#09 欠片
投稿が遅れてすみません!
▽▽▽
「と、言うわけで」
「何がという訳なんだ!」
「うるさ……」
話をさえぎる狼男を睨みながら耳を押さえる。
結局、狼男は最後まで駄々を捏ねていたけど折れたようだ。赤ずきんによると、色んな童話の世界を旅するんだと言っていて、なんで急にそんな提案をしたのかと聞いたが、答えてはくれなかった。
「よし、アンタらに童話の世界の行き来の仕方を教えておこうかね」
歩くだけではこの童話の世界を旅することは出来ないようで、その童話の世界の"欠片"を見つける必要があるみたいだ。おばあさんは本当に色んなことを知っているようで、この世界にも沢山の欠片が落ちているんだと…。
あ、勿論ヤンキー赤ずきんさんや狼の野郎はどんな童話があるのか知らない。それは僕とおばあさんだけが知っているんだ。
ちなみにどんな所に欠片があるのか聞いてみたが、結構分かりやすくそこら辺に落ちてたり、誰かの所有物になっていたりするらしい。
「欠片は童話によって姿形を変えて現れるんだ。それも、突然ね」
「なんで婆さんはそんなに詳しいんだよ。そんなの誰でも知ってる情報じゃねぇだろ?」
「アタシは選ばれたんだよ、創造者って奴に」
『創造者……』
ヤンキー赤ずきんさんと狼男はおばあさんの話を聞きながら凄く考え込んでしまった。それもそうだろう、急に創造者に選ばれた!なんて言われて戸惑わないやつは居ない。
それでも、嘘をついているようには見えないし、第一おばあさんが嘘をついていたなら僕らは終わりだ。信じる物が無くなってしまうんだから。そうならない為に、今僕らはおばあさんの言葉を信じるしかないんだと思う。
「アンタら、どんな童話に行きたいとか希望はあるかい?」
「別に、オレら以外の童話を知らねえから希望も何もって感じだぞ?」
「そうねぇ…、じゃあはじめに聞こうかしら」
急な名指しにビクッと跳ねてしまった。童話、童話…、何がいいんだろう。有名なのだとシンデレラとか白雪姫、人魚姫ら辺だよね。
でも、やっぱり子供の時夢だった…
「ヘンゼルとグレーテル、かな」
お菓子の家なんて子供の夢じゃないか?少なくとも、僕は小さい頃凄くお菓子の家って言葉が魅力的に見えた。
「可愛らしいのを選んだわね。よし、それじゃあ…」
「ちょっと待てっ!」
風を切るようなヤンキー赤ずきんさんの声に全員の視線が集まる。
「何も言わずに旅に出たって母さんが聞いたら、オレ……殺されるぞ?」
あ、なるほど。怖いもの知らずのヤンキー赤ずきんさんもお母さんは怖いんだ……。




