五話 『俺は石に話してほしい』
さぁ、石がまだまだ喋ります。
頑張って字を読んでね。
五話 『俺は石に話してほしい』
「それって…」
『私を人の姿に戻せます。気になるでしょ?私の元の姿』
「やっぱり俺には何の得もないんだな」
納得した口調だった。
『さっき言ったじゃないですか』
「なぁ、もうお前のこと捨てていいのか?」
『んなっ!ダメに決まってるじゃないですか!それに言い忘れましたけど、私を所持してないとステータスは上がりませんからね?』
「は!?マジかよ!って事は死ぬまでこんな石っころを肌身離さず持ってないといけないのかよ…」
『どうします?私を元の姿に戻したくなりました?』
「いや、どうしてそうなる。ステータス上げるのがさらに大変じゃないか」
『少しは考えて下さいよ…。私の姿が元に戻るって事は呪いが解けてあなたのステータスは勝手に上がるようになるってことですよ?』
「いやいや!早く言えよ!さっき俺にメリットないって言っただろ!」
『別に元に戻るだけでプラマイゼロですよ?それメリットですか?』
「そうだろ!全く…ちゃんと説明しろよな!」
重要な事を説明しない石に腹が立っていたアレスに嬉しい声がかかった。
「アレスー!ご飯だよー!」
「カリスだ、ご飯できたらしいから行くぞ」
アレスは徐ろに立ち上がり、石をポケットに入れた。
居間に向かうと食卓にはこんがりと焼き色のついた魚と芋の煮付けが並んでいた。
「わあ…すげえ美味そう…」
アレスは昼を食べていなかったので普段より格別に美味しそうに見えた。
「なぁに?お母さんの料理がそんなに美味しそう?ふふ、やり甲斐のある事言ってくれるじゃない?さぁ、食べなさい」
「いただきます!」
アレスは貪るように料理を平らげた。
『治癒力が1増加しました。』
「うっ…!」
居間に石の声が響いた。
が、ティラもカリスも何も気にしている様子は無かった。
『ぷっw 私の声はあなたにしか聞こえませんよ?』
「そう言うのは早く言えって!」(ボソッ)
「どうしたのアレス?」
モゾモゾしているアレスを不思議に思ったカリスがこちらを覗いてきた。
「あ、いや!何でもないよ!じゃあ、俺そろそろ寝るから!」
アレスは不自然に急いで部屋に向かった。
「お前…説明不足が過ぎるぞ?まだ話してない事あるだろ」
『さあ?複雑な呪いですから、私にも分からないものは分からないですし、説明するのも忘れる事なんてありますよ。それに人間を呪うのは久しぶりですからね』
「どういう事だ?」
『私、森の中にいましたよね?だから動物しか来なくって…。たまたま触れた動物のステータスを頂いてその動物を呪い殺して、それを食べに来た動物のステータスをまた頂いてと、そんな過ごし方をしてきたもので…』
「お前…呪いで生き物を殺せるのか?」
『まぁ、触れた動物なら』
「じゃあ俺の事も…」
アレスは話を聞くうちに恐怖が芽生えていた。
『いえ、そんな事はありません。あなたに限っては』
「せ、説明してくれ…」
『アレスさん、あなたは少々特別なようです。あなたは他の人よりステータスの上がり方が何倍も早い。』
「何倍も…?」
『はい。アレスさんトレーニングはした事ありますか?』
「トレーニング?運動か?」
『鍛錬やキツい運動です。自分を追い込むような』
「そんなの1度も無いけど…」
『鍛錬の経験が1度も無いのにあなたのステータスは優に大人よりも高かった。つまり、鍛えればどんな人間よりも強くなれる、という事です。』
「どんな人間よりも…強く?」
最強になれるってよ