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第49話 クロノフィリアの3人娘 裏組

『ただいま~ッス!。』


 時刻は20時を少し回った頃。

 元気良く隠れ家の扉を開けて白は部屋に入ったッス!。白達は白聖連団のせいで指名手配されてて懸賞金まで懸けられてるせいで表立って行動出来ないのが現状ッス。


『お帰り~。』

『お帰りなさい。どうしたのですか。昨日1日帰って来なかったようですが?。』


 迎えてくれた2人。部屋で寛いでいた代刃ッチと春瀬ッチ。白の親友ッス!。

 水色の髪とエメラルドグリーンの瞳、女の姿の閃先輩に若干似た容姿を持つ代刃ッチ。

 綺麗な金髪碧眼と見事なスタイルの春瀬ッチ。

 いつも3人で行動していて、こんな世界になってからは弱い人達や困っている人達を助けるために各地を色々回ってるところッス!。


『大変なことがあったんスよ!。』

『大変なこと?。』


 白は今ちょっとテンションが高いッス!。

 何でかって?それは、昨日、2年ぶりに再会した懐かしの閃先輩と睦美先輩に会って一緒にボスと戦ったからッス!分からないことばっかりだったけど白は楽しかったッス!。


『昨日、閃先輩と睦美先輩に会ったんスよ!。』

『ブーーーーーーーーーーーーー………。』

『きゃっ!汚いですわよ!代刃!。』


 白の言葉に反応して飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した代刃ッチと、それが直撃した春瀬ッチ。


『せせせせせせせせ…閃と…会った…の?。』

『もう!べちゃべちゃですわ!。』


 目に見えて動揺する代刃ッチ。相変わらずッス。白は2人に昨日から今日、遭遇した出来事を説明したッス。


『レベル150の化け物と謎のゲーム時代のBGM…。不思議ですね。その空間だけゲームのままの様ね…。』

『そうなんッス!。白は久し振りに雷神化までしたのにヤられちゃったッス!。』

『白が雷神化しても?。それは…。』


 自慢じゃないッスが白の雷神化はクロノフィリア全員の能力の中でも上位の強さッス。その状態でも負けたことに春瀬ッチが驚いてるッス。


『でも…閃先輩と睦美先輩が助けてくれたんス。格好良かったッス!。』

『そうなんだ…閃が…。』


 代刃ッチが乙女の顔をしてるッス!。代刃ッチはクロノフィリアに入る前から閃先輩が大好きッス!でも、生粋の恥ずかしがり屋な性格のせいで、わざわざ【二重番号】のスキルまで獲得して男性化、女性であることを内緒にして閃先輩に近づいたんス。頑張って男として振る舞ってはいたけど…閃先輩以外には…バレバレだったッス…。


『それにしても、珍しい組み合わせですわね。閃さんに睦美さんだなんて。』

『そうなんスよ!でも白は知っちゃったッス!。』

『な…何を?。』


 白が言おうとしていることを感で察したのか恐る恐る聞き返してきた代刃ッチ。


『睦美先輩がちょーーーーー乙女だったッス!好き好きオーラ全快だったッス!代刃ッチのライバル出現ッス!。』

『きゃーーーーー!やっぱりぃぃいいい!。』


 頭を抱えて転げ回る代刃ッチ。


『そうだったのですか?ゲーム時代には、そんな素振り見せていなかったようですけど?。』


 春瀬ッチが首を傾げているッス。

 正直、白もビックリッスけどあの目はガチの乙女だったッスよ!。


『智鳴先輩や氷姫先輩に遠慮してたらしいッス。でも、自分の気持ちを伝えたから抑えてた気持ちが爆発しちゃったらしいッスね。白も驚いてたッス!閃先輩のこと旦那様って言ってたッス!。』

『だ…旦那様!?。』

『ガチ…ですわね。』

『あっ。でも、こんなことも言ってたッス。』


 閃はハーレムエンドを目指しておるからな!


『って。』

『ハーレムエンド…。』

『ゲームの主人公ですわね。』

『閃先輩本人は微妙な反応だったッスけど、睦美先輩は結構本気で考えてたっぽいッス。』

『そっか…それなら…僕も…閃に…。』


 その後、白達は温泉に行ったッス。一般公開されているのに人が滅多に来ない場所ッス。たまに老人さん達の憩いの場となってるみたいッスけど…。白達みたいに指名手配されてる身としては助かってるッス。


『ねぇ。白?。』

『何ッス?。』


 お湯に浸かりモジモジした様子で代刃ッチが話し掛けて来たッス。


『閃…僕のこと…何か言ってた?。』

『代刃ッチのことッスか?。』


 えーーーっと。あっ!。


『言ってたッスよ!。』

『え!?な!何て?。』

『代刃の野郎は何か困ってるのか?俺で良ければ力になるが?。とか、困ったことがあったら俺を呼べって言っといてくれって言ってたッス!。』

『っ!。閃…僕のこと、心配してくれてたんだ…。閃…。』


 ブクブクブクブクブクブクブクブク………プカァァ……………。

 真っ赤な顔でお湯に沈んでいった代刃ッチはそのまま動かなくなって浮かんでた。


『ああ!代刃ッチ!。』

『まったく、どれだけダメダメなのでしょうね。普段は見事なリーダー気質なのに…。』


 白と春瀬ッチで代刃ッチを起こす。


『プハッ!あれ?閃は?。』

『夢でも見てたのかしら?。』

『乙女ッス!。可愛いッス!』


 そんなこんなで代刃ッチの可愛さを堪能して時間は過ぎていったッス。

 そしたら、春瀬ッチが白に聞いてきたッス。


『閃さん達はどちらへ?。』

『あっ!そうだったッス!今、世界じゃ大変なことが起きてるらしいッス。で、クロノフィリアメンバーを早急に集結させる必要があるみたいッスね。』

『大変なこと…先程のレベル150の化け物も関係がありそうですわね。他のメンバーは今どちらに?。』

『ちょっと前にあった戦争の跡地にある廃墟のビル街を拠点にしてるみたいッス。黄華扇桜と協力して犠牲者や無能力の人達を保護してるらしいッス。』

『無凱さんのお力ですわね。では、もうそこにメンバーは集まっているのでしょうか?。』

『え…と、今居るのは…無凱さん、仁さん、灯月先輩、智鳴先輩、氷姫先輩、つつ美さん、世愛ッチ。で、黄華扇桜に叶さんと翡無琥ッチがいるみたいッス。』

『仁様ぁ。ああ、早くお会いしたい。』

『乙女が増えたッス!。』

『…失礼。取り乱しましたわ。』

『大丈夫ッス。白は乙女な姿を見るの大好きッス!。』


 白は皆の恋が叶うことを祈ってるッスよ。


『話を戻すッス。で、閃先輩、睦美先輩、神無先輩、賢磨さんは他の居場所が判明しているメンバーの場所に向かってるッス。』

『成程、それで閃さんと睦美さんが居たのですね。』

『そうッス。何でも青法の拠点にいるメンバーがいるみたいッス。閃先輩の予想だと矢志路先輩らしいッスね。』

『青法の…遠いですね。』

『閃…大丈夫かな…。』

『あっ。代刃ッチが起きたッス。』

『閃さんなら大丈夫ですわ。』

『そうッス!レベル150の化け物も圧倒してたッス!格好良かったッスよ!。』

『そ…うなんだ…見たかったな…。』

『そのうち見れるッスよ!。あと、基汐さんと光歌さんは、白達を見付けようと情報収集してるみたいッスね。』

『あら?そうなのですか?それは申し訳ないことをしましたわね。どうしますか?代刃?皆さんが待つ拠点に向かいますか?。』


 肩までお湯に浸かって体育座りしていた代刃ッチに春瀬ッチが尋ねる。


『ねぇ。今回の白が遭遇した事件の情報…集めたら、閃…喜ぶかな?。』

『そうッスね…閃先輩は兎に角情報が欲しいって言ってたッスから…多分…。』

『じゃあ。集める!。』


 立ち上がり拳を持ち上げる代刃ッチ。なんかスイッチが入っちゃったみたいッスね。


『じゃあ。拠点には白が連絡するッス!。』


 白はアイテムBOXから1枚の折り紙を取り出す。そして、スキル 鬼法 言霊書記 を発動する。


『で、これに言葉を文字にするッス。えっと…無凱さん、仁さん、クロノフィリアの皆。白達は元気です!。代刃ッチと春瀬ッチの3人で居ます。閃先輩とも会いました。現状は把握できていますッス。白達は個別で情報収集した後、そちら拠点に向かうッス!だから心配しないで下さいッス!あと…基汐さんと光歌さん…早く会いたいッス。以上ッス!。』


 魔力でコーティングした折り紙でヒトガタを折る。


『鬼術…鬼法 形代傀儡!。』


 ヒトガタは意思を持ったように準備運動を始め、白に敬礼した後トコトコと茂みの中に消えていった。クロノフィリアの拠点へ向かったのだ。


『これで、大丈夫ッス!』

『では。明日からの行動は決まりましたね。』

『うん!閃に褒めて貰うんだ!。頑張る!。』


 翌日、白達は情報を集める為に行動を始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


『俺はもう…我慢できない。おい、こっちを見ろ。』


 背の高い男性が小柄な人物を壁際に追いやり顎を持って顔を向かせた。


『俺は決めた。お前を俺のモノにする。お前に拒否権はない。素直に俺のモノになれ。』


 至近距離で囁かれ小柄な人物が顔を赤らめ小さく頷いた。


『僕を…先輩のモノにして下さい。』


 背の高い男性は満足そうに笑うと小柄な 少年 の唇に自らの唇を重ねた。


ーーー


『はぁ。在り来りなストーリーね…。』


 閉め切った薄暗い部屋の中、画面に映る男性同士の口づけを観ながら溜め息をつく女性。


ーーー


『はは。そんなんじゃ!僕は満足しませんよ!。』

『ああぁぁ。すまない。不甲斐ない俺ですまない!。』

『ははは。言い声です!もっと僕に聞かせて!。』


ーーー


 少しすると画面から聞こえてくる声に変化があった。女性は身を乗り出して画面を凝視した。


『えぇ!こっちが 攻め なの!?さっきまでそんな素振り少しも見せなかったのに…。』


 食い入るように画面の光景を堪能した後、液体を飲む。


『はぁ。美味しい…もう2年か…。』


 カーテンの隙間から見える景色には2年前には無かった生い茂る木々が永遠と続いていた。


『もうちょっとで、積みゲーもヤり切っちゃうし…ネットも使えないし…。そもそも、電気も通ってないし…。皆…何処に居るのよぉ…。』


 2年前の、あの日…世界は変わった。

 翌日まで皆で楽しくプレイしていた、とあるネットゲーム。

 タイトルはエンパシスウィザメント。

 ギルドの皆で協力して、ついに裏ボスを倒してゲームを完全クリア。

 嬉しくて嬉しくて。皆でお祝いした後にログアウト。そのまま眠りについて…目が覚めた時…世界が変わっていた。


『はぁ。何で私は、こんな目に…神無ちゃんみたいに上京すれば良かったのかなぁ。』


 ワンルームマンションの一室で目覚めた私は自分の身体の変化に衝撃を受けた。っと同時に絶望した。


『これ…ゲームの…。』


 その日から部屋に電気が通わなくなった。

 テレビもパソコンも冷蔵庫もストーブもクーラーも電化製品がまったく機能しなくなったのだ。

 外に出て確認しようにも自分の身体の異常のせいで出るに出られない。

 そうこうしている内に、マンションの周辺、見渡す限り全てが生い茂る森の木々に包まれていった。

 どうしようもなくなり…部屋の中に引きこもることになった。

 今、部屋の中で明かりが点いているのはパソコンのモニターだけ。そのコードは私の腕に接続されている。

 眼鏡を掛けていたのに…もう必要がなくなった。自分で視力を調整できるのだ。

 飲んでいる液体だってジュースやお茶なんかじゃない…オイルだ…。オイルよ?。凄い美味しく感じるのよ?。


『私は人間じゃなくなっちゃったんだ。』


 その事実を忘れるために私はゲームに没頭した。そして、部屋の中に無造作に積まれたゲームを1つずつ消化していき2年が経過。

 外の状態も分からないし、皆が何処に居るのかも分からないし…。


『閃ちゃん…神無ちゃん…。』


 クロノフィリアの皆ぁ。何処にいるのぉ?。


 そんなことを考えながら、新しいゲームに手を伸ばした。動かなくても手が伸びる。そんな身体を悲しみながら…。

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