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エピローグ

やっと終わりです。初めての連続投稿作品で色々勉強しました。次回作でそれが生かせればいいかな、と思う今日この頃。

 後日談。あれから一ヶ月経過していた。

 ヘリでやって来た警察官達によって長男と長女、屋敷の使用人そしてBCSI捜査官の紅夏がまず保護された。

 ちなみに部屋に監禁されていた紅夏は、救出に来た警察官を見て涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして助けを乞うたらしい。

「助げでぐだざい…」

 今でも笑いのネタにされている。主に時郎に。

 例の三人の遺体は洞窟で見つかった。特に外傷はなく不審死体として検死に回されたが死因は今もって不明である。そのそばにいたBCSI捜査官の時郎とメイドのマヤは、ヘリで島から本州の最寄りの警察署に運ばれ三日間監禁状態で調書を取られたが結局死因は不明となった。と言ってもこれは通常の科学捜査のサイドの見解である。魔法(サイド)である文部科学省直轄の魔術庁内の魔法犯罪捜査部では死霊祭が死因だと特定された。しかしそれは死亡した老人によって構築された魔法であり、メイドのマヤは手助けしたとは言え、彼女自身には未必の故意は存在せずあくまでも主人の意向に沿って行動したと判断された。よって不起訴処分になった。

 彼女はこの事件が発生する以前に遺言状に財産分与が記載されていることを知らされた。

 贈与税を差し引いても億に近い金額が手に入ったらしい。それは退職金でもあった。

 彼女は島を離れることになったからある。どのみち島は遺言により国に寄与される事になっていた為、使用人は全員解雇されたのだ。その際充分な退職金が銀行口座に振り込まれたらしい。

 十代である彼女の人生全てを支えるには足りない金額だが、今ならやり直しが出来る年齢であり、その準備金として考えるなら充分な金額だった。

 今は高校生である。ある所からの力が働いてある有名私立高校へ編入が許された。

 編入試験は満点だったらしい。マヤは島で独学で高校レベルの勉強をしていたのだ。もちろん彼女の知能はかなり高くもし普通の家庭で育っていたならば、何か歴史に残る偉業をなしたかもしれない才能を開花させていたかもしれない。今からでもその可能性はあるのだ。その可能性を信じた人間があしながおじさんになったわけではないだろうが、島に閉じ込められて籠の鳥になっているよりはましな人生が送れると時郎は信じたかった。

 彼女はもちろん魔法使いとしての能力を捨てたわけではない。

 魔法庁認定の魔法使用許可証と商業目的の魔法使用に関する資格を取得し、土日の日中占いカフェで占い師のアルバイトをしている。ほどほど当たるのでほどほど人気があるらしい。

 島で休みなく働いていた為休日に何をしていいのか分からない、とマヤがいうので紅夏が友人のつてで見つけてきたのだ。

「人間相手に100%当たる占いなんてだめですよ」とマヤ。

「ほどほどでないと相手が怖がってしまいますから。いい事も悪いことも100%ですからね」

「なるほど。胡散臭いくらいが信じられる複雑な人間心理だな」

「はい。難しいです。本当に」

 少し寂しそうに笑う。この歳で醜い大人の修羅場を見たのだ。そしてそのせいで人が死んでいるのだ。しかも身内の手によってである。人間不信になってもおかしくない。

「まあ、何だ。おれも未だに人間というものが分からないさ。刑事やっているとなおさら、だ」

「そうですか。そうかも知れませんね」

 軽くため息を吐く。この歳であまりにも厭世的な態度をしているマヤを見て時郎の中で何かが弾けた。

「おい。子供のくせにあまり知った顔で眉間にしわ寄せてんじゃない」

 時郎はマヤの頭を荒々しく撫でて髪の毛を乱した。

「うわー。何ですか!」

 驚いてマヤが奇声を発する。

「いいか、ここはふつうの世界だ。ここではお前はただの子供でいいんだよ」

「は、はい」

「よーし。じゃあ、また来るから」

「はい。ではまた」

 時郎は店を出てきた。

「あー。いた」時郎の後ろで紅夏が叫んだ。

「ん。何だ?まだ昼休みだろ?」時郎が振り返ると息を切らしながら紅夏が近寄ってきた。

「緊急です。事件です。兎に角急いで下さい」紅夏が時郎の手を引いて行こうとする。

「分かったから。どうせヘリポートだろ」

 二人しかいない部署は休みがない。次の事件が待っているのだ。

 どんなに不条理な世界でも見捨てるわけにはいかない、か。仕事だし。

 時郎は紅夏の手を振り払い、ネクタイを締めなおして歩き出した。

次回作はファンタジー物の予定です。詳しい設定は今からなので。またよろしければお付き合い下さい。

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