#02 用心棒
前回の続きからです。
「今言った事の意味が分からなければ無視してよし」
そう言って花畑を離れ、おばあさんの家へと足を動かしたヤンキー赤ずきんさんの腕を掴んで、もごもごと口を動かした。掴んだはいいが、なんて話せばいいのか分からなかったから。僕、本当は違う世界から来たんだ!なんて能天気に言えるほど馬鹿じゃないし…。
「ヤンキー赤ずきんさん」
「あ?なんだその呼び方……」
「僕、迷子なんだ。だから、着いて行ってもいい?」
別に嘘はついてない。世界や時空を股に掛けた迷子だ。帰り道が無いなら自分で作るしかない。だから、その為にヤンキー赤ずきんさんに着いていくしか選択肢が無いのだ。
「…駄目だな、うん、絶対駄目だ」
「え」
う、嘘…だろ。断られた?えっと、断られたらどうすれば…。赤ずきんの世界のオオカミに食われて人生終了って事?最悪過ぎる。ど、どうにか連れて行って貰わなきゃ…
「に、荷物持ってあげる」
「別に自分で持てる」
「か、肩も揉んであげる」
「肩凝ってねえし」
「用心棒になる!」
その言葉を聞いて、ヤンキー赤ずきんさんの足がピタ…と止まった。もしかして、用心棒というものに惹かれているのだろうか。勢いで言っただけなんだけど…、まさかのヤンキー赤ずきんさんの用心棒としてこの世界で生きていく事になるのかもしれない。
「用心棒ねぇ、……用心棒か」
惹かれてる、惹かれてらっしゃる。この赤ずきん。お前一人で狼一人なぎ倒せる程の力を持ってる男なんだろ?今更、弱い用心棒なんて要らないだろ…。お願いだから、さっきみたいにバシッと切り捨ててくれ……。
「よし、いいぜ。用心棒としてなら、着いてくることを許可しても」
許可…、されちゃった。用心棒なんて出来るのか?上から目線の赤ずきんから許可された以上、しないなんて選択肢は無いが、まあ用心棒として動けるように善処しよう。
「じゃ、用心棒。花積んでこい」
「おばあさんの為なら、ヤンキー赤ずきんさんが積んだ方がいいと思う」
何用心棒させようとしてんだこのヤンキーは。おばあさんの為なら本人が積んだ方がいいと思うのに。
「ド正論ぶち込んでくんなよ…。分かった、"オレも"積む」
ん?オレも?結局、用心棒も積めという言葉無しの圧なんだろうな。早速人使いが荒い…… 。
「花なら何でもいいの?」
「ボロボロの花以外な。一応、人にあげるもんだからな」
その言葉を胸に、僕は何となくで花を選んで、数分後のヤンキー赤ずきんさんの"そろそろ行くぞ"という一言に従って、おばあさんの家へと足を進めた。