#10 絶望の表情
「何も言わずに旅に出たって母さんが聞いたら、オレ……殺されるぞ?」
なんてヤンキー赤ずきんさんがいつにも増してビクビクしているので、僕らは旅に出るのを明日に変更し、今日はヤンキー赤ずきんさんの家に泊まることになった。そして、先程よりも暗くなった空を眺めながら僕らは足を進める。
「な、なんて説明すればいいんだよ…。急に旅に出るとか言ったら、なんて言われるか…」
「なんかおもしれぇ。ひひっ」
「確かに、ヤンキー赤ずきんさんがここまで怖がるなんて相当だね」
歩いている途中で呪文のように、どうしよう、どうしよう…と言っているヤンキー赤ずきんさんを見ると、流石に心配してしまう。
というか、そんな怖いお母さんの元にお荷物2人引き連れて帰っているが、そこの心配はないのだろうか?それこそ、追い出されそうだ。
▽▽▽
「あ、あそこじゃね?」
あれからもう少し歩いて行くと、狼男が疑問の声を零す。狼男が指した先にはいかにも童話に出てきそうな家が立っていた。
「合ってる?ヤンキー赤ずきんさん」
「あ?あ、あぁ……」
気が動転しているようで、凄い形相で睨んできたかと思えば、気が抜けたような顔をして返事をする。
そんなに不安なら旅しようなんて言い出さなきゃ良かったのに…、なんて言うとヤンキー赤ずきんさんに怒られそうだから辞めておいた。
「よ、よし。い、行くぞ……」
「れっつ」
「ごー」
絶望しかけているヤンキー赤ずきんさんとは裏腹に、ボクらは気の抜けたかけ声をする。きっと何とかなるだろう、そう思いながら。
「ケイト、あんたねぇ。そのままばあちゃん家に泊まってくれば良かったの…に」
出てきたのはヤンキー赤ずきんさんと同じ茶髪で、くせっ毛の女の人だった。大きな目に小さい鼻、これが俗に言う美人なのだろう。さすがは童話の世界、現実よりも顔面偏差値が高い。
まあ、そんなことは置いておいて、ヤンキー赤ずきんさんのお母さんは目を丸くして僕らを見ている。そりゃそうだろう。子供が帰ってきたかと思ったら知らない2人を連れてきているんだから……。
「あんた、おばあちゃん家に行っただけなのよね…?」
「勿論」
「……じゃあ、この子達何?」
怪訝な目で見てくるお母さんと、冷や汗ダラダラのヤンキー赤ずきんさん。どうにか頭を動かして返答を考えているようだ。この場での正しい返答を。
「お、オレの…おれ…の」
すごい顔をして言葉を繋げようとしている。旅する仲間なんて、言いにくいのだろう。
まあ、ファイト、ヤンキー赤ずきんさん!




