20、私とゲームの強制力とマティウス殿下。
13歳の時、ストレンジ歌劇場でオペラを見て、事件が発生した時(マティウス殿下が女装していた事ではない。盗賊が歌劇場に乱入してきた事件だ)、私は自分が不自然に忘れていることがある事を把握していた。
そこから、マティウス殿下となんとなく(いや、結構)ギクシャクしているのはさておき、まだまだ私が把握していない(思い出せていない)デートハプニングや事件やゲームイベントがあるのではないかとは容易に想像できた。
多分、ヒロインに関しても私が思い出せていないだけで何かあるのだろう。
ヒロインの事は登場する年齢になったら徹底的にマークしなくてはならないと思う。
私が思い出せないから、きっと自分の頭の中で妙なつじつま合わせをしている所があるはずだ。
また、ゲームの強制力は体験して怖さは分かったものの、ある程度、融通が利くのも試行錯誤した結果分かった。
ストレンジ劇場に盗賊が乱入した時も、あれは本来ヒロインとマティウス殿下とで発生するイベントだったけれども、悪役令嬢の私と居ても発生して、マティウス殿下が颯爽と解決してくださった。
一般市民や他の貴族やマティウス殿下に影響があるのは困ってしまうので、当初の予定通り、そもそもどこかに遊びに行くときにマティウス殿下とは一緒に行動しないことにした。
お分かりだろうか。
『私とマティウス殿下がデートしている形にならなければ、デートハプニングは発生しない』のだ。
これが私の結論だ。
多分、マティウス殿下がマティルダの格好をしていても普通に楽しくお喋りしていたし、デート扱いなのだろう。
断じて、私がずっとマティウス殿下とどこかに遊びに行くのが気まずいからではない。
偉そうなことをマティウス殿下に語っていたのに、貴族にも関わらず婚約の顔合わせの時にイラっとしていたの悟られていたからではない。
マティウス殿下もマティウス殿下で気まずいのか、マティウス殿下を誘わない私に深く追求してくることはなかった。
それと、何故か、私が13歳の時にお茶会で言った、
『マティウス殿下はそのままで、『マティウス殿下は理想の王太子である』という演技をなさるのはいかがでしょうか?』
を実践していて、王宮で開催されるお茶会ではキラキラの王子の演技をしている。
私は貴族令嬢のキラキラ演技をしている。
(ちなみに、お茶会はうだうだもじもじしている私たちを私の両親と陛下と王妃様が心配して月一回くらいのペースで、王宮で強制開催されている。そこはゲームで何も触れられていなかったからなのか、あるいはゲームで悪役令嬢とマティウス殿下のお茶会なんて詳しく説明したりはしないだろうからなのか何も事件は発生しない。したとしても陛下のほぼ命令だ。拒否はできない)
マティウス殿下は、普段の公務の時にもわかりやすく上目遣いをしたり、自信のなさそうな態度を見せることは少なくなった。
ごくまれに、想定外の事があったりすると(大臣が意地の悪い質問をするなど、私と王宮の廊下でばったり会うなど)、昔のような自信のない態度が見えて懐かしく感じるし、なんだか全然前のような自信のない様子が見れなくなって、寂しく感じたりもする。
私は勝手だ。
時々、マティウス殿下の好きなピアノコンサートやオペラを見る時に王族専用席にマティウス殿下が居るのを見かけて、自分からマティウス殿下と遊びに行くのを避けているのに、素晴らしかったコンサートの内容やオペラやバレエについて語れないのを寂しく思ってしまう。
私は本当に勝手だ。
先日もバレエを見ているのに、マティウス殿下がどう思っているか気になって、マティウス殿下が居る方を見たら、マティウス殿下もこっちを見ていて、完全に視線が合って恥ずかしかった。
視線を外す前に、マティウス殿下の口の形が、
『ナタリー』
と私を呼ぶのを見て、なんだかいたたまれないような、座っている席のお尻がもぞもぞするようなそんな気分になった。
マティウス殿下の事は、あのストレンジ歌劇場の事件の夜に考えないようにしようと思ったのに、そう思えば思うほど考えてしまう自分を持て余している。
読んで下さってありがとうございました。
もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。
また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。




