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まじょがりっ!  作者: ハクアキ
第二章 Mywonderworld Breaker
83/121

ふんさいっ! Striga Angle 9/20 14:53

誤字脱字等有りましたら指摘お願いします。

「なんで、魔女草ストライガって名前を付けたんですか?」

 急に紫苑が鈴に訊いた。二つの傘を持ち、一つを自分、もう一つを両手がふさがっている紫苑に差している鈴は、紫苑に尋ねられ、一瞬、ぽかんとした。

「急にどうしたの、紫苑ちゃん? 具合悪いの? それとも、何か悪い物でも食べた?」

 紫苑は、違いますよ、ていうか、なんでそんな発想になるんですか? とすぐに否定する。

「そういえば、どうして、そんな中二なネーミングにした理由を訊いてなかったなーと思いまして」

 鈴が私、そんなに子供っぽくないよっと憤慨した。これが悪化すると、ふん、こんな意地悪な紫苑ちゃんにはぜっ〜たい教えない、といってぷりぷり怒りだしてしまい、理由を聞けなくなるので、早めに紫苑が少しなだめはじめる。

「そもそも、ストライガって、どんな植物なんですか?」

「アフリカとかヨーロッパに生えている、一面にピンクの小さな花を咲かせる植物だよ」

「ふーん。それは可愛いもの好きで、凝った名前をつけようとする鈴さんらしいですね」と少し皮肉を込める。

 鈴は特に追求せずに語った。

「ストライガは、ウィッチ ウィードとも呼ばれていて、直訳すると魔女の雑草ってね、人に忌み嫌われている雑草なんだよ」

「名前からして嫌われそうな名前ですね。私たちみたいに」

「ええ。そのストライガの種はね、近くに植物が生えていないと芽を出さないの。ストライガの芽が生えたら、近くに生えている植物から、栄養を奪って成長して、周りの植物を枯らして、最後にはストライガだけが残って、小さなピンクの花を咲かすんだ。もし、ストライガの種が畑の土に混じったら、その畑で育てようとしていた植物は、発芽したストライガに栄養に根こそぎ奪われて、全滅。収穫の時には、最悪のピンク色。しかも、一本のストライガから出来る種は十万個だよ? もう農家の人はたまったもんじゃないよね」

 鈴が懐かしむように微笑む。

「なんか、そのストライガの生態が、わたしたちに似てるって、親近感っていうのかな。そんな感じがしてね。人が居なければ生きてはいけない、わたしたちに――」

 忌み嫌われ、恐れられ、憎まれている、魔女たちと、似ている。いや、大事に育て、収穫しようと蒔いた種が、すべて、ストライガに喰われ、代わりに、ピンクの花を生き残った証のように咲かせる。その生き方は、魔女と同じ。

「でも、さすがに雑草は、酷く言い過ぎてて、ヤだから、魔女草って書いて“ストライガ”って読むようにしたんだ」

「鈴さんにしては、上手く考えましたね。東城さんが考えたんじゃないでしょうね?」そう紫苑がいつも通り茶化すと、鈴は、まあ、このストライガはわたしが魔女になる前に、東城さんから聞いたんだけどね、と答えた。

 紫苑が薄暗いグレーの曇り空を見上げ、言った。

「いつになったら、雨が上がるんですかね」

「天気予報では、明日から一週間は晴れるって言ってたよ。紫苑ちゃん、雨、嫌いなの?」

「いや、あの時と同じ天気で、あのことを思い出してしまうんですよ。魔女になった日を」

「あの日も雨だったよね。こんな感じで、冷たい雨だった――」

 紫苑は思い返していた。魔女としての名前の由来となった、悲劇が頭に浮かぶ。室内に隠れ、見つかり、紫苑の取り囲んでいた警察が、紫苑を捕まえようとした一瞬、爆発し、霧散。霧状になった警察に詰まっていた血液が、さらに紫苑の周りに赤い霧を作った。その中で一人、膝を折って、座り込み、虚ろに、真っ赤になった紫苑は、その霧が晴れるのを待っていた。

 彼女、今隣にいる彼女が、最強の組織を作ろうと、誘いにくるまでは。

「絶対に晴れになるよ。わたしたちは、その晴れの日を忘れているから、いっつも雨だって感じちゃうんだから」

「そんなもんですかね」と紫苑は疑ってかかった。

「間違いないよ。それにネガティブに生きたって、暗くて寂しいだけだし。ポジティブに生きるべきなんだよ。それが楽して楽しく生きるこつだとわたしは思うよ」

 鈴はそう断言した。紫苑は、出来る限り、そうして生きたいとは思いますけど、なかなか、出来なんですよね、と皮肉を込めて言った。

「ところで、こっちで方向は合っているのかな?」

「合っているんじゃないですか? それに相手は曲がりなりにも、魔女なんですから、動き回ったって、なんら不思議ではありませんよ」

「だから、困っているんじゃない」

「とりあえず、あのマセガキの言っていた所へと向かいますか」

 そう地図を覚えている紫苑がいい、その後を――実際は横で両手がふさがっている紫苑に傘を差しているのだが――鈴がついて歩いていく。

「その子、重くない?」

 鈴が紫苑の両手をふさいでいる原因――背負っている、意識を失った女の子について訊いた。紫苑がそんなこと訊かれたくもないでしょと、素っ気なくあしらった。


「こならちゃん……、ごめんね」


 急にその女の子が喋った。

 急に喋ったので二人は驚き、意識を取り戻したのかと思い、鈴が気がついた? と話しかけてみるが、無反応だった。どうやら寝言みたなもの、らしい。

「う〜ん。髪の毛にベッタリ血がついているから、頭をやられて、記憶無くしちゃうんじゃないかなって思ったんだけど、大丈夫だったのかな?」

「あの詩髪光に、狙われてたんですから、残念ながら脳は損傷していますよ。でも、こうやって思い返すように、夢を見ているように、つぶやくのは記憶は壊れて、バラバラになったとしても、壊れた残骸、記憶が、かすかに残っているからなんじゃないですか? その欠片が、大切な記憶を覚えていたから、こうやって夢を見てるんだと思いますよ」

 と柄にもなく紫苑がいうと鈴がえー、と否定的に言う。

「そんなロマンチックな奇跡が起こるかな?」

「起こりますって。鈴さんがあの時、身を持って、教えてくれたんですから」

別の物語も投稿したので余力が有れば是非そちらもよろしくお願いします。

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