7.えんそくっ!
「おーべんとっおーべんとっうーれしいなー♪」
「ルメロス〜!ルメロスも、るーくんにおべんとうつくってもらったの?」
「クララ!うん!ルナンくんがね、あのね、たこさんうぃんなーと、うさぎさんのりんごと、それと…」
「モカはお兄ちゃんにおべんとうつくってもらったもん!いちばんおいしいもん!」
中庭の噴水広場では初等部の生徒がワイワイと楽しそうに話していた。
今日は初等部の遠足の日だ。
ルメロスとクララと一緒に話しているモカはメッザノッテ初等部、種族は髑髏族。綺麗なピンクの長い髪をツーサイドアップでまとめ、白いリボンをつけ、ふわふわのフリルがついた可愛い洋服を着ている。
3人がワイワイと話しているとそこにマッティーナ中等部のグレーテが近づいていった。
「なになに!お弁当の話?!」
「うん!えっとね、たこさんうぃんなーと、うさぎさんのりんごと…」
「それさっきもきいたし!」
「いいなー!ルナンにつくってもらったんだろ!私のお弁当は具沢山のシチューなんだ!」
グレーテは、オレンジ色のツインテールに、白いシャツに大きな緑色のリボンをつけ、黒いショートパンツにブーツ、大きな杖とお弁当箱を持っている。
グレーテ・シュミット。種族はドワーフ。
楽しそうな4人を俺は遠巻きに眺めている。
なぜ初等部の遠足の集合場所に中等部である俺やグレーテがいるのかというと、初等部遠足の付き添いの校内アルバイトだ。
人手が足りないからとルナン先輩に頼まれたのだ。
「はーい!初等部の皆さん!クラスごとに並びましょう!ジョルナータは私のところへ!メッザノッテはルナ先輩のところへ!マッティーナはファテちゃん先輩のところへ!オーブはホリー先輩のところですよ〜!」
シエリアが広場にいた初等部の生徒に声をかける。
どうやらネーヴェさんは今日はいないようだ。
綺麗なふわふわの金髪に、青い髪飾りをつけ、紺色のポンチョマントを身につけ、なぜか外なのにもかかわらず裸足でいる。
以前お昼の放送で騒動を起こしたオーブ高等部のホリー・ルーカス。種族はセイレーン。
「ハーイ!今日はおチビセンパイはいませんですから、私のところに並ぶですよー!早く並んだ子はお歌を聞けるですよー!」
そういうホリー先輩の言葉を聞き、誰も並びたがらないのではと思ったが言わないでおいた。
初等部遠足の付き添いは、シエリア、ルナン先輩、ファテリー先輩、ホリー先輩、天先輩、グレーテ、レイナルドさん、俺の8人だ。
俺が列の後ろから初等部の生徒の様子を見ているとレイナルドさんが話しかけてきた。
「ノワール!ルナンに頼まれたの?www」
「そうなんすよ。人手足りないからって。レイナルドさんは?金欠っすか?」
赤い外はねの髪、真っ赤な目に黒いメガネをかけ、軍服のような制服を着て、ニコニコと笑っている。
ジョルナータ高等部、レイナルド・ルルーシュ。種族はバンパイア。レイナルドには双子の姉がいる。
「違う違うwwバカにしてる?wwルメちゃんが遠足行くっていうからここは寮が同室の兄的ポジションの俺が守らなきゃみたいな?!」
レイナルドはいつも笑っていてとても明るい人だ。
「はい!じゃあ皆さん!グループに分かれて行動しますよー!グループ分けを発表します!
まずルメロス、クララ、モカ!このグループにはレイナルドさんが付きます!」
レイナルドが3人の元に言って明るく声をかける。
「よろしくねー!wwお兄さんがみんなのこと守っちゃうよー!」
初等部の子達がシエリアにどんどん名前を呼ばれていく。
「次!アリィ、八木、フューラス、フェリチタ!
このグループにはノワールと私が付きます!」
4人の元に俺が近づくとアリィが馬鹿にしたように笑った。
「ノワールで大丈夫なのー?シエちゃんに迷惑かけないでよね!」
「るせー!わかってるよ!」
「ノワールくんは頼りないですが中等部ですし大丈夫だと思いますよ。」
さらっとバカにしてくるのはジョルナータ初等部の八木カプラ。黄緑色の髪に、まろまゆ、ヤギのような目、白いシャツにベストを着て、ダボダボのズボンから見えるのはヤギの足だ。
種族はヤギ族。いつも目を閉じているが、人をバカにするときは目を開けている。
つまり今は目を開けている。
何か言い返そうと思ったが、うまい言葉が見つからず、諦めた。
「シエとノワくんがしっかり守りますからね!安心してください!」
そう言って笑うシエリア。同い年とは思えないくらい頼もしい
…さすがエスポワールだ。
「それではみなさん!集合時間と場所は大丈夫ですか??
16時に、リリビア公園集合ですよー!
それでは気をつけて行ってきてくださいね!」
はーい!と初等部の生徒が元気に返事をし、グループごとに出発していく。移動手段は自由だ。歩いていくグループ、飛んでいくグループ、箒に乗っていくグループ。
俺たちのグループはというと…
目の前にあるのはピンクのキラキラの馬車だ。馬車を引いているのはペガサス。
「なんでこんなメルヘンなので行くんだ!?」
思わずそうつっこむと、
「フェリちゃんがこれがいいって言ったんだからね!」
と、アリィが笑いながら言った。
フェリチタを見ると目をキラキラさせとても嬉しそうにしていた。
こんなメルヘンな馬車を1番嫌がりそうな八木でさえ、喜ぶフェリチタを見て仕方ないなという顔をしていた。
1人ずつ馬車に乗り込んでいくと、背がとても高い子がドアに頭をぶつけた。
「いててて…」
グレーのふわふわの髪に、黄色い綺麗なタレ目、水色のチェックの長いマフラーをつけ、白いふわふわのポンチョを着ている。身長は181cmあるらしい。彼女は、オーブ初等部、フューラス・ブラン。種族は熊族。
「狭いところ苦手なんだけどなぁ…あれっ!」
そう言いながらブランが馬車の中に入ると、馬車は思っていたよりも広く、中も可愛い装飾が施されていた。
俺とシエリアが最後に乗り込み、馬車は出発した。もちろん、空飛ぶ馬車だ。
どんどん小さくなっていくソル学を窓から見下ろした。
街の入り口の広場に着き、馬車を降りる。
どんなルートで街を回るのか、お弁当をどこで食べるのか、何をするのかも自由なため、アリィたちが事前に決めている。渡された行動計画表を見る。
最初は魔法具専門店に行く予定だ。
先頭を歩くのはフューラスとフェリチタ。その後ろを気怠げに八木が歩く。アリィはシエリアの隣を心なしか嬉しそうに歩いている。俺は最後尾にいた。
フューラスとフェリチタの様子を見ると、なにやらフェリチタがアワアワとしていた。
隣を歩く…歩く?フューラスがなにやらフラフラしていた。慌てて駆けよってフューラスの顔を覗き込むと、目がとろんとしていて今にも眠りそうだった。
「おい!ブラン!歩いてる途中で寝るな!」
俺がフューラスの腕を引いてそういうと、ハッとしたように目を見開き、ゆっくりと笑った。
「んー?なぁにのーちゃん…?あれ?私寝てた?ごめんねぇ」
フューラスはどこでも寝れる。
俺はフューラスが無事起きたことに安心したものの、またいつ寝だすかわからないため隣を歩くことにした。
キラキラした目をして街をキョロキョロと見回すフェリチタと、その横をのんびり歩くフューラス。
八木は八木で街に滅多に来ないのか、なんだかソワソワとしていた。
アリィは街には目もくれず、シエリアとの会話に熱中していた。
そんなこんなで街の入り口から10分ほど歩くと最初の目的地の魔法具専門店に到着した。
そしてその店はなんと、空にあった。




