#19 バラバラの旅人達
青空を眺めて、少しの間ぼーっとしていたが、我に返り、ガバッと体を起こす。
確か、ヤンキー赤ずきんさんとあった時もこんな感じだったな、なんて思い出したが、今はそれよりもここは本当に〝ヘンゼルとグレーテル〟の世界なのか。そして、僕らはその世界に入り込むことが出来たのか。という謎を解き明かしたかった。
そういえば、他の3人は?と辺りを見渡したが、誰もいない。あるのは、自分の右手に掴まれているお菓子の家のピンバッジこと、この世界の欠片だった。
「違う世界に来たらバラバラになっちゃうものなのかな?でも……なら、手を繋いで来た意味……」
嫌がる2人を引っ張ってまで手を繋いだのに、未だにその行為の意味を理解できていなかった。
とりあえず、周りは木だらけ。ここはどこかの森の中なのだろう。狼男辺りは、お菓子の家の匂いに釣られていそうだし、探す手間も省けるが、他2人の行動が全く読めない。
2人とも、僕より年下で、普通に心配だし、何よりこの世界にはやばい魔女もいる。見つかっていなかったらいいが……。
「とりあえず、この森から出たいな」
そうは言っても、右も左も広がるのは終わりの見えない森だけ。流石にここから考えもなしに進むのは気が引けた。
「んー……」
「もう!疲れた!」
「うるっさい!そんなの俺もだし!」
「!?、え、何!?」
グルグルと頭を回転させて悩んでいた時だ。2つの子供の声が僕の耳に届いた。
会話の内容的に喧嘩しているようだ。片方が煽って、もう片方がその挑発に乗る……というような感じで、永遠と言い合いをしている。
とりあえず、このチャンスを逃さない為に、自分が出せるできる限りの声で、叫んでみる。
「あの!僕、迷っちゃって!誰かいませんか!」
言葉の語尾を強くして、どうにか2人に届くように頑張る。
すると、僕の頑張りが花を咲かせたのか、声がどんどん近づいてくる。そして、ガサッと葉っぱをかき分ける音が聞こえたと思ったら、声の正体たちが姿を現した。
「あ、いた」
「普通に近くにいたんだ…」
2つの声の正体は、女の子と男の子で、2人とも雰囲気が似ている。男の子は明るい茶髪に、女の子の方は明るい金髪で、丸い目をぱちぱちさせている。そんな様子を見ていると、なんだか女の子向けの人形が動き出したようだ。
けれど、そんな整った顔からは考えられないほど、薄汚れたツギハギだらけの服を着ている。
「なんで子供だけで……?」
そう自分が言った言葉で気がついた。この容姿に、森の中、雰囲気の似たふたりの子供。もし2人が兄弟ならば、僕の予想は当たっているだろう。
このふたりは、〝ヘンゼルとグレーテル〟だ。




