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The world is all fiction.  作者: Story teller
本編(仮)
28/28

ツカミとイナリ

「…ツカミ、何か考え事?」

「ん?ああ、イナリ。帰ってたのか。」

「うん、ただいま。それで、難しい顔して何考えてたの?」

「…いや、腹が減ったからな。今日の夕飯について考えてたんだ。頼んでいたものは手に入れられたか?」

「う、うん。」

「どれ。…お、こいつは期待以上だ。やるじゃないか、イナリ!」

「へへっ、まあね。」

「じゃあ、今夜はこれで晩餐といくか!」

「うん!」


「うんうん、美味い!今夜のは殊更に格別だな!」

「ものはいつものと余り変わらない気がするけど…。」

「それでもだ。気付かないうちに、イナリもだいぶ成長したんだな。」

「さっきはそれを考えてたの?」

「さあな!ほら、食え食え。さもないと私がイナリの分まで平らげるぞ。」

「…ねえ、ツカミ。」

「あんだ?」

「今日のツカミは何か変だよ…。僕に隠し事してない?」

「どうした、さっきから?お、さては私が昔入手した秘蔵のお宝…。」

「ツカミ、僕の目を見て。真剣に答えてよ。」

「…。」

「僕、何かした?それとも、この間会ったツカミの師匠のことで何か…。」

「イナリ。イナリは聞き分けの良い子だ。そうだろ?」

「…!…う、うん…。」

「なら、この件はこれで終わりだ。ほら、飯も食べたし今日はもう寝るぞ。」

「…ツカミ…。」


「お前があの子を守るか?笑止!」

「…そんなこと、私が1番よく分かっている…っ!」


「…カミ、ツカミ!」

「っ!…イナリ…?」

「大丈夫?随分魘されてたけど…。」

「あ、ああ。悪い、心配を掛けたな。もう大丈夫だ。」

「…ツカミ。僕、ツカミの力になりたい。毎日の修行だって、少しでもツカミの力になりたいから頑張ってるんだよ。それとも、今の僕じゃまだ頼りない…?」

「イナリ…。」

「…!伏せろっ!」

「…グリー…ド…!」

「あれ程忠告したのにまだ小僧を手放してないところを見ると、交渉は決裂ということで良いのか?」

「僕を…手放す…?どういうこと…?」

「…。」

「ほう、おまけに何も話していないと。」

「ツカミ…?」

「でやあっ!」

「相変わらずだな。前回と何も変わらぬ。取るに足らない、つまらん攻撃だ。」

「ぐあっ!」

「ツカミ!」

「く、来るな…!お前だけでも…。」

「うおおおっ!」

「ほう、一方で小僧はあの時から少しは成長したという訳か。やはりこれは喰いがいがある…!」

「ツカミを…離せ…っ!」

「…成る程な、これは…。良かろう、もう暫し時をくれてやる。その時までにせいぜい、悔いのない選択をしておくことだな。」


「ツカミ!」

「…バカがっ…!逃げろと…うっ!」

「喋らないで、傷が開いちゃう!今手当するから!」

「…イナリ…。」


「ツカミ!目が覚めた?」

「ああ。」

「良かったぁ!」

「…。」

「悪かったな、色々と。」

「どうしたの、しおらしくなっちゃって…。いつものツカミじゃないみたい。」

「…本当は、もうお前は大人になってたんだよな。私の方がいつまでも子供のままなだけで。」

「…?」

「お前はもう私より強いし、1人でも生きていける。一緒にいれば、私の方が足手纏いになる。随分前から分かっていたのに、お前が可愛くて仕方なかった。離れがたかったんだ。」

「ツカミより僕が強いなんて、ツカミが足手纏いなんて、そんなこと…。」

「心当たりがないとは言わせないぞ。」

「でも、僕も…僕もツカミとずっと一緒にいたいよ…!」

「私の言いなりだったお前が、一端の口を利くようになったな。寿ぐべき成長だ。」

「ツカミ!」

「私といればただでさえ危険が付き纏う上、お前はお荷物を背負うことになる。ただでさえ狙われているんだ。もうこれ以上は私の勝手にお前を付き合わせる訳にはいかない。」

「い、い…やだ…!」

「何、安心しろ。お前が目的地に着くまでに、諸々の手続きはすべて済ませておいてやる。」

「嫌…だ。嫌だよ。」

「イナリ。」

「だってツカミは?ツカミはどうするの?」

「私はまた1人に戻るだけさ。ただの元鞘だ。」

「そんなの…そんなのだめだよ!だって、ツカミは寂しかったんじゃないの?僕の方が強いって言うなら、僕がツカミを守るから!」

「ふざけるな!」

「…!」

「今のお前はただ私より強いだけ。グリードには手も足も出なかった。忘れたか?私達は今、あいつに生かされているんだぞ。」

「…。」

「強くなれ、イナリ。私もお前の師匠として恥ずかしくないよう修行する。そしてどこにいても、お前を思っている。だから今度は1人に戻っても、心は独りじゃない。お前と繋がっているのだから。」

「ツカミ…、僕…。」

「泣くな。もう1人前だろ。」

「でもっ…でも…っ!」

「仕方ないな、餞別だ。」

「…!」

「ここからずっと東の方に、海の国がある。お前はそこへ向かえ。」

「ツカミは?」

「私はまずやり残したことを片付けに行く。」

「本当に、お別れ…なの…?」

「お前のお陰で、良い旅だった。楽しかったよ。またどこかで会おう。達者でな、イナリ。」

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