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第48話 バグの能力

 知覚出来ない速度と豪腕から繰り出された一撃は衝撃を発生させ、白を周囲の岩ごと吹き飛ばした。


『ぐあっ!かはっ!…くぅぅ、これはちょいキツいッスね。』

『がぁぁあああああああ!!!。』

『狂化状態でも縮地は使えるッスか!。』


 縮地で間髪いれずに追撃を行う鎖金。既に眼前に迫る姿。全ての動作が、ほぼ1歩の内に完結している。

 スキル 鬼法縮地 を使い紙一重で回避するが、鎖金はその力で壁の岩を破壊、爆発した岩の破片が白へと襲う。


『痛てて…力も強すぎッス!。』

『がぁぁあああああ!。』

『くっ!しつこいッス!。』

『転炎!四方翼陣結界!。』


 尚も追撃を止めない鎖金の周囲を四角形の炎の壁が取り囲んだ。これは、睦美の防御スキル。本来は味方を囲み外部からの攻撃を防ぐのに使用するが、敵を内側に閉じ込めることで動きを封じる使い方もある。


『っ!?がっ!?』

『睦美先輩!助かったッス!。』

『これで!少しでも休め!転炎光!。』


 睦美から放たれる3色の光によって白の傷が癒える。


『助かるッス!。』

『ワシが時間を稼ぐ今のうちに態勢を立て直せ!。』

『了解ッス!。まさか、これまで使うことになるとは…最後に使ったの2年前のリスティナ戦以来ッス…上手く出来るか分からないッスが!。鬼法…。』


 白が雷を纏う小刀を自分に突き刺した。刀に宿る魔力を自身の体内に取り込むことで発動する奥の手。


『奥義…黒雷呪姫…顕現…。』


 白の身体から無差別に放出される黒い稲妻。小柄だった白の肉体は成長し20歳前後の姿へと変わる。その身体は雷を宿し、雷を支配する神へと昇華された。

 今、雷神がその姿を現したのだ。


『ぐっ!?コヤツ…わ、ワシの結界ごと魔力を食っておる!…ぐっ…光属性のスキルを吸収しておるぞ!。』


 鎖金のスキル 肉体補強。

 本来、朽ちる肉体を持つ存在は種族がゾンビやグールといった光属性を弱点とする場合が多い。だが、鎖金の種族は人族。故に光属性は弱点ではなく回復に働いてしまう。

 睦美の炎は再生の炎。つまり、見た目は炎の属性だが、その実は光属性。

 鎖金はその魔力を吸収することで朽ちる肉体で失った肉体と白からのダメージ、失われた魔力を回復したのだ。


『ぐ…限界じゃ…。』


 睦美の結界が破られた。スキルを使えば使う程、鎖金を回復させてしまう。文字通り相性が最悪だった。

 だが、時間は稼げた。その拘束した時間は決して無駄ではない。それが、クロノフィリアの連携だ。


『がっ!?。』

『遅いですよ。』


 自由になったのも束の間。鎖金の視界に雷神が立ちはだかった。


『雷閃!。』


 白の指先から発射される白い閃光。光を見た瞬間には既に鎖金の身体は貫かれていた。


『間に合ったのぉ…。』


 僅に宙に浮き、雷のスパークが全身に纏う。短かった髪は長く美しく。天女を思わせる姿。ゆらゆらと靡く羽衣がより神秘性を際立たせた。


『がっ!がっ!がっ!がっ!がっ!』

『無駄です。』


 次々に鎖金を貫く白い閃光。手に持つ刀で防ごうとするも間に合わない。それだけの速度と命中精度。


『がっ!がぁぁあああああああ!!!。』

『今度は特攻ですか…。しかし、遅い。』


 閃光を防げないと本能で悟った鎖金が取った行動。それは、ダメージ無視の突撃だった。

 だが、その行動が成功することは無い。何故ならば、既に雷神は移動していた。

 鎖金の目の前に…。


『がっ!。がぁぁぁああああ!。』


 首を掴まれ持ち上げられる鎖金。先程、閃に鎖金がしたことを今度は自分がされることとなった。

 白の肉体は常に稲妻が帯電しており、触れるだけでも鎖金の身体はダメージを負っていく。


『終わりです。鬼法…神技…。』


 洞窟内に黒雲が発生し雷が落ちた。

 閉ざされた空間に…轟音、閃光、衝撃。全てが洞窟を破壊し尽くす。


『黒雷呪…万雷喝災。』


 そして、特大の黒雷が首を掴まれ踠いていた鎖金に降り注いだ。


『がぁぁぁぁああああああああああ!!。』


 全てを巻き込んだ万雷は数分間続き、静寂が訪れた頃には力無く倒れる鎖金と、それを見下ろす白の姿があった。

 周辺の岩で出来た地面や壁は粉々に破壊され巨大な穴が出来上がっていた。


『やったか…。っ!。』


 睦美が声を上げた瞬間。


『パラララララララッダダ!ダダッダタタダダ!!!。』


 またしてもゲーム時代のBGMが流れ始めた。

 しかも、これは…。


『ボスの体力が3分の1になった時の…。』

『ああ、気を付けろ!白!。』

『ええ。』


 敵ボスのHPが3分の1になると、ゲームのBGMがボス戦のものからより重々しくスピード感のある曲へと変更される。

 このBGMが流れると、ボスの行動パターンの変更。ボスの姿が変わる変身。ボスの能力強化などが起きる。

 そして…鎖金に訪れた変化は…。


『神速…。』

『え!?。うっ!?。』


 白が斬られた。胸を斜めに…。血が吹き出し、その場に倒れた。


『『白!。』』


 俺は鎖金を情報看破で確認する。


ーーーステータスーーー

・名前 鎖金

・レベル 150

・種族 人族

・スキル

 縮地 バグ修正プログラム(強) 境界剣気

 明鏡止水 神速刀 直感 心眼 

 光属性完全耐性 朽ちる肉体(効果低下) 

 限界突破

・装備

 神憑りの甲冑

・装備

 神依りの刀


 マジか…。スキルがもう別物だ。


『バグは滅す。』

『まだです。』


 白が倒れた体勢のまま指先から雷の白い閃光を飛ばすが…。


『視える。』

『うそっ…。』


 あの鎖金の野郎、斬りやがった。さっきは反応すら出来ていなかったのに…。


『くっ。』


 連射。連射。連射。


『無駄だと言っている。』


 斬る。斬る。斬る。白が放つ閃光の悉くを斬り払っていく鎖金。


『これでも。』

『足掻き。』


 諦めずに黒雷を放つが閃光と同じ末路を辿るだけに終わる。


『死ね!。』


 白へ振り下ろされる刀。怪我を負っている白は今動くことが出来ずにいる。


『させん!。』


 そのタイミングで睦美が白を蹴り飛ばした。


『む?。』

『ぐっ…。』


 睦美に蹴られた白は転がりながらも斬られずに済んだ。だが、白を庇った睦美は腕と翼が斬り落とされてしまう。


『転炎光!。』


 再生する炎によって白の傷、そして、失った腕と翼が蘇る。


『邪魔をするな!。』

『ぐぁあっ!。』


 睦美を蹴る鎖金。そして、白へと視線を戻し縮地、再び、白へ刀を振り落とす。


『まだじゃ!。ぐっ!。』


 白に抱きつき背中を斬られる睦美。


『小賢しいぞ。バグの仲間。』


 鎖金の突きの構え。狙いは白。だが…睦美が手を広げ白の壁になった。


『先輩。』

『今回、あまり活躍出来んからな。壁くらいにはなろう!。』


 刀が突き刺された。

 しかし、睦美も白も貫かれることはなかった。2人は今、俺の背中と腕の中にいる。


『あれ?。先輩?』

『いつの間に。』


 背中の白が俺に気付いたようだ。


『どうやら間に合ったぞ。』


 全身の刻印が白く輝き髪の毛も白くなっている。成功だ。


『閃?。』


 目をパチクリさせて俺を視る睦美。


『ったく。いくらスキルで傷が癒えるからって味方が傷付くのを見る方の身にもなれって…。まあ、無事で良かった。』


 睦美に向かって笑ってやる。


『あっ…。』


 あれ?また無言?てか、下唇噛んでね?。


『はい…申し訳ありません…旦那様…。』

『おい!?またか?。』

『きゃーーーーー!睦美先輩!乙女ッス!可愛すぎるッスよ!。って…あ!?テンション上がって雷神化が解けちゃったッス!』


 白の雷神化は精神が落ち着いた状態を維持しなければ継続出来ない。少しでも乱れると強制的に解除されてしまうのだ。


『まぁいい。お前らはここにいろ。後は俺がやる。』

『…はい。旦那様…お気をつけて…。』

『ヤバいッス!睦美先輩!最高ッス!。』


 調子狂うな。

 よし、気を取り直して。


『さて、やるか。鎖金。悪いがこの状態になった以上、お前の敗けだ。』

『馬鹿なことを。バグを排除するのが俺の役目だ。バグごときには負けん。』

『なら。試してみろ。』

『がっ!?』


 次の瞬間、吹き飛ぶ鎖金。


『何だ!?今のは?。』

『ただ殴っただけだ。』

『阿呆な。お前は動いていなかった!。ぶっ!?。』


 再び、吹き飛ぶ鎖金。


『くっ…何が起きている!?。ぐあっ!?。』


 拳打。拳打。拳打。


『ぐぁあっ!?馬鹿な!?ぎっ!?まったく…だぁっ!?見えん!?ごっぁっ!?』


 拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。拳打。


『ばっ…馬鹿な!バグはただ歩いているだけだ!何故攻撃が来るのだ!?。』

『お前も、人族ならわかるだろう?。』


 種族は必ず特性を持つ。

 例えば睦美の場合。種族は転生炎鳥族は、種族スキルとして飛行と自己再生を持つ。また、覚えられるスキルで系統が回復能力に属するスキルを習得する際に追加効果を獲得できるという特性を持っている。

 そして、人族の場合。


『人族は、レベル99までは特徴の無いハズレ種族だ。覚えられるスキルも並みかそれ以下。だが、限界突破を手に入れた瞬間、大化けする。』


 レベル100を超えて初めて獲得できるようになるスキル。

 【全能】 神に近づきし者。

 それは…獲得するスキルに種族制限が無くなるというもの。そのスキルにより、俺はクロノフィリア全員の能力を使用することが出来る。人間の持つ 無限の可能性 を形にしたスキル。

 だが、それだけではない。

 もう1つ、人族にしか与えられないスキル。

 【闘神化】 我、神の領域へ踏み入れし者。

 すなわち、歴史に紐付けられた戦いの記憶。

 肉体は神になり 闘い という局面で最強の種族へと変わる。


『お前の勝ちはない。諦めろ。』

『黙れ!バグ風情が!。』


 刀を振りかぶる鎖金に俺は拳を叩き込んだ。


『がっ!?。』


 俺はゆっくりとした動作で鎖金とすれ違う。すれ違いざまに9発の拳打。


『がっ!?。』

『言え。お前に行動を指示しているヤツがいるだろう?誰だ?。』


 拳打。


『がっぐっ!?。』

『言え。』


 拳打。


『ぐぅぅぅううう。…はぁ、はぁ…ふっ。我に勝ち目はない…真実…だったな…。』


 膝を付き刀を鞘に納める鎖金。


『そうだ。お前に勝ち目はない。どうする?まだ続けるのも俺は構わないが?。』

『生き様を…晒すつもりはない!。』


 鎖金は、懐から取り出した小刀で自らの首をかき斬った。崩れ落ちる鎖金の肉体は砂のように風化する。


『ふぅ。終わったな…。』


 その様子を眺め、スキルを解除する。

 白い輝きは消え、通常の男の姿へ戻った。


『うむ。流石、閃じゃ!信じておったぞ!。』

『本当ッス!流石ッス!最強ッス!。』


 俺に抱きつく睦美と跳び跳ねる白。

 戦いは終わった。

 謎の洞窟の謎のボス戦。

 途中で流れたBGM。

 分からないことは多い。

 何者かが居たのは確実だ。俺達は手分けして洞窟の中を調べたが手掛かりになりそうなモノは見付からなかった。


『ダメだな。そろそろ戻ろう。久し振りに疲れた。』

『うぬ。そうじゃのぉ。ワシもクタクタじゃ。』

『了解ッス!。白はとっても楽しかったッス!。』


 俺達はそのまま洞窟を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


?『うーん。やっぱり 人間 をレベル150にすると何処かで欠陥が生まれちゃうね。どうやって アレ達 は肉体を維持してるのかな?。』

?『今回も私に失態は無かった。メロディに間違いは無く、効果も十分付与された。』

?『あれが___が言ってたバグ?。強いね。』

?『そうだね。あれはバグだ。我々が排除しなければならない不穏分子。』

?『このまま放置は出来ないね。』

?『ならば、やることは…。』

?『準備と実験!。』

?『今までと変わらないな…。』

?『まだ、 その時 じゃないんだよ。』

 このお話を読んでくれた方。

 ブックマークに登録してくれた方。

 ありがとうございます。

 良ければこれからも読んでくれると嬉しいです。

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