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The sunrise of the world  作者: うぉるす
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6.個性的な彼ら

ソル学の敷地内にそびえ立つ大きな城。いくつもの高い棟が連なり、その1つの棟は屋根がドーム状になっており、中には庭園がある。


これは講義棟でも、寮でも、本館でもない。

ここはソル学が誇る図書館だ。

ソル学の図書館は世界で一番資料が多くあり、あらゆる魔法学者が利用しにくるほどである。

そんな図書館を管理しているのはソル学の学生である図書委員会の面々だ。




俺は今度行われる魔法実技試験のために、影の魔法に関する文献を探しに来ていた。



図書館の中はとてつもなく広く、探している本を見つけるのには時間がかかりそうだ。

1つ1つの本棚は、背が高く魔法書が隙間なく並び、魔法で常に動いている。

「影の魔法書は…っと…」

俺は片っ端から本棚を見ていこうとした。

「影の魔法書はそこにはない。そこは魔法力学の本棚だ。569番の本棚に行くといい。」

ハッと振り返ると、キラさんがいた。

青い短い髪、無表情の青い目、紺色の服に、足はなく下半身は水色の綺麗な鱗に鰭がある。

オーブ高等部キラ・クルース。彼の種族は人魚。

キラさんは図書委員会の委員長を務めている。図書館にあるすべての本の配置を把握しているらしい。

「キ、キラさん!ありがとうございます!」

「フン。礼を言われるほどのことはしていない。仕事をしただけだ。魔法実技試験対策か?」

「はい…俺は優秀じゃないんで少しでも頑張らないと…」

「ぁぁ、メッザノッテ3バカの1人だもんな。ついてこい。ぴったりの本があるぞ。」

そういうとキラさんはスーッと図書館の奥の方へと進んでいった。

キラさんについていくと、広い部屋についた。

その部屋にある本棚はすべて浮いていてふよふよと部屋の中を漂っていた。

床には大きな魔法陣が描かれている。

「これは…」

「よく見ておけ。」

キラさんはそういうと、左腕を上げ、魔力を集め始めた。

青く光る左腕を勢いよく振り下ろすと、魔法陣が光を放つ。

慌てて上を見上げると漂っていた本棚が一定の速度で円を描くように回り始め、やがて1つの本棚が魔法陣の上にそっと降り立った。

569と書かれた本棚だった。

「す、すげえ……」

俺が思わずそう呟くと、キラさんは1冊の本を手に取った。

「これは影魔法実践魔道書だ。これが1番わかりやすく、実践について細かく書かれている。借りていけ。」

「あ、ありがとうございます!!」

「礼はいい。代わりに1つ頼みがある。」

キラさんはそう言って微かに笑った。







「お…重い……」

ゆっくりとした足取りで俺は講義棟の一階へ向かっていた。

キラさんに本を選んでもらった俺は、大量の本を保健室へと運んでいる。お礼の代わり、だそうだ。

それにしても1人で持つ量じゃない…

俺がブツブツと文句を言いながら歩いていると、

「ノワ!」

「うわぁ!」

いきなり後ろから肩を叩かれ、思わず本を落としてしまった。

振り返ると申し訳なさそうな顔をした天先輩がいた。

「わ、悪かったノワ!怪我はない?」

「だ、大丈夫っす!」

天先輩が本を拾ってくれた。

「これは……キラに頼まれたの?ハハッ1人で持てる量じゃないね〜!」

そう言って笑いながらさりげなく半分持ってくれた。

モテるわけだ。

「すみません…ありがとうございます!」

「ま、俺も図書委員だからね〜」

天先輩の優しさを感じながら、軽い足取りで保健室へと向かった。


保健室の前に行くと、どうやら保健室の先生は不在のようだった。

扉を開けると、机の向こう側に耳が見えた。

保健室にいたのは保健委員のフェリチタだ。

黄色いふわふわの髪に、青いまんまるの目、頰は赤く染まり、耳はピンと立ち、黄色と水色のふわふわした洋服を着ている。ジョルナータ初等部、フェリチタ・コニッリア。種族は月兎。

フェリチタは小さくて可愛い。学園のみんなに可愛がられていて、声を聞くことができた人はとてもラッキーだと言われている。

「こんにちは、フェリチタ。キラ先輩から頼まれて、保健委員に届け物を持ってきたんだ。どこに置けばいいかな?」

フェリチタはペコペコと頭を下げてニコッと微笑んだ。俺の裾を引っ張り、保健室の机の上を指差した。

「ここに置けばいいんだね?」

俺と天先輩は運んできた本をそっと机の上に置いた。

再びフェリチタがペコペコと頭を下げる。

「どういたしまして」

天先輩がそういうと、フェリチタは満面の笑みで頷いた。

「フェリチタ、いま1人なの?ほかの保健委員は…」

保健委員会には治癒魔法が得意な人たちが属しており、エスポワールのファテリーをはじめ、ルカ、ジョルナータ初等部のアーク、ルカなどがいる。ちなみにルカは治癒魔法は得意ではない。あともう1人、マッティーナ中等部の…

その時、保健室の扉が勢いよく開いた。

「あれぇ〜?誰かいる〜?あ!えっと…えっと…フ……フェリタちゃん!本届いたんだねぇ!」

のんびりとした口調で話すのは、イーラ・ティニアス。

緑がかった白い髪に、鋭い黄色の目、頭には無造作に包帯を巻いており、白と緑のシャツに包帯でできたネクタイを緩くしめている。マッティーナ中等部、種族はミイラだ。

イーラさんは俺と天先輩に気づくと…少し考え込んだ。

「えっと…………たん…?つん…?あ、トントンと……ワル…?…えっと、モワール・アンブレラじゃん〜何してるの〜?」

イーラさんはルカの親友(?)で、ルカにしか興味がなく、他の人の名前を覚えていない。

「イーラさん…キラ先輩に頼まれて、俺と天先輩で本を運んだんすよ。」

「相変わらず名前全然覚えてくれないのな、イーラは」

天先輩はそう言って笑った。

イーラさんは俺をジロジロと見たあと、機嫌がよさそうに笑った。

「今日はルカと一緒じゃないんだねぇ。よかったよかった。」

イーラさんは俺とルカが仲良いことに嫉妬してよくいたずらで魔法をかけてくる。

この前は頭に花を生やされて散々みんなにからかわれた。

「一緒じゃないですから…今日は勘弁してくださいよ!キラ先輩に頼まれた仕事しただけですから!」

「うんうん。いい子だねぇ。この本重かったでしょ〜?ありがとねぇ。」

そう言ってイーラさんはニッコリ笑った。

「でも魔法使えば簡単に運べたのにねぇ…筋トレでもしてるの?」

心底不思議そうにイーラさんがそう言った。

「ハッ……そういえば魔法使えば天先輩にわざわざ手伝っていただかなくてもよかったのに…」

「俺もすっかり忘れてたよ…」

フェリチタがクスクスと笑い、俺たちはつられて笑った。

「じゃ!俺とフェチリは保健委員の仕事あるから〜!タンタンとモビールお手伝いありがとねぇ〜!」

イーラさんは終始みんなの名前を間違えていた。





保健室を出ると、ちょうど12時のチャイムが鳴った。

「そろそろお昼かぁ…ルナン探して3人で食べようか?」

「ありがとうございます!じゃあ食堂いきましょう!」

混み始めた食堂をキョロキョロと見渡すと、ルナン先輩とハイネが一緒に座っていた。

2人の元へ行き、声をかける。

「ルナン先輩!ハイネ!ルカは一緒じゃないんですか??」

いつもいるルカの姿がないため、不思議に思い、そう聞くと、

「あぁ、ノワ、てんてん!それが12時なった瞬間、血相変えてどこかへ行っちゃったんだよな…なんだったんだろ…」

「ルカ!放送がなんたらって言ってた!メシ!」

ハイネはそういうと、席を立って購買へと走っていった。


放送?ルカは確かに放送委員だけど…放送委員といえば…もしかして…



『今日のお昼ゴハンの放送はホリーなのです!

ソル学の皆さんこんにちハ!今日はお知らせがあるですヨー!』



放送の声を聞き、食堂にいた人たちがざわつき始めた。

この声は放送委員のホリー・ルーカス。ホリー先輩はオーブ高等部。種族はセイレーンで、ある特殊能力を持っている。


『明日はまちがまった…まちをまった…?しょとーぶの遠足、なのです!大きいお姉さんお兄さんのみなさんで、付きそいのアルバイトがしたい輩は、エスポパールまで言えです!』


ホリー先輩は声がとても綺麗だが、カタコトで標準語が苦手だ。


『それでは!ココで!ホリーがひとつ歌いマス!とっておきですヨ!』

ホリー先輩が息を吸い込む音が聞こえた。

放送を聞いていたソル学生が魔法で耳を守る。

ホリー先輩はセイレーン。セイレーンの歌声を聴くと正気を保てなくなるのだ。

魔法で耳を守り構えていると、突如放送がブツッと音を立てて切れた。

再びマイクがオンになると、ルカの声がした。


『はーい。今日の放送はおわりだよ〜。放送担当はホリーとルカでした〜』

『くろすけさん!なんで歌うのだめですカ!』

『はいはいまた今度ねぇ〜』



急遽駆けつけたルカにより、ホリーの歌が全校に流れる自体は防がれた。



この件をキッカケにルカの株が大きく上がったことは言うまでもない。



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