンでまとめた美少女⋯⋯いわゆるポニーテルをしたすごい美少女が、眉間に皺を寄せ、すんごいガンを飛ばしてた。
そう、それはまるで『女ヤンキー』そのものだった。
ていうか、この世界にもこんな女ヤンキー⋯⋯『スケバン』さんがいたとは。ちなみに、スカートはおみ足をすっぽりと全隠ししたロングスカートで、上半身のブレザーの制服は少し短くしている。いやマジで『スケバン』ですやん。
「あ、え〜と、わ、私は1年生で⋯⋯⋯⋯」
「ああっ?! 1年だぁ〜!」
「にゅ、入部希望で来ました! ラルフ・ウォーカーと申しますっ!!!!」
ビシッ!
私は指先まで意識して、自分史上最高の『気をつけ』を披露する。
ここは勝負どころだ! 出し惜しみはなしだっ!!
「何? 入部希望者⋯⋯⋯⋯だと?」
ガバッ!
突然、金髪ヤンキー先輩が目の前まで一瞬で距離を詰めた。
じーーーーー⋯⋯。
「ち、近い⋯⋯。せ、先輩⋯⋯?」
じーーーーー⋯⋯。
先輩はしばらくジーッと私の顔⋯⋯というより目を見つめ続ける。
ていうか、顔近いから! かなり照れるんですがっ!?
ていうか、目の前で見たら先輩マジ美少女過ぎる件っ!!!!
「そっかー! ようこそ、生活魔法クラブへっ!!」
ガシッ!
すると、先輩が私を⋯⋯⋯⋯思いっきり抱きしめた。
「dじゃkl:あ;kがか;jぃ*+*ふじこっ!!!!」
ブーーーーーー!
私はスタリオン先生と同じように鼻血を吹き出した(いや、結果は一緒だけど意味合いは違うからね?)。そんな鼻血ブーな私は先輩の予期せぬ行動に完全グロッキー状態となった。
先生——鼻血出してぶっ倒れ状態(一発KO)。
私——鼻血出してグロッキー状態(意識朦朧)。
先輩——私をぎゅっしてる状態(ここは天国かな?)。
つまり——カオスな世界が広がっていた。
********************
「おい、フリオ! こいつ、マジで新入部員なのか!!」
「は、はい⋯⋯そう⋯⋯です⋯⋯マジです⋯⋯」
ガックン、ガックン、ガックン、ガックン、ガックン、ガックン、ガックン⋯⋯!
スタリオ⋯⋯フリオ先生は、先輩に胸ぐらを掴まれ、高速ガックンされていた(あ、先生がまた意識を手放そうとしている)。
「ゴホッ、ゴホッ⋯⋯! え、えーと、こちら、生活魔法クラブ唯一の部員兼部長のレイカ・シュバイツァー君だ」
「レイカ・シュバイツァーだ! よろしく、ラルフ・ウォーカー! お前あれだろ? 東の辺境伯ウォーカー家の嫡男で『生活魔法っぽい称号』をもらったっていう⋯⋯」
「! よ、よくご存知で⋯⋯」
「たりめーだろ! こちとら三大侯爵の一角張ってんだぞ!」
「な、なるほど⋯⋯」
「学園に入学したってことは、やはり、跡目は弟のヘンリー・ウォーカーが継ぐのか?」
「はい」
「そうか。で、『生活魔法っぽい称号』だから、その生活魔法が活かせないかということで入部希望したってところか⋯⋯」
「ま、まあ、そんなところです」
今は『ラルフ式生活魔法』の話はやめておこう。
「なるほどな〜。よし、わかった! お前の入部を許可してやろう!」
「あ、ありがとうございます!」
「あ、ちなみに一つ言っておくが⋯⋯」
「はい?」
「現時点で、生活魔法にて真新しい発見はない。つまり、現状どおり『日常生活で使える程度のクズ魔法』というレッテルはそのままだ」
「そう⋯⋯なんですね」
「もちろん、まだ諦めたわけじゃない。ただな⋯⋯」
「ただ⋯⋯?」
「来月までに部員を最低あと1人確保しなきゃ、この『生活魔法クラブ』は⋯⋯⋯⋯廃部だ」
「は、はい。フリオ先生もそう言ってました。そのことなんですが⋯⋯」
「ん?」
「ちょっと心当たりがあるのでちょっと連れてきます」
「「何っ?!」」
——30分後
「⋯⋯ということで、呼んできました」
「ちょっ!? 何、突然!」
「生贄の⋯⋯あ、いや、新入部員のテイラー・バレンタインです」
「今、『生贄』つったよね! ていうか、新入部員って何のことっ?!」
研究室から出たラルフは男子寮へ向かい、テイラーを見つけるや否や拉致ると、そのまま生活魔法クラブの研究室に戻ってきた。
「おお、何と! こんな迅速に新入部員を連れてきて廃部問題をスピード解決するとは! やるな、ラルフ・ウォーカーっ!!」
レイカ先輩が満面の笑みで褒めてくれた。
「そっか。そっか。ありがとう、テイラー・バレンタイン君!」
よし! これで、万事解決⋯⋯、
「ちょっと待て〜〜〜〜〜〜いっ!!!!」
さっきまでプチ混乱していたテイラーが正気を取り戻し、横槍を入れてきた。⋯⋯チッ。
「おい、ラルフ! お前、今、舌打ちしたよねぇ?!」
「え? いやいや、そんなことは⋯⋯」
「ていうか、お願いだから説明してくれる?! 一体、何がどうしてこうなったっ!!!!」
しょうがないので、テイラーに事情を説明する。
「つまり、俺がこの『生活魔法クラブ』に入部すれば廃部が免れると?」
「そうだ! テイラー君、ぜひ、うちに入ってくれたまえ!」
フリオ先生がテイラーにプッシュ。そして、さらに、
「テイラー・バレンタイン! あたいはレイカ・シュバイツァー! お前の家のことはよ〜く知っている! ウチのクラブに入りなっ!!」
ここでレイカ先輩が追プッシュ。
「えっ?! レイカ・シュバイツァー!? あ、あのシュバイツァー侯爵家の⋯⋯っ?!」
「なんだ? お前、あたいのこと知ってんのか?」
「も、もちろんです! え? え? でも、何でシュバイツァー家のレイカご令嬢様が生活魔法のクラブに⋯⋯?」
「ん? あ〜まあ⋯⋯⋯⋯趣味だ」
「趣味っ?! セルティア王国三大侯爵の一角を担うシュバイツァー侯爵家のレイカ様が『生活魔法』に関するクラブに在籍って⋯⋯⋯⋯大丈夫なのですかっ!?」
「問題ない。両親にもちゃんと許可は取っている」
「うむ。ちゃんとシュバイツァー家のご当主様や奥方様にはご報告済みだよ」
「ス、スタリオン先生! マ、マジ⋯⋯かよ⋯⋯」
テイラーがかなり動揺しているご様子。どうやら、レイカ先輩が侯爵家でも三大侯爵と言われている、なんかすんごい家っぽいことと、そのレイカ先輩が『生活魔法クラブ』に在籍していることにかなり驚いているようだった。
たしかに王国で影響力のある家の子が『生活魔法』に関するクラブに属するのは『六大魔法絶対主義』のこの国では外聞的にだいぶよろしくないからな。
——場に少しの沈黙が流れる。そして、
「テイラー・バレンタイン卿⋯⋯」
「は、はい!」
ここで、レイカ先輩がニヤリと不敵な笑みを浮かべながら『卿』呼びでテイラーに声をかけた。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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mitsuzo




