ふんさいっ! Hunters Angle 9/20 14:09
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これままでは、こならが殺されてしまう。
魔女の能力によって、身動きが一切とれなくなってしまった鬼灯は、悔しそうに歯噛みした。このままでは、目の前、至近距離にいるのに、何も出来ず、むざむざとこならが殺されてしまう。
畜生。情けなんて掛けるべきじゃなかった。
そう後悔しながら、なすすべなく、魔女にこならの首が締められていくのをただ見ているしか、鬼灯は出来なかった。
こんな時、光さんはどうしたっ!?
頭の中であの反面教師が、毎回ピンチをどう潜り抜けていたを考える。光はこのような絶体絶命の場面を切り抜けるのが、上手い。でも、それは一種の野生の感というものであって、鬼灯が使えるはずもないのだが、この状況下ではそんなことを言っている場合ではない。必死にどう切り抜けるか考えを巡らし、体を無理矢理、動かそうとする。だが無駄だった。ちっとも動きやしない。
こならが口を大きく開け、酸素を求めるように喘いでいた。それでも魔女の能力によって抵抗することができない。だんだんと、喘ぎが弱々しくなっていく。あと、もう少しで、終わってしまいそうだった。
畜生! 畜生! 畜生!
鬼灯は何度もそう叫ぼうとしたが、声にならない。
ついに、こならの意識が、あと一歩で落ちようとしていた。
とどめを刺すかのように魔女の首を締める強さが増した。華奢な首の骨まで折れてしまいそうだった。
その時。
トンッ。
どこからか飛んできた“何か”が魔女の頭に刺さった。
魔女は体中の力が抜けるように、こならの首から手を離した。その“何か”は頭蓋骨を貫通し脳細胞までその刃が届いたらしい。恐ろしい切れ味だ。脳細胞を損傷したため、生理機能はストップ、体を動かすことができず、そのまま、横に倒れていく。その刺さった“何か”は、すでに消えていた。
魔女が黒く塗れた地面に崩れ落ちた。頭を堅いアスファルトになすがまま叩きつけ、刺さっていた部分から、血ではない何かが吹き出て、あたりに飛び散ったが、それは雨によって薄まっていった。
魔女が死に、能力から解放され、やっと動けるようになった鬼灯は、すぐに、その場でうずくまり、せき込んでいるこならを抱きかかえた。この場にとどまっていたら、死んだ魔女にが復活して、また襲われてしまうからだった。あのくらいの怪我では、すぐに回復してまう。あたりを見渡し、隠れる場所、逃げ道を探した。
「鬼灯っ! 前方にある曲がり角を右に曲がれ!」
どこからか伊達の声が聞こえた。鬼灯は言われた通り、前方にある曲がり角に向かって全速力で走り、隠れるように右に曲がった。
「おつかれ」
そこには傘も差さずに雨に打たれている伊達がいた。
「事情は後で説明しろ。取りあえず今は、あの魔女から見えない位置に隠れていろ。そうすれば、あの魔女の能力は効かないらしい。現に、俺や光は動くことはできたからな。推測するに、あの魔女の能力は、自分の視界に入った者の行動を抑制する、そんなとこだろうな」
そう伊達が魔女の能力を分析する。
「何時から、ここに居たんですか?」
「ほんの一分か二分前さ。お前の怒鳴り声が聞こえて、光と共に駆けつけたら、案の定、その子が首を絞められているわ、お前は動けていないわで、冷や汗がでたぞ」
「すみませんでした。ところで、光さんは?」
「魔女の首切り落とそうとして、どこかに隠れているんだと思うが。あの鏡で確認しろ」と伊達はミラーを指さす。鬼灯はそこから、今、魔女がゆっくりと起きあがっている姿を見た。
「今、起きあがりましたよ」
「ここは光に任せておくか。光、お前の携帯持ってんだろ?」そう光に訊いたと言う。
「はい、そう光さんが言っているなら」
「よし。なら、まずこの子は離れてもらはないと。ここにいても巻き込むだけだ」
鬼灯は抱きかかえている、こならを見る。こならは意識を失っていたが呼吸はしているので大丈夫のようだ。そして、伊達とこならを抱えた鬼灯は、光に魔女の捕獲を任せて、この場から離れていった。
†
魔女は立ち上がった。一回死んで、回復し、生き返ったのだ。魔女は頭にナイフが刺さったごときでは、完全に死なない。
魔女は辺りを見渡した。向かってくる哀れな敵はどこか、喰うことができる愛おしいモノは近くにいるか、探す。
「おい、魔女」
誰かが魔女に話しかけた。魔女は黙ったまま、その声がする方へと本能的に向かう。
「お前とサシで殺り合いたいんだが、お前の能力が卑怯臭いからできねぇな。しょうがないから、不意打ちで、お前を狩ることにする。だから、ちっとは楽しませてくれよ」
ザクッ。
また何かが投げられ、またも避けることができず、魔女の左目のがんかに刺さった。魔女は、一瞬の出来事と左の視界を奪われたことに驚き、隙が産まれる。その隙に光は、魔女の視界、左側から近づき、首に向かって右手に持った脳漿と血脂がベッタリくっついたスローイングナイフを差し込んだ。そして、首の左半分、骨に当たらないよう、スパット切った。そこから溢れでた血が、人ほどではないが、ブチュッっと飛び出し、透明な雨に混じって、赤い少量の雨を降らした。その雨はアスファルトに落ちて、雨で薄められ、色が滲んでぼやけていく。
「まだまだっ!」
光は、左手にさっき投げた魔女の左目を刺したスローイングナイフ《・・・・》で、残った右半分を素早く切る。魔女の首と体を繋いでいるのは、堅い首の骨だけになり、ごろんと体にぶら下がって成る実のようになった。光がその体をアスファルトに押し倒す。首の骨でつながっているといっても、魔女の体は動くことなんて出来やしない。そのまま血塗れ薄れたアスファルトの上に倒れた。
「よく、俺みたいな、つえー能力者がさぁ、敵を倒す前に自分の能力の説明をベラベラやるだろ? アレを言う意味あんのか、自己満だろ? つかー嘘ついて騙せよ? って思わないか?」
光は体は前を向いているのに、首だけ後ろを向いている魔女の首を掴んで、潰れていない右目に見られないように、最初に右目、次に潰れた左目の順に両目にスローイングナイフを突っ込んだ。別に残虐ではない。死んで、全部回復したとしても、目だけは回復させず、能力を使えなくするためだ。
魔女が死んで、回復して生き返ったとしても、スローイングナイフは取り除かれない。異物を取り除きながらまで回復しないのだ。この状態で治るのは切り裂かれた首の肉だけになる。そして、この魔女の能力は、視界に入った生物の行動の支配。視界が潰れていれば、この能力は、意味がない。
「まあ、ケースバイケースなってくるんだろうな。こんな感じで、もう逆転も、奇跡も、何もない状態で、なすすべなく、自分がやられた相手の能力を知りたいって、思うような時に、親切に言うんだろうな」
一方的に光が喋る。
「教えてやるよ。俺の能力。俺の能力は、テレポーテーションだ。けど、そんなすごいモンじゃないぜ。テレポートって言っても、好きなもの好きな所に移す能力じゃない。自分の体を、別の場所に瞬間移動するのことできやしない。じゃあ、どんなテレポート能力か」
光の右手には魔女に刺さっていたスローイングナイフが戻っていた。
もちろん抜いた訳ではない。
「自分の手が最後に触れたモノを、自分の手元に戻すっていう能力さ」
光の首を切り落とそうと、そのテレポートの能力で戻ってきたスローイングナイフで首の骨と骨の間に、刃を入れた。
別の物語を書いたので、明日、同じ時間に投稿します。そちらもよろしくおねがいします。




