#08 赤ずきんの決意
「じゃあ、アタシの所から3匹旅立つって事だね?」
「そうなるな」
ケイト視点
なんでオレがあんな提案をしたかと言うと、数分前に遡る。
デカイ悲鳴が聞こえてそっちの方に向かおうとしていた時、ばあちゃんに名前を呼ばれた。
「ケイト、少し頼み事していいかい?」
「なんだよ、急に改まって。いつもパシリみたいに使ってんじゃん」
真剣な顔付きでばあちゃんが呼ぶもんだから、狼狽えてしまう。
いつもの、
「パン買ってきてー」
とかの適当な頼み事じゃないのは確かだ。一体何を頼んでくるのか…。
「あの子はね、ここに留まっちゃ行けないんだ。いつかは全てを知らなきゃ行けない。そのためには沢山の世界を見て、色んな人と出会って知っていく必要がある」
何を、言っているんだろう。あの子というのは、はじめの事で間違いないだろう。でも、いつか知らなきゃ行けないことってなんなんだ?そして、なんでそれをオレに話したりするんだろう。
「そこで、頼み事だ。ケイト、あの子について行ってあげてくれ。導く人が居なければ、きっと途方に暮れてしまうから」
導く人、そうか。ばあちゃんが言っていた導く人にオレがなれって言ってんのか。
「ちょ、ちょっと待て!オレはついて行くなんて言ってねえぞっ!大体、なんでオレがついて行かなきゃならねえんだよ、アイツだって小さい子供じゃねぇんだぞ……」
そうは言ったが、ばあちゃんの真剣な目で見られると声が詰まってしまって上手く言葉にできない。今まではばあちゃんの笑顔や怒った顔、びっくりした顔などは見たことあるが、ここまで真剣な顔付きになっているのは始めてだ。それほどまで、はじめに肩入れしてるのか……、それとも、
「ばあちゃん自身、気になることがある…?」
「ふふ、さすがアタシの孫ね。確かに、アタシ自身気になっていることがあるのは本当。でも、それと同じくらいあの子が心配なのも本当」
その言葉に嘘偽りはなくて、ばあちゃんの本心なのは分かった。
けれど、毎度同じでそのばあちゃんが気になっていることは教えてくれない様だ。秘密の多いばあちゃんだけど、オレに全てを話してくれる日はあるのか…。こんな風に不安を感じている間は、まだ話してくれないんだろうな。
「……分かった。そのばあちゃんからの頼み事、受けて立つ!」
頼み事だが、これはある意味オレへの挑戦状だと受け取った。
人のためにどこまで頑張れるのか、それを自分自身も知るためにオレは決めたんだ。
アイツと一緒に、この世界の童話の幕が下がる所を見届けるって。