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第84話 白蓮の目的

 リスティナの7つの宝石は六大ギルドの支配エリアに各々1つずつ、緑龍絶栄の支配エリアにだけ2つ隠されていた。

 現在、クロノフィリアは各地を巡った事によって6つの宝石を入手した。

 だが、青法詩典の支配エリアに隠されていた宝石のみ行方が分からなくなっていた。

 自称、神と名乗る鳥型の機械の話によると、青法詩典から白聖連団に移動したようだが、その後の移動先は不明とのこと。


 ギルド 白聖連団のギルドホームには現在4人の人物が居た。

 ギルドマスター 白蓮

 白聖十二騎士団 序列1位 銀

 白聖十二騎士団 序列2位 雪姫

 白聖十二騎士団 序列3位 灰鍵


『白蓮様、開催される大会の告知を各ギルドに送りました。』

『うん、ありがとう銀。六大会議から3週間弱、たったそれだけの時間で六大ギルドは随分変わってしまったね。』


 全ては奴等が…クロノフィリアが動き出したのが原因。

 白聖連団の十二騎士団は半分以上が死亡か行方不明。

 黒曜宝我は消滅。

 青法詩典も例の捕えたメンバーを奪還された際に切り札のクティナを使用するも撃退されてしまった。

 おまけに、この時期にメンバーの1人を追放するという暴挙。

 赤蘭煌王は赤皇が仲間の死を原因にギルドマスターとしての責任を問われ追放、その後釜に九大王光の1人 陸統 がギルドマスターへと成り上がる。おまけに、優秀な副リーダーだった玖霧を含め他2人もギルド去る始末。

 正直な話、新ギルドマスターの陸統は赤皇に比べ全体的に力不足…。本人は気付いていないが…。あれで赤皇と同格等と宣うとは愚かにも程がある。

 9人居た九大王光は、1人が死亡、3人が追放、1人がギルドマスターへ昇格し…幹部は5人か…。


『赤蘭は~もう駄目だね~。』


 メンバーリストを見ながら白雪が言う。


『なぁ、白蓮さん。赤を呼ぶ必要があるのか?。』


 そのリストを横目に灰鍵が腕を組みながら呆れた声を漏らす。

 灰鍵も赤皇の強さは知っている。その絶対的なリーダーを失った赤蘭など六大ギルドですら最早無い。


『もちろん、手駒は多い方がいいからね。それに、この大会は最後のチャンスだ。全てを出すよ、今まで全てを…ね。』

『今回は、あの方達は?。』

『ふふ、情報収集…だとさ。』

『つまり、見捨てられたと?。』

『最初から我々は情報を集めるだけの彼等の駒だよ。しかも、あの方々の何人かは既に こちら側 への顕現を済ませたらしい。もう、我々は必要無いのさ…。』

『それで~。良いの~?。』

『良いも…悪いも…皆も説明した通り我々は彼等に 作られた存在 だ。創造主には、どう足掻いても我々では手も足も出ない。例外を除いて…。』

『クロノフィリアか…。』

『だったら、いっそのことクロノフィリア側に付いたらどうだ?。まあ、今更アイツ等が受け入れてくれるとは思わないが。』

『これは、私のワガママさ。手の届かない頂きへ登った者達に、どんなに足掻いても届かない者がどこまで噛みつけるかをただ知りたい。私は、負けず嫌いなんだ。ゲーマーだからね。』


 白蓮が自分の刀を握り、刃に映る自分の顔を見る。


『ゲーマーはスポーツ選手やアスリートと一緒さ。自分の目標に向かって努力を惜しまない。勝つために、全てを捧げて頂を目指すんだ。それが、ゲーマーなんだ。だから、私は足掻くよ。積み重ねた努力がどこまで届くのかを見定める為に。』

『私は白蓮様にどこまでも付いていきます。』

『私も~。』

『俺もだ。白蓮さん!。クロノフィリアに一泡吹かせてやる!。』

『皆…ありがとう。』


 コンコンと部屋の扉をノックする音。

 

『入れ。』


 白蓮が自身の机に戻り、椅子に腰掛ける。

 即座に銀は白蓮の左後ろに、白雪と灰鍵は定位置となる両側のソファーに座る。


『失礼致します。』


 入って来たのは白聖十二騎士団の序列10位 奏他(カナタ)と序列11位 漆芽(ナナメ)


『白蓮様にお客様です。』

『緑龍絶栄 端骨様です。』

『ああ。彼か…良いよ。通してくれ。』


 開いた扉の左右に移動する奏他と漆芽。そして、入室する端骨。


『やあやあ。こんにちは。白蓮さん。』

『いらっしゃい。端骨君。今日はどのような用件で来られたのかな?。』

『ひひひ。貴方程の人がそのような質問を?。』

『確認の為にね。最近、あの方々と行動しているようじゃないか?。緑龍を乗っ取り、そこに住む人々全員の意思を破壊したらしいじゃないか?。』

『ええ。素晴らしいですよ。あの方々にしてみれば私共など玩具ですからね。そちらは随分温いことをしているではありませんか?。』

『玩具…ね。そこまで理解しているのなら自分も彼等にとって玩具なのだと理解しているんだろうね?。』

『ええ。もちろんです。ですが、それは今だけのこと。すぐに彼等も理解してくださいますよ。私がどれ程優秀なのかをね。』

『………。』


 その自信はどこから来るのか…どこまでも傲慢さを崩さず彼等を変な意味で信じている端骨に白蓮が溜め息を漏らした。


『…ふぅ。それで、わざわざそんなことを言いに来たわけでは無いだろう?。』

『ええ。例の大会の件です。知っての通り緑龍絶栄は全ての者が人形状態です。大会には参加出来ませんが周囲の見張り役としてお使い下さい。』

『バグ修正プログラムか…。』

『ええ。現在、八龍樹皇の面々はバグ修正プログラムを獲得しています。つまり、バグを持つクロノフィリアを近くに察知した場合、即座に分かります。』

『成程。それはありがたい。そう言う話なら周囲の警備はお願いするよ。だが、見つけても手を出さないでくれよ?。手を出すのは決勝戦が終了した直後だ。大会会場にいるクロノフィリアを取り囲み纏めて殲滅する作戦なんだから。』

『ええ。承知していますよ。では、当日会場でお会いしましょう。』

『ああ。宜しく頼むよ。』


 不気味な笑いを残し退室する端骨。


『白蓮さん、端骨は信頼出来るのか?』

『彼がどこまで理解できているのかは分からない。だけど、所詮彼も駒である事には変わらないよ。精々クロノフィリア探知機として我々も利用しようか。』

『良いわね~それ~。』

『白蓮様。クロノフィリアに対抗出来そう?。』


 奏他が質問する。


『私に出来ることは全てやったよ。リヒトも完成させた。そして、切り札も用意した。』


 机の上にリヒトの錠剤が入っているケースと切り札と呼んだ宝石を置く白蓮。

 クロノフィリアが入手していないリスティナの宝石、最後の1つ。青法詩典の支配エリアに隠されていたモノだ。


『これが、この世界で出来る私の全てだ。これがクロノフィリアに通用するのか分からないが…私の最後の足掻きを皆で見届けて欲しい。』

『…私は、白蓮様と共に。』


 銀がケースからリヒトを1錠取り出しアイテムBOXから自分のケースに入れ換える。


『はは。俺もだ。どこまでも付いていくぜ!。』

『私もよ~。』

『私も。』

『僕も。』


 灰鍵。白雪。奏他。漆芽。の順でリヒトを取り出す。

 完成されたリヒトは擬似的なレベル150を再現できる。それは、寿命の先取り。飲んだら最後、命は無い。辛うじて生き残ったとしても、能力を失い、まともに動くことも出来なくなってしまう。究極のドーピングだ。


『…さあ、我等の最後の戦い。私…いや、僕らが 憧れた 存在に全力で挑もうじゃないか!。』


 白蓮が拳を突き出す。

 騎士団の面々がその拳に自分の拳を合わせていった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


『はぁ…はぁ…はぁ…。』


 私は逃げている。必死に走っている。


『はぁ…はぁ…はぁ…。』


 私に目掛け放たれる飛び道具。それをボロボロの傷付いた身体で避けていく。

 私を追うのは3人。数日前まで仲間だった。3人は容赦なく私に攻撃を放つ。

 襲い来る火球。 


『くっ…スキル【真斬一閃】!!!。』


 居合いで、火球を斬り裂く。…が、私の刀では全てを防ぎきれない。


『がっ!?。くっ…はぁ…はぁ…はぁ…。』


 右足に火球が命中してしまった。

 これではもう逃げ回ることも出来ない。それに…体力も、もう限界だった。

 

『裏切り者がどこまでも我々に抵抗するか?。時雨。』


 3人が私に追い付いた。

 彼等はギルド 青法詩典の最高戦力 七詩法。中央にいる男、黄泉(ヨミ)。左にいる男、無窮(ムキュウ)。右にいる女、八雲(ヤクモ)


『私は裏切ってなどいません!。操られていただけ…。』

『それが、既に裏切だ。敵の…あまつさえ神の宿敵であるクロノフィリアの手に堕ちるとは…情けない。』

『っ…。だが、あれは私で無くても…抗えなかった…。』

『お前が何と言い訳しようと、これは青嵐様の意思だ。お前はここで死ね。』

『…青嵐様は私を切り捨てたの?。』

『お前も分かるだろう?あの方は敵神に堕ちた者を許さない。』

『………。』


 私は…もう、戻れないのか…。

 私は絶望した。長年仕えてきた青嵐様に捨てられた。この六大ギルドに支配された世界に、もう私の居場所は無い…か。

 まあ、そうだろうな…。私が逆の立場なら彼等と同じことをするだろうし…。

 詰んだね…これは…。


『死ね!。』


 3人から放たれる様々な属性の魔力弾丸。

 抵抗は…無意味ね…。でも、あの攻撃じゃ…即死は無理ね。痛いのは…嫌だなぁ。

 私は膝をつき、目を閉じ、己の身に直撃するであろう魔力弾丸への衝撃を待った。

 どうせなら、早く死ねるように少しでも致命傷になるよう無抵抗で攻撃を受け入れる。

 けど…衝撃は…痛みは…一向に私を襲うことは無かった。


『え…。』


 魔力弾丸の攻撃は搔き消され、私の目の前には黄色いピエロが立っていた。

 あれ?このピエロは?見覚えが…。


『こんにちは~。通りすがりのピエロで~す。君たち酷いことするね?無抵抗の女の子に寄って集ってあんな攻撃するなんて。当たってたら、この娘、死んじゃうよ?。』

『…貴様。何者?。』


 黄泉が怪訝な顔でピエロを睨む。


『あれ?聞こえてなかった?通りすがりのピエロだよ?。』

『…ふざけているのか?。』

『うん!だってピエロだし?。』

『ちっ!誰であろうと我々の邪魔をするなら神に対する冒涜だ!直ちに粛清する!。』


 再び放たれる魔力弾丸。


『おっと!。』

『えっ?。』


 ピエロは私を抱き抱えると軽やかな動きで魔力弾丸を回避する。


『ごめんね。急だったけど、このままじゃ君に当たっちゃうからさ。それにその足じゃまともに動けないでしょ?。』

『貴方…六大会議で介入してきた…クロノフィリア…。』

『あれ?もしかして、君あの場に居たの?。』


 驚いた言葉を並べるも、動揺した焦りを感じない。知っていて助けたのか…。


『まあ、知られちゃってるなら良いかな?。【幻想獣召喚】!レベル150!!!。』


 地面に描かれた魔方陣から召喚されたのは巨大な熊型のモンスター。


『適当にやっちゃって!。』


 熊型のモンスターは3人に襲い掛かる。

 そこからは、ただの蹂躙だった。あまりにも一方的な殺戮。3人の攻撃は効かず、どんなに攻撃しようとも分厚い皮膚の壁に阻まれ、鋭い爪の攻撃で抵抗虚しくバラバラにされていった。

 六大会議でも似たようなモンスターを召喚していた。ギルドマスター達によってあっという間に倒されたが、あの時のモンスターとは文字通りレベルが違った。


『よし、終わり。戻って良いよぉ。ありがとねー。』


 熊型のモンスターは役目を終えたとばかりに魔力の粒子となってピエロの身体に戻っていく。


『さて、改めて挨拶するね。クロノフィリア所属 No.16 裏是流だよ。宜しくね。』

『クロノフィリア…。』


 やはり…私をこんな目に合わせた元凶、クロノフィリアの吸血鬼と同じ、私達の敵!。


『おっと!?いきなり何するのさぁ!。』


 刀を握り裏是流の首を目掛け抜き去る。

 だが、軽々と避けられた。


『くっ…。』


 無理に動いたことで全身の痛みを思い出し踞ってしまう。


『ほら、言わんこっちゃない。君の身体はもうボロボロだよ。今手当てしてあげるから待っててね。』

『………。』


 そう言って、私をその場に座らせ足を見た。


『ああ、酷い火傷だね。でも大丈夫だよ。こんなのすぐに治せるから。女の子に傷を残すのは可哀想だからね、綺麗に治してあげるよ。【幻想獣召喚】レベル100。』


 再び描かれる魔方陣。

 飛び出したのは小さな犬型のモンスター。


『動かないでね。』


 犬型のモンスターは私の火傷を舐めていく。ひんやりと冷たい下が通った箇所が淡い光を放ち治癒されていく。痛みが薄れ、周囲のかすり傷も消えていった。


『何で…私を助けてくれるの?。』

『んー?気まぐれー。言ったでしょ通りすがりのピエロだって、ピエロの行動に真実を求めちゃいけないよ。』

『私は…アナタ達の敵なのに助けるの?。』

『ええ!?敵なの!?。』


 感情の籠ってない見事な棒読み。


『次は身体の傷を治すよ。』


 足の火傷が完治すると、今度は別の魔方陣から蝶々型のモンスターが召喚された。


 鱗粉を撒き散らしながら飛び回り、鱗粉に私は包まれていった。

 傷も体力も魔力までも回復していくのが分かる。


『よし!傷は大丈夫だね。後は、その君を縛ってる矢志路の呪縛だね。スキル【呪縛解除】!。』


 私の身体の中から何かが破壊される感覚が走る。

 

『ごめんね。うちの仲間が君を縛ったまま放置してたみたい。今度キツく言っておくからね。これで君は自由だよ。』

『………。』


 心が身体が軽くなるのを感じる。

 私を縛っていた何かが無くなった。


『…君…会議の時に青法の所にいた娘でしょ?。で、さっき僕が倒したのも君と同じ青法。その人達に襲われてたってことは、今の呪縛のせいで裏切り者扱いにされてたんだよね?。』


 この人、全部知っていてこんなこと聞いてくるのね…。

 さっき知らないって言ってたのに。


『そうだよ。ピエロだからね。』


 私の心まで読んでこないでよ。


『はぁ…私はもう何処にも居場所が無くなってしまったのよ。貴方の仲間のせいでね。』

『あらら~。』

『で、その仲間の貴方はどう責任をとってくれるの?勝手に助けたんだから最後まで面倒見てくれるのよね?。』

『うん。良いよぉ。』

『はっ?。』


 冗談で言ったんだけど?何で即答してるの?このピエロ。


『折角、通り掛かった縁だしねぇ。…なんてね。』

『もしかして、馬鹿にしてる?。』

『違うよ。違う違う。真面目だよ!。実は色々知ってたんだよ。君のことをね。だから、僕のちょっとした用事の途中で君を探してたんだ。』

『何で?。』

『青法の考え方は知っていたからね。僕らのせいで恐らく君が命を狙われる立場になるって思ってさ。案の定、想像通りだった訳だけど。』

『………。それで?私をどうするの?。』

『責任を持って保護するよ。ついでに後で矢志路を一緒に殴ろう!。』

『…そうね。私をこんな目に合わせた元凶には一撃食らわせないと気が済まないわ。』

『でしょ!なら、クロノフィリアにおいでよ。』

『…ええ。なら、何があっても貴方が守ってよね。』

『うん!良いよぉ!その為に君を探してたんだから。』


 何か調子狂う人ね。ずっとピエロの仮面を付けてるし。


『ねぇ。仮面取って素顔を見せてよ。』

『え!?嫌だよ。』


 あっ、声に感情が初めて乗った。もしかして…。


『責任を取ってくれるって言ったじゃない。なら、お互いに隠し事は無しにしましょう?じゃないと信頼できないわ。』

『…むぅ。そう…かなぁ?。』


 もう一押しね。


『ええ。貴方の素顔が見たいわ。』

『そう…わかったよ。でも、恥ずかしいから笑わないでね。』


 そんなに自分の顔に自信がないのかしら?。

 渋々といった感じでピエロの仮面を外す裏是流。


『はい。取ったよ。恥ずかしいから…もう、良いかな?。』

『………。』

『もう!笑わないでって言ったけど。黙られるのも困るからね!仮面戻すよ!。』

『あっ…。』


 仮面を付け直す裏是流。

 メッチャ可愛いんだけど?何この人、女の子なの?。めっちゃタイプの顔なんだけど?。


『ねえ?アナタ…もしかして、女の子?』

『男の子だよ!。もう!だから嫌だったのにさぁ。』

『ねぇ。私の前では仮面取ってよ。』

『絶対嫌!。』


 魔方陣から巨大な鳥を召喚する裏是流。


『ほら、僕の顔なんて忘れて乗ってよ!。』

『うん!良いわ!私、貴方が気に入ったかも。』

『気に入らないでよぉ…。』


 鳥に乗った2人はクロノフィリア裏組の3人娘を探しに飛び立ったのだった。

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