37、誕生日をやり直したい。
「いやあああ!! 助けてナタリー!!」
ルーチェさんはそれこそヒロインのような叫びを上げながら王都の警備兵とマティウス殿下の近衛騎士の一人に連行されていった。
多分、重犯罪者として、王宮の地下牢に連れていかれて取り調べを受けるのだろう。
ちょっと地下牢については私も自分が入るところだったかもであったから、真剣に怖くてどういう所かは見ていない。
ルーチェさんがやっぱりちょっとかわいそうだ。
「マーキス男爵令嬢の事よりも、本当にごめんなさい。ナタリー嬢に酷いことを言ったし、誕生日をきちんとお祝いできていない」
マティウス殿下が90度に私に向かって頭を下げていた。
さっき神様(悪魔……と言いたいところだけど)が適当に生活に支障がないように皆の記憶をいじっとく的な事を言っていたけれど、マティウス殿下の記憶はどうなっているんだろう。
まさか、ゲームの事とか覚えていないよね……。
「いえ、良いんです。最初にマティウス殿下のお話を無視して逆らっていたのは私ですし、マティウス殿下のお祝いを断っていたのも私ですし……………………………………っ、命がかかっていたとはいえ申し訳ありませんでした」
「いやいや、神が面白半分に力を貸していたとはいえ、まんまとあんな魅了魔法に引っかかっていた僕が悪い」
「あ…………、そういう感じの記憶にしたのですね? いえいえ、こっちの事です。マティウス殿下をお助けできなかった私にも問題があります。すみませんでした。神(悪魔)が人間に試練を与えたのならば人間はそれを粛々と受け入れるより致し方なしなのではないでしょうか?」
「いや、ナタリー嬢は立派に神の試練を乗り越えていたのに。ごめんなさい」
「そうでしたか? そういう話でしたか? 悪魔がシミュレーションがうまくいかなくて、つまらながって最後はふてくされて帰っていったような……? でも、自分でもなんとなく答えは分かっている風だったような? いえ、これもこちらの話です。すみません」
マティウス殿下とお互い謝り合戦をする。
……そして、少し経ったところでお互い我に返って、そういえばマーキス家の夜会会場に居たんだと気づき、呆然自失状態のマーキス家の人たちに代わって招待客やルーチェさんの取り巻き等を整理して家に帰したり、騎士の取り調べに回したり、色々と動いた。
この場に居る最高位の貴族はもちろん、マティウス殿下とその婚約者でオランジェ侯爵家の私だからだ。
……後日、ルーチェさんは、被害者である私の嘆願により、ご家族共々その光魔法の多大な魔力を国の為に生かす仕事に就くことになったそうだ。
ルーチェさんに会うのはまだ怖くて、ルーチェさんの裁判には私は出ないまま終わった。
働いているルーチェさんにもまだ会ったことはない。
私は神に選ばれた通り『精神が弱い悪役令嬢』だった。
マティウス殿下が言うには、
「大丈夫。ナタリー嬢の言う通り、ちゃんと皆生きてるよ。毎日朝昼晩ナタリー嬢に「生かしておいてくださってありがとうございます」って言ってるし、体への暴力も振るわれてないから」
だそうだ。
良かった……。
やっぱり前世はかわいそうな人だったようだし。
……そして、あの日の事は、神が現れて一連の事件は神が与えた試練だったこと。ルーチェさんは試練を課す神の僕だったにも関わらず、その力を悪用しようとした罪人であったことが公式の見解として明らかにされた。
何故か、神様(悪魔)が特別に私に目をかけていて、見事その試練を乗り越えたことになっていた。
お父様もお母様もそのほか皆も私が神の試練を乗り越えたことを褒めてくださったけれど、何か腑に落ちない。
そして、改めて私の誕生日をマティウス殿下が王宮で開いてくださった。
「改めておめでとう。ナタリー」
「ありがとう。……マティ」
まだ呼び方が慣れない。
お互いもうすぐ学園を卒業して結婚まで秒読みだからもっとラフな感じでお互いを呼び合おうという事になったのだけれど、なんだか照れくさい。
読んで下さってありがとうございました。
もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。
また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。




