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第70話 神との接触 真実への欠片

『おはよう。柚羽さん。』

『おはようございます。無凱さん。』


 無凱さんの腕の中で目を覚ました私。

 昨晩の出来事を思い出し顔が熱くなる。ついつい無凱さんの胸の中に顔を埋めてしまう。

 そんな私を抱きしめて頭を撫でてくれる無凱さん。

 はぁ…無凱さん…。大好き…。


ーーー


『さて、気を引き締めて行こうか。』

『はい!無凱さん!。』


 無凱さんの箱の中で朝食を済ませた私達は再び洞窟内の探索を始めた。

 たった、一晩で無凱さんとの距離がグンと縮まった気がする。

 私はドキドキする胸を抑えて、頼り甲斐のある背中の後を追いかけていく。


『おっ。開けたね。』

『あっ。本当ですね。』


 洞窟を進むこと2時間。

 広い空間がある場所に辿り着いた。奥に見えるのは天井から湧き出る水が作り出した泉。その中心にある如何にも人工的に造られた台座の上に置かれた青い宝石。

 あれが、私達の探していたモノなのかな?


『ああ、見覚えがあるね。裏ボス リスティナが身に付けていた宝石だ。』


 裏ボス リスティナ。

 詳しい話は無凱さんから聞いている。

 ラスボス クティナを倒したことで出現した追加ダンジョンの最新部にいた少女。

 彼女を倒したことでクロノフィリアの方々はエンディングを向かえエンパシスウィザメントを完全クリアした。

 そして、エンディングを向かえた次の日の朝…世界が今の形に…ゲームの世界に侵食されたのだという。

 その裏ボス リスティナが身に付けていた7つの宝石。その1つが目に前にある。

 それを集めることで何が起きるのか。何故集めないといけないのか。無凱さん達にも分からないのだ。

 謎の女からの助言により宝石はクロノフィリアにとって必要になるモノだということしか分からない。


『気を付けて。何かいる。』


 無凱さんが私を制止し、目の前に現れた存在を警戒した。


『あれは…。』


 黒い金属の鎧で覆われた人型の機械。


『こんにちは。侵入者の方々。』


 無骨なデザインの鎧には似つかわしくない少女の声が発せられた。


『こんにちは。君は誰だい?。』


 無凱さんが言葉を切り出す。


『私は、ここの宝石を守っているっていう設定の機械人形だよ。そう言う侵入者さんは誰なの?。』

『ああ、失礼したね。僕は無凱って言うんだ。君が守っているって言う…そこの宝石を取りに来た者だよ。』

『そうだよね。此処に乗り込んで来たってことはそういうことだよね。ねぇ…何個か質問しても良い?。』

『ん?何だい?。』

『何で、この宝石が必要なの?あと、この場所をどうやって探り当てたの?。』

『………。』


 無凱さんが一瞬考える。

 目の前の存在が敵か味方か分からない以上、迂闊なことは言えない。


『僕の仲間が偶然、別の場所で同じような宝石を見付けたんだ。あまりにも綺麗なモノだったからね。もっと無いかと似たような洞窟を探し出してはこうして探索をしているんだ。』

『へー。今まで何個見付けたの?。』

『1個だよ。今回のその宝石の発見も偶然に発見できたって感じなんだ。』

『その、別の場所で見付けた友達って生きてるの?。』

『ん?生きてるよ?。』

『宝石にはね。この機械人形みたいな守護者がついている筈なんだけど、その友達はそれを倒したってこと?。』

『いや?どうだろう?宝石を見付けたとしか聞いてないからね。詳しいことは分からないな。』

『そうなんだ。ありがとう。教えてくれて。』

『いいえ。気にしないで良いよ。』


 無凱さんが無言で私を後ろに下がらせた。


『あっ。そう言えば私は名乗って無かったね。私は、貴方達で言う所の 神様 だよ。で、この宝石は君達に渡す訳にはいかないの。ねぇ?クロノフィリアさん。』

『神様か…僕たちがクロノフィリアということを知っているってことは…。』

『そ、私は貴方達の敵だよ。まあ、シナリオでは私達の登場はまだ先なんだけどね。どっかの裏切り者のせいでこんなに早くエンカウントしちゃったの。困ったモノだよね。』

『シナリオね…君達の目的は何なんだい?。』

『それを君達が知るのはエンディング間近…君達が滅びる寸前っていう決まりだからね。こんな序盤のプロローグじゃ教えられないよ。』

『そうかい。じゃあ、僕からも質問良いかい?。』

『良いよ。答えるかは別だけど聞いてあげる。』

『どうも。君は…君達は何故、機械人形の身体を借りて僕たちと接触しているんだい?。』

『う~~~ん。そういう質問かぁ~。まあ、良いか。どうせこの機械人形に殺されちゃうしね。教えてあげる。私達はね。まだ、こっちで肉体を造ってないんだよね。まさか、こんなことになるなんて思ってなかったから後手後手でさ。全部あの女のせいなのさ!ムカつくよね。ん?…ちょっと待ってよ?あれ?もしかして…君もバグなの?いや、違う…でも、バグの仲間…って感じじゃない。何で?バグの影響は受けてるけど…待って待って。バグの影響で新しいバグの発生!?マジですか?それアリなの?。』

『凄い…喋るね…。』

『あ!?ごめんね。こっちの話。良し!考えていても分からない!早期発見出来ただけマシと、前向きに考えよう!。』


 機械人形が動き出す。


『悪いけど。無凱さんには死んでもらいます!恨んでも良いけど怨まないでね?。』

『おっと!いきなりだね!。』

『無凱さん!。』


 機械人形が無凱さんに向かって拳を振り抜いた。その拳を紙一重で躱す無凱さん。

 この機械は私と同じ戦闘方法をしている。つまりは、魔力を部分的に放出して、速度と威力を一時的に上げるというもの。


『ええ!?この不意打ち避けるの?マジで?。』

『柚羽さんは少し下がっていて。』

『は、はい!。』


 私は戦闘の邪魔にならない位置まで下がった。


 情報看破で機械人形を観察する。

 無凱さんとの特訓のお陰でレベル120になった今の私の情報看破なら殆どの敵のステータスを視ることが出来る筈。


ーーーステータスーーー


・名前   黒豪拳(コクゴウケン)

・レベル  150

・種族   機導装甲族

・スキル

 魔力無効 封魔空間 体術 

 空間認識 魔力放出 バグ修正プログラム

・装備

 魔力無効外装

・武装

 光学武装


ーーーーーーーーーー


 魔力を無効化する能力。

 当然、無凱さんも気付いてる。


『成程、魔力無効化する外装か…人間サイズで装備できる程小型なモノは初めて見たな。』

『でしょお?頑張って作ったんだよ!。まだ、未完成で調整中だけどね!。それに見てよ!このボディを!。』

『ふむ。まあ、格好いいかな。変に飾らない所とか…ね。』

『わっかってるぅ~。どう?この子はゲーム開始から4回目のイベントで登場したイベントボスをイメージして作ったんだよ!。』

『ああ、どおりで見覚えがあると思った。で?何でゲームのボスのことを君が知っているんだい?。』

『ふふふ!それはねぇ!私が…って危ない危ない…もう!誘導尋問やめてよ!それは秘密の事なの!はい!お喋り終わり!とっとと殺されて下さ~い。』

『あらら。惜しかったね。まあ、良いさ…いつか分かるだろうしね。柚羽さん。』

『え!?あっ、はい!。』


 少し離れた位置にいた私を呼ぶ無凱さん。

 急に呼ばれたからビックリしました。

 私は無凱さんに近付いて行く。


『ど、どうしました?。』

『少し上のレベルを体験しようか?。』

『え!?。』

『は!?。』

『僕も付いてるから。アイツと戦ってみなよ。』

『こ…これも、修行に?。』

『そっ。』


 無凱さんが機械を見ながら私の背中を押した。


『や…やってみます!。』


 槍を取り出し機械と向き合う。


『かっちーーーん!ねえ!ちょっと舐めすぎじゃない?その娘、レベル120だよね?黒豪拳はレベル150だよ?。』

『うん。そうだね?だから、僕が共に戦うわけだ。』

『へ、へぇ…その娘を守りながら戦うってこと?バカじゃないの?。』

『共に…と言ったよ。』

『あぁぁ。もう良いよ!その余裕な態度と表情を崩してやる!。スキル!【魔封空間】!。』


 機械人形を中心に洞窟全体に結界が張り巡らされた。


『む、無凱さん!これって!?。』

『そうだね。こういう状況みたいだ。』


 無凱さん手のひらサイズの箱を作り出す…けれど、すぐに魔力の粒子となって霧散してしまう。

 私もスキル【魔力噴射】を手のひらから発動するが一瞬だけ放出された後すぐに霧散してしまった。

 これでは、攻撃に乗せても効果が発揮する前に消えてしまう。


『ふふふ。無駄だよ。この結界がある限り人体で生成される魔力は強制的にマナに戻されるのだぁ!。』


 マナは、大地などの自然界から生み出される魔力の源。また、人間やモンスターの身体から生成される オド と呼ばれ能力者は、それを変換して魔力を作り出した能力に利用している。

 元を辿ればオドもマナの一部の為、この空間ではマナの状態まで戻されるのだろう。


『成程ねぇ…。で、本体は魔力を無効化する外装…かぁ。スキルを封じた相手を体術で仕留める。確かに、イベントボスを真似て作ったようだ。苦戦するプレイヤーは多いだろうね。』

『無凱さん…。』

『大丈夫。僕が付いてる。君は全力でぶつかって学べば良いよ。』

『は、はい!。』


 機械人形が動く。


『話は終わりだね!じゃあ、行くよ!。』


 初速のまま繰り出される拳打。狙いは私だ。

 その打撃を槍で受け止めようと構えた所で。


『違うよ。この場合は、こうだ。』


 私の後ろから伸びた無凱さんの腕が私の手を重なるように槍を握る。

 そして、迫り来る拳を避け腕の側面を受け流すように槍を回した。


『で、崩れた所でこうだ。』


 勢いを逸らされ重心が傾いた所に蹴りを放った。


『うぁっ!?何それ?。』


 全く力を使わずに機械人形は転げ回った。


『内効魔力…肉体の中で練る魔力は無効化されないでしょ?肉体強化は常に発動しててね。』

『はい!。』

『接近戦を主体とする相手にはなるべく受け止めるのでは無く受け流すようにする。直接受けてしまった場合、何かしらの付加効果がかけられていることが多いからね。』

『はい!。』

『次は一人でやってみよう。』

『はい!分かりました!やってみます!。』


 立ち上がり再び構え直す機械人形。


『もう!変な技使っちゃってさ!次はそう上手くいかないよ!。』


 大きく跳躍。顔面を狙う側面からの鋭い蹴り。

 受け流す…受け流すように槍を…。


『はっ!。』

『ぬっ!?。』


 出来た…。

 軌道を変えることに成功した。


『まだだよ!。』


 軌道を変えられたのにも関わらず、そのままの勢いで回し蹴りに切り替えて来た。


『っ!?。』


 2度目の蹴り。

 これは…このタイミングは受け流せない…受けるしか…。いや…無凱さんなら…。


『くっ!。はぁっ!。』


 私は、更に一歩踏み出した。

 回転させた槍を盾代わりに捨て、全力で拳を叩き込んだ。


『おおっ!やるねぇ!。』

『ああ、また変な技…脇腹にヒビ入っちゃったじゃん!?。でも、その距離でこれは躱せないでしょ?。』

『なっ!?。』

『光学レーザー発射ぁぁああ!!!。』


 胸部から放出される至近距離からのレーザー砲撃。眼前に集束されていく光に私は対応出来ない…。


『常に2手、3手先を予想しながら行動すればこういう事態も対応が出来るようになるよ。まあ、経験が必要だけどね。』

『え!?きゃっ!?。』


 無凱さんが私の足を持ち上げた。

 体勢を崩した私の頭上を掠っていくレーザー。

 目標を失った外れたレーザーは岩の洞窟を軽く貫通していく。

 気付くと私は無凱さんにお姫様抱っこされた状態だった。目の前に無凱さんの顔が…。格好いい…。


『どうだい?魔力やスキルだけが全てじゃないって分かっただろう?。』

『はい…。』

『レベル150を相手に、あれだけ動ければ大丈夫。君は強くなってるよ。柚羽さん。』

『…っ…はぃ…。もっと…頑張ります…。』


 無凱さんに誉められた嬉しさと、まだまだ遠い距離に涙を流しながらそう答えた。


『さて、今度は見て学ぼうか。僕のことを良く見て観察しててね。』

『はい!。』


 優しく地面に下ろされる私。

 今度は無凱さんの動きから学ぶ。


『待たせたね。此処からが本番だよ?。』

『何さそれ?上から目線でさ!余裕の表れ?ムカつくね!。次は手加減しないから!とっとと死ねぇ!。』


 軽くステップを踏みながら距離を詰めてくる機械人形。1メートル手前で止まると肘を閉めた素早いジャブの連続。軽く見える拳の1発1発が命中すれば肉を抉り骨を砕く威力を秘めている。

 それを避ける。避ける。避ける。


『くっ!?当たらない!?。』

『おっと!?。』


 高速の拳を避けていた無凱さんだったが。複雑な軌道を描いたジャブに足が縺れ体勢を崩した。


『チャンス!。』


 ジャブからの全身バネと全体重を乗せた右ストレート。

 狙いは体勢を崩している無凱さんの顔面。


『無凱さん!?。』


 右ストレートが無凱さんの顔に命中…しなかった…。


『え!?何で?腕が?。』


 拳を放った機械人形の右腕が引き千切られていた。


『おお、危なかったねぇ。』

『くっ!?貴方…体勢を崩したのワザとでしょ?。』

『ははは。バレたかい?。君の大振りを誘い出したくてね。』

『どうやって…腕を壊したの?。』

『なぁに。簡単だよ。君の勢いを利用しただけさ。ちょっと力の方向を変えて負荷を加えてやればね、案外脆いモノだよ。君の機械人形が人間と同じ構造で助かったよ。』

『むぅ…。じゃあこれはどうかな!。』


 残された左腕の手のひら。胸部の中心。開いた口元。

 その3点から発射される光学レーザー。


『それも、無駄かな?。』

『くっ!?これも当たらない!?。』


 無凱さんは全てを見切っているのか、最小限の動きで紙一重で躱していく。


『発射口が見えていて直線にしか撃てないんじゃ避けるのは容易いよ。バランスを崩しているなら未だしもね。』

『くぅぅううう!!バカにしてぇ!!!。こうなったらぁぁあ!!!。』


 機械人形がリスティナの宝石に手を伸ばす。


『む?。』


 宝石を高々と掲げた。


『これを使うと…この黒豪拳ちゃんが壊れちゃうんだけど…お前達を倒せれば!もうそれで良いもん!。』


 胸部のパーツを開き、その中に宝石をはめ込んだ。


『へへへ!ビックリでしょ!これで出力3倍だよ!。』


 機械人形の全身から溢れ出る魔力。


『君はお喋りが好きだね?。』

『え?何で急にそんなこと言うのさ?。』

『これ。何だと思う?。』


 無凱さんの指に挟まれてる何かの小さな金属。


『何それ?…あれ?腕が動かない?。何で?…ん?もしかして…それって?。』

『ご名答。君のお人形の左腕にあった関節パーツだよ。』

『いつ…取ったの?。』

『君が悠長に魔力を放出してる間にさ。』

『バカな?魔力は無効化される筈なのに…。』

『この空間と外装はね。君の身体の中は魔力の影響を受けるでしょ?。』

『うそっ…でも…パーツの正確な位置までは分からないでしょ?。』

『うん。だから、さっき引き千切った君の腕から僕の能力で作った箱を細胞レベルまで小さくして沢山、君の身体の中に作っていったんだ。数億個くらいの箱をね。で、今説明してる間にもさ。これ。なぁんだ?。』


 いつの間にか無凱さんの手に握られているリスティナの宝石。


『うそ?また…?。』

『入れる所見てたし、宝石自体には魔力無効が働いて無いしね。』

『でも、手元に引き寄せるには魔力が無効になるこの空間じゃ出来ないでしょ!?。』

『無効化されるけど、魔力が霧散するまでにコンマ数秒掛かるよね?しかも、形を得ているモノなら更に。物体から魔力へ。魔力から粒子へ。ってね。じゃあ、予め複数個の箱を箱の中に作っておけば…ほらね。』


 新しいパーツが、また無凱さんの手の中に…。


『何て…能力なの…?。』

『ははは。凄いでしょ?。』

『OK。分かったよ。このまま戦っても勝ち目は無いみたいだし、その宝石は譲ってあげる。』

『おや。優しいね。』

『でもね。次は負けないよ?私達が こっちの中 に来たらお前達クロノフィリアは終わりだからね!覚悟してね!。』


 その言葉を残し機械人形の機能は停止した。


『こっちの中…ねぇ。どういうことかなぁ?。』

『無凱さん…お疲れ様です!凄いですんね。同じレベル150なのに…圧倒的で…。』


 戦闘が終了したことを確認し無凱さんに近付いて行った。


『相手が良かったね。こっちの情報をあまり持っていなかったみたいだし…。単純な攻撃しかしてこなくて助かったよ。』

『私みたいな普通の能力者だったら相手になりませんよ…。』

『ははは。経験だよ。能力が使えなくても戦い方はいくらでもある。これからも沢山考えて、失敗を怖れず頑張って行こう。柚羽さんならすぐに強くなるよ。』

『はい!頑張ります!。』


 無凱さんと共に機械人形に近付いて行く。


『もう能力は使えるみたいだね。』


 機械人形が停止したことで周囲を覆っていた無効化結界は消滅していた。

 私の魔力噴射も使えるようになっている。


『取り敢えず、この機械は僕が箱の中で保管して、後で調べてみよう。』

『機械の声の女の子は誰だったんでしょうね?神様とか言っていましたが。』

『う~ん。まだ、情報が足りないけど彼女の言葉で少しだけどヒントになりそうな単語は出てたね。』


 彼女はゲーム エンパシスウィザメントを知っていた。どういう繋がりがあるのでしょうか?。


『何にしても目的のモノは発見できた。』


 無凱さんの手には目的の宝石。

 これで、2個目ですね。


『今回はお疲れ様だったね。柚羽さん。』

『いいえ。役に立つことが出来ませんでした。無凱さんに付いていくのが精一杯で…。』

『そんなことないさ。柚羽さんが頑張ったから僕は相手の動きを観察することが出来たんだ。ちゃんと柚羽さんも戦力だったよ。』

『無凱さん…そう言ってもらえて…嬉しいです。』

『これは頑張ったご褒美だよ。』

『あっ…。』


 私の腰を持って優しく引き寄せた無凱さんにキスをされる。

 無凱さん…。大好き…。


『はぁ。こんなオジサンのキスでごめんね。柚羽さんが素敵だったから、我慢が出来なかった…。』

『いいえ。もっと…して欲しいです…。』

『ああ。君が良いなら、喜んで。』


 再び唇を重ねる私達…。

 私…今幸せです。ごめんなさい。黄華さん。

 数分…いいえ。数秒かもしれない。

 時間の経過と共に自然に離れる唇。名残惜しいけど早く拠点に戻らないと。


『さて、戻ろうか。まだ外部との繋がりが断たれてるからね。洞窟の入り口まで戻ってから僕の箱で帰ろう。』

『はい。』


 こうして、私と無凱さんの1日だけの旅は終わりを迎えた。

 分からないことは多いけれど、無凱さんとの距離を縮められたこの旅は私にとって大切な…忘れられない日になりました。


ーーーーーーーーーーーーーーー


『ああ!悔しい!自信作だったのに軽くあしらわれたし…ちょっと舐めてたよ。』

『だから、言っただろう?奴らは彼女の加護を受けている。それが我々が手をこまねいている原因なのだ。』

『ふん。今度は、あんな奴なんて一捻り出来る子を作ってやるし!。』

『負けず嫌いも程々にしないと、足をすくわれるぞ?。』

『まだ、大丈夫でしょ?引き際は見極めるから心配しないで。』

『まあ、目的を理解しているならそれで良い。』

『クロノフィリア…無凱か…覚えたからね。』

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