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第68話 黒璃の交流会

 私の名前は黒璃。

 元 黒曜宝我のギルドマスターで、今はクロノフィリアに新しいメンバーとして加わりました。

 クロノフィリアのメンバーの矢志路君と私は血の契約を交わして主従関係です。

 でも、矢志路君は優しいから無茶な命令はしてきません。私的には、もう少し…むにゃむにゃ…な、お願いをして欲しいのになぁ。

 血の契約の影響で私の種族は半吸血種になり、その特性が肉体に反映されている。


『わぁ!ここが矢志路君の部屋なんだね!。』


 木製の造り部屋は人1人分の大きさの窓が1つだけのシンプルなデザイン。ベッドとクローゼット、机と椅子が置かれていた。

 吸血鬼である矢志路君への配慮なのか太陽の光が入らない角度の部屋になっている。


『お前達も自分の部屋を見てきたらどうだ?。』

『うん!。見てくるね!』

『ぅん…。』

『わかりました。』


 私達は廊下に出ると並んでいる各々の部屋に入っていった。矢志路君の部屋の隣は私、その隣が暗ちゃん。で、その隣が聖愛で決定した。

 部屋の造りは矢志路君と一緒。ここがこれから私が住む場所なんだ!。ドキドキとワクワクが混じったような感覚。

 ベッドの枕元にパンダのぬいぐるみのパンタを置いておこう。


『ふふ。よし!矢志路君の部屋に戻ろう!。』


 部屋の中には矢志路君の部屋に直接行ける扉がある。扉を開ければいつでも矢志路君に会えるなんて幸せ過ぎるよ!。


『矢志路君~。確認終わったよ~。』

『ああ、自分の部屋で休んでいて良いんだぞ?久し振りの戦闘で疲れただろう?。』

『ううん。興奮しすぎて落ち着けないの!。』

『ん?そうか。案内してやりたいが俺もここ初めてだから案内をしてやれないな…。後で誰かに頼もうかと思っていたんだが。』

『あっ!?そうだよね。どうしようかな…。探検したら迷惑になるし…知らない方に会うの…怖いしなぁ…。』

『戻りました。荷物を置いて来ました。』

『僕…も…終わり…。』


 聖愛と暗ちゃんも部屋を確認して戻ってきた。

 うーーん。これから、どうしようかな~。


 コンコン。

 …と、その時、部屋の扉をノックされる。

 一番近くに居た聖愛が扉を開けた。


『はい。え?。あの…。』


 訪ねてきた人物に困惑している聖愛。

 気になって私も扉に近付いてみる。見ると扉の前にメイドさんが居た。白と黒の髪に胸元と背中が大きく開いたメイド服。大きな胸の谷間には Ⅹ の刻印が刻まれた女の子。

 凄く可愛い娘だなぁ…。


『初めまして、お嬢様方。私は、クロノフィリア所属の灯月と申します。これから、宜しくお願い致します。』


 この娘は灯月ちゃんって言うんだ!。手配書には無かった人だよね。手配書に載ってた人達も綺麗な人が多かったけど、灯月ちゃんみたいな娘もいたんだね。


『あ…これは、ご丁寧に…聖愛と申します。此方こそ宜しくお願い致します。』

『あ…あの…黒璃です。よ…宜しくね。』

『暗です。』


 互いの自己紹介が終わると矢志路君が近づいて来る。


『久し振りだな。灯月ちゃん。』

『お久し振りです。矢志路さん。』


 あっ…そうか。矢志路君もクロノフィリアの人達と会うの久し振りだから…。


『それで?どうしたんだ?。』

『彼女達を迎えに来ました。』


 え?私達を?何で?。


『ああ。懐かしいな。つつ美さんか?。』

『はい。あと、矢志路さんは仁さんがお呼びですので喫茶店の方へお願いします。』

『仁さん?ああ。わかった。』


 仁さんは…さっき喫茶店のカウンターに居た優しい雰囲気の格好いい人だよね。


『そして、お嬢様方は入浴の準備をお願いします。』

『にゅ…入浴?。』


 入浴って…お風呂?。確かにお風呂は入りたいけど…何で急に?。


『他の女性メンバーとの自己紹介を兼ねた交流会だ。男のメンバーは今出払っているからな。』

『あっ…そういうことなんだ!わかった!準備してくるね!。』

『わかりました。私達も準備をしましょう。暗ちゃん。』

『…ぅん。』


 私達3人は、もう1度自分の部屋に戻り入浴の準備をして再び、矢志路君の部屋の前に戻った。


『では、案内致しますので、私についてきて下さい。』

『はい!じゃあね。矢志路君!また後でね!。』

『ええ。お願いします。ご主人様行って参ります。』

『ぅん…行ってくる…。』

『ああ。行ってこい。』


 私達は灯月さんに着いていく。

 長い廊下を歩き階段を登る。扉を開けると、また廊下。そして、銭湯のように大きな男と女と書かれた暖簾が垂れ下がっていた。

 うわぁ。本格的だ…。


『此方です。私は他のメンバーを呼んできますので先にお入り下さい。』

『あ…はい。案内してくれてありがとう…。』

『いいえ。どうぞ、ゆっくりお寛ぎ下さい。』

『わかりました。聖愛!暗ちゃん!行こう!。』

『はい。灯月さん。ありがとうございます。』

『ありがとう…。』


 灯月さんは廊下を歩いて行った。

 もう、完璧なメイドさんだぁ…。ゲーム時代は皆…ゲーマーだった筈だよね?どこで、あんな完璧なメイドさんの所作を習ったんだろう…。

 そんなことを考えながら脱衣所に入る。

 広い脱衣所で3人並んで服を脱ぐ。

 私や暗ちゃんは全然スタイル良くないけど…隣の聖愛は凄く綺麗なんだ。さっきの灯月さんもきっと脱いだら凄いんだろうなぁ…。


『クロノフィリアの方はどんな方々なのでしょうね。少し緊張します。』


 聖愛のスタイルに見惚れていると、聖愛がポツリと呟いた。そうだよね…元々、私達は敵だったんだ…仲良くなれるのかなぁ…。

 ああ。そんなこと考えてたら私も緊張してきたよぉ。

 早く湯船に浸かって心を落ち着かせよう!。

 タオルを1枚取って浴場への扉を開けた。


『うわ…。す…凄い…。』

『ええ…圧巻…です。』

『…凄ぃ。』


 そこは、リゾートにあるプールのような大浴場だった。これ全部お風呂なの?。

 様々な広さの浴室に、流れるプールやウォータースライダーみたいのまであるし…。


『何か…緊張感が増したよ?。』

『ええ…取り敢えず…一番近い所に入りましょうか…。』


 私達は手前にあった桶に掬ったお湯を身体に掛けた後、無難な形のお風呂に浸かる。

 あ…気持ちいい。凄く良い適度な温度のお湯に足を伸ばせる広さ。緊張感が解れていくような…落ち着く感じ。

 横を見ると聖愛も、うっとりとした表情で浸かっているし、暗ちゃんは顔を半分お湯に浸けてボーっと寛いでいる。


『気持ち良いね!。』

『ええ。とても…。』

『ぅん。』


 3人で入浴を楽しんでいると。

 ガラガラと扉が開いた。

 あっ。ついにクロノフィリアの人との対面だ!…と、思ったら意外な人物が入ってきた。


『こんにちは、黒璃ちゃん。六大会議以来だね。』

『え!?き、黄華さんが?何でここに!?。』


 六大ギルドの1つ。

 黄華扇桜のギルドマスター 黄華さん。六大会議では会ったけど…ここはクロノフィリアの拠点じゃ…。どうして居るの?。

 良く見ると、黄華さんの後ろにいる女の子が2人。その1人は、六大会議の時に黄華さんと一緒にいた目の見えない強い気配の娘だ。


『ふふ。入っても良いかな?。』

『え!?あ…はい。』


 私の横に座りお湯に浸かる黄華さん。

 聖愛と暗ちゃんも黄華さんのことは知っているからか、黄華さんの方に身体を向けた。


『何か…変わったね。黒璃ちゃん。』

『え?変わった?。』

『うん。会議の時の黄華ちゃんは、凄く無理してキャラクターを作ってる感じだったから、少し心配だったんだ。』

『え!?…気付いてたの?。』

『そうだよ。でも、今はスッキリした顔してる。重圧から解放されたような感じかな?良かったね。』


 黄華さんが私の頭を撫でる。

 黄華さんも何か雰囲気が違う?

 会議の時は、完璧な大人な女性という雰囲気だったけど…今は親しみやすいお姉さんという感じだ。


『うん…。黄華さんはクロノフィリアと知り合いだったの?。』

『ははは。実はそうなんだよね。私のギルドとクロノフィリアは裏で繋がってたんだよ。騙しててゴメンね。バレる訳にはいかなかったの。』

『そうなんだ…ううん。怒ってないよ…それに、それなら、これからは仲良く出来るもんね。私もクロノフィリアだし!。』

『そうだね。実はずっと黒璃ちゃんを抱き締めたかったんだよね。精一杯無理して頑張ってるみたいだったからさ。』


 そう言った。黄華さんが私を抱き締める。

 優しく頭を撫でられながら黄華さんの柔らかい身体に包まれる。凄く…良い匂い。


『そっちの2人も、黒璃ちゃんを支えてくれてたんだよね?』

『え!?…はい。ですが。私達は力及ばなかったので…。』

『ぅん…。』

『そんなことないよ。ちゃんと黒璃ちゃんを支えてあげたからこそ、今の黒璃ちゃんが笑ってられるんだから。』


 私から離れて、今度は聖愛と暗ちゃんを抱き締める黄華さん。何か…お母さんみたい…。


『あの…ありがとうございます…。』

『ぅん…良い匂い…。』

『ふふ。少しはリラックス出来たかな?私が入って来た時は3人とも緊張でガチガチだったよ?。』


 最後に聖愛と暗ちゃんの頭を撫でて離れる黄華さん。


『そうなの…今まで敵だったクロノフィリアの人達と会うの…凄く緊張して…。』


 無言で頷く聖愛と暗ちゃん。


『ふふ。そうだよね。私もクロノフィリアの方々の全員と会ったことないから、その気持ちは分かるよ。現に、ここにいる翡無琥ちゃんに会ったのも、この前の六大会議の前日だったしね。』


 黄華さんが移動した先にいる、会議に出てた盲目の娘と額に綺麗な赤い宝石を埋め込まれた娘。


『会議の時に会ったけど、初めまして。クロノフィリアメンバーの翡無琥です。宜しくね。』

『うん。私は黒璃です。宜しくお願いします!えっと…翡無琥ちゃん!。』

『うん。黒璃ちゃん!。』


 目を閉じている翡無琥ちゃんだったけど私が差し出した手を握ってくれた。

 翡無琥ちゃんは私と同い年くらいかな?でも、私よりスタイル…良いなぁ…。


『あの!瀬愛です!私も宜しくね!。』


 もう1人の女の子、この娘は私より年下みたいだね。


『黒璃です!瀬愛ちゃん!これから宜しくね!。』

『へへへ。黒璃ちゃんって呼んでも良い?。』

『うん。おでこの宝石綺麗だね!』

『っ!?』


 驚いた表情で黄華さんを見た瀬愛ちゃん。

 それに笑顔で頷く黄華さんに嬉しそうに笑う瀬愛ちゃん。


『黒璃ちゃん!。』

『わっ!?。』


 突然、飛び付かれてバランスを崩した私は瀬愛ちゃんと一緒にお湯の中に沈んだ。


『あらら…。2人とも大丈夫?。』


 黄華さんが私達を抱き抱えて起こしてくれた。

 後で聞いた話で、世愛ちゃんの額と両手と胸元にある赤い宝石は蜘蛛の目だということを聞いた。その目が原因で自分の両親に化け物と言われ捨てられたということを知った。

 あんなに綺麗な宝石みたいにキラキラしてるのに…。

 酷い親だ…。私も親に捨てられたから世愛ちゃんの気持ちが分かる。


『瀬愛ちゃん!私と友達になって!。』

『うん。私も黒璃ちゃんの友達になる!。』


 私達は両手を握って笑い会う。

 その後、聖愛と暗ちゃんも挨拶を済ませると、タイミング良く扉が開いた。


『あっ!もう来てたんだね。黄華さん達。』

『早い。』


 大浴場に入って来たのは、狐の耳と尻尾を持った女の人と全身真っ白なお人形みたいな女の人。2人とも綺麗。って、クロノフィリアの女の人達は綺麗な方しかいないよぉ!。


『あっ!貴女達が新しく入った娘達だね!私は智鳴!宜しくね。』

『氷姫。宜しく。』


 智鳴さんと氷姫さん。

 智鳴さんは私達と同じお湯に入って来たけど、氷姫さんは1人別の小さめな湯船に入っていった。あれ?良く見たら氷が浮いてるような?。


『ああ。あっちは水風呂なんだよ。氷ぃちゃんの種族は氷雪女系だから熱いお湯に入れないの。』

『そうなんですか!?。珍しいですね。』

『そうなんだよ。激レアなの。』


 お互いに自己紹介を済ませる。


『智鳴ちゃん。つつ美さん達は?。』

『今、脱衣所に居ますよ。光歌ちゃんが、いつもの人見知りを発揮して駄々をこねてますがそろそろ来ると思います。』


 ガラガラ。

 今度は4人が入って来た。

 豊華さんと灯月さんは挨拶済み。後の2人は初めての人。その内の1人はチラリと此方を確認すると楚々くさと別の湯船に浸かる。そして、もう1人はゆっくりとした動作で私達の前に座った。

 おっぱいが…おっぱいが…。

 目の前に…お湯に浮かんでいる大きな…大きな胸にどうしても目が行ってしまう。


『あらあら~。可愛い娘達ね~。』

『あっ!初めまして黒璃です!。』

『あっ!失礼しました。聖愛です。』

『暗…です。』


 2人も大きな胸に釘付けだったみたい…。凄いよね…。


『可愛いわ~。』

『わぷっ!?』

『にゃぁ!?』

『…っ!?。』


 大きな胸に抱き締められる私達3人。

 柔らかい…でも、く…苦しい…息が…。


『母様。黒璃さん方が窒息してしまいます。』

『あら~。ごめんね~。つい~。』


 巨大なクッションから解放された私達。

 今…灯月さんは、この人のこと母様って呼んだ?。


『私は~つつ美~。灯月ちゃんと閃ちゃんのお母さんだよ~。』

『え!?そうなの?あれ?てことは、閃さんと灯月さんは兄妹なの?。』

『ええ~。そうよ~。』


 閃さんは青法の所にいたクロノフィリアで最強の人。その閃さんの妹だったんだ!。そして、その2人のお母さんのつつ美さん。

 つつ美さんを見ると閃さんや灯月さんがスタイル抜群なのが納得かも…。


『よぉ!黒璃。さっきぶりだな!。』

『豊華さん!。』


 豊華さんも湯船に入って来た。あれ?ちょっと目蓋が腫れてる…何かあったのかな?。


『これ!光歌!こっちに来て挨拶せんか!黒璃達は、これからクロノフィリアの仲間になるのだぞ!』

『知ってるし!。』


 光歌と呼ばれた人が私達に近付いて来たけど…凄く睨んでる…え、何?怖いよ?。


『光歌。宜しく。』

『え!?あっ…はい。黒璃です。宜しくお願いします。』


 じーーっと私を、正確には私の身体を見て来る光歌さん。え!?何で、そんなに凝視してくるの?恥ずかしいし怖いし…。


『ふん。』


 そう言って、さっきまで居た湯船まで戻る光歌さん。

 あっ…尻尾だ。耳も。

 さっきまで無かった猫のような耳と尻尾が生えていた。猫耳可愛い!。尻尾も!。


『ふふふ~。光歌ちゃんが~。耳と尻尾を~出してる時は~。恥ずかしがってる時だよぉ~。ちゃ~んと貴女達のこと~。認めてくれてるから~心配しなくても~大丈夫~。』

『そうなんですね。』

『因みに~。光歌ちゃんは~仁君の~娘さんなんだよ~。』

『そ、そうなんですね。』

『で~。と~~っても、ファザコンなの~。』

『つつ美さん!?何を言ってるんですか!。』

『あらあら~。だって~。そうでしょう~?。』

『…むぅ…知りません!。』


 背中を向けお湯の中へ沈んでいく光歌さん。


 こうして現在、この拠点にいるクロノフィリアメンバーの女性は集まった。

 それからはお互いのこと、今までのこと、クロノフィリアのことなどを交えた交流会が進んでいった。

 クロノフィリアメンバーの、翡無琥ちゃん、世愛ちゃん、智鳴さん、氷姫さん、つつ美さん、豊華さん、光歌さん、灯月さん。そして、黄華扇桜の黄華さん。

 色々と話している内に、少しずつ此処に居る人達のことが分かってきた。


『翡無琥ちゃん。世愛ちゃん。そろそろ上がろうか?結構入ってたからね、そろそろのぼせちゃうよ?。』


 黄華さんは、優しいお姉さん。

 細かいことに気付いてくれる、お母さんみたいな人。


『はい。分かりました。お姉ちゃん。』


 翡無琥ちゃんは、黄華さんにとても懐いてる。


『世愛も出るよ…黄華ママ。』


 世愛ちゃんは、黄華さんのことをママって呼んで慕っている。


『どう?氷ぃちゃん。』

『気持ちいい。智ぃちゃん。』


 あの2人はとっても仲良し。今も2人で泡まみれで身体を洗い合っコしてる。


『ふぅ。久し振りに気持ちいいな。』


 豊華さんは、元気で真っ直ぐなお姉さん。


『…ふん。』


 たまに、じーっとこっちを見てくる光歌さん。あの人はまだ良く分からないな…。ちょっと怖いし…。


『ふふふ~。皆可愛いわ~。』


 つつ美さんは皆のお母さんって感じ。


『母様。自重して下さい。』


 灯月さんも掴み所がないというか…あまり自分を出してないみたいな感じかな?。


『黒璃…僕…出る。』


 暗ちゃんが、ふらふらと立ち上がると扉へ向かった。


『ふらふらだよ?1人で大丈夫?。』

『私も着いていきましょうか?。』

『ぅん…平気…。』


 ふらふらとした足取りで歩いていく暗ちゃんを聖愛と一緒に心配する。大丈夫かな?。

 …っと、その時。


『あっ…。』

『暗ちゃん!?。』


 水で滑った暗ちゃんが体制を崩した。

 転んじゃう!。

 私は慌てて駆け寄ろうとした。が…踏み止まった。


『もう…心配させるなし…。』

『…ぅん…ありがとう。』

『気にすんなし…ふん。ほら、連れててってやるから掴まりな。』

『ぅん…。』


 一瞬で暗ちゃんの元へ駆け付けた光歌さんが身体を支えて助ける。

 そのまま暗ちゃんを抱き締めて脱衣所に消えていった。


『ふふ、光歌ちゃんは~。ず~っと、貴女達のこと気にかけてたみたいよ~。』

『優しい…人なんですね…。』

『そうよ~。』


 つつ美さんが嬉しそうに笑う。


『あと~。灯月ちゃんのことを知りたいなら~。』

『はい。』


 まるで私の気持ちが分かっているように助け船を出してくれる。

 そうだ。灯月さんのことはまだ…良く分からない。


『閃ちゃんの質問をしたら~OKよ~。』

『閃さんの質問ですか?。』

『そうよ~。すぐに灯月ちゃんが~どんな娘か~わかるわ~。』

『分かりました。やってみます。』


 私は灯月さんに近付いていく。


『ん?如何されましたか?黒璃さん。』

『あの…少し質問なんですが。閃さんってどんな方なんですか?戦っている姿がとても格好良かったんですが?。』

『……………。』


 この後…私は、灯月さんを理解した。

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