#15 問題児すぎる狼男
♢ヤンキー赤ずきんさん視点♢
あのまま、母さんも渋々と言った様子で納得してくれた。その後は風呂に入る順番をジャンケンで決めて、軽ーい事件が起きた。
何せ、狼男の野郎が片手で数えられる程しか風呂に入ってこなかったようなのだ。ジャンケンに運良く勝って一番乗りに風呂に入ったは良いものの、どれがどこに使うのか分からなかったようで、風呂場は大惨事。
2番の手のはじめが見たこともないような必死な顔でオレの服を引っ張って来たから何事かと思ったら、そんな風呂場を見せられ、軽く気絶もんだ。
もちろん、1人だけ気持ちよさそうに風呂から上がっていた狼男を2人でどやし、母さんに見つかる前に風呂掃除をさせた。
ー次の日ー
♢はじめ視点♢
結局、ヤンキー赤ずきんさんとお母さんの戦いは幕を閉じ、一応納得してくれた様だ。
今日も朝起きると美味しそうなご飯が沢山あって、ケイトをよろしくね、なんて言われてしまった。
多分、面倒をかけるのはこっちの方だと思うが、お母さんが直接言ってきたんだ。ヤンキー赤ずきんさんは口が悪いけど、僕がよろしくしてやろう。
なんて上から目線に思っていると、ヤンキー赤ずきんさんの僕を呼ぶ声が聞こえた。
「はじめー、そろそろ出るぞ。準備してるよな?」
「うむ」
いつの時代かの殿様を思い出しそうな返事をして、玄関に居るヤンキー赤ずきんさんに向けて、手でグッとマークを作る。そんな僕に呆れてか、それとも狼男を気にしてなのか、玄関からリビングの方へと向かってくる。
「狼の野郎も準備してるよ…な…って、はあ!?」
ヤンキー赤ずきんさんの叫び声が聞こえて狼男の方を見ると、狼男の手にはぐったりとした子ヤギ。
ヤンキー赤ずきんさんが慌てて狼男から奪うも、子ヤギは全く動かない。
「あぁ、オレの食料……」
「だとしても、荷物としてまだ生きてる動物を持っていこうとするな!」
「あんた達…、ばあちゃん待たせんのはやめなさいよ?」
洗濯物を取り込んできたヤンキー赤ずきんさんのお母さんがリビングに顔を出し、ジトッとした目で言う。
僕ら自身もさっさと行きたいのだが、狼男が次から次へと問題事を持ち込んでくるんだ。切実にやめて頂きたい。
「というか、この子ヤギ…なのかな?、子ヤギとかどっから取ってきたの?」
「朝早く起きて、近くの森で取ってきた!」
元気に答える狼男に、僕はそっか…と答える他になかった。ヤンキー赤ずきんさんからも質問に説教を受けて、狼男が項垂れていると、うぅ……と子ヤギが鳴き声をもらした。
「ここは……」




