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第47話 ボスステージ

 洞窟の最深部に辿り着いた俺達は、そこで石造りの扉を発見した。

 妙な胸騒ぎと警戒心に緊張しながら扉を開ける。扉は少し力を入れると…ひとりでに左右へ開いていった。

 ますます、ゲームの時のボスステージのようだ。あまりにも似すぎていてゲームの中に居るような錯覚すら感じる。

 俺達は扉に入る前に部屋の中を覗き込んだ。

 ゲームの時の仕様としてステージ内に入らなければボス戦は発生しない。どうやらここも同じようだ。

 中を見渡すと最初に目に飛び込んできたのは鎧の置物?だった。見た目は鎧武者と言った風貌。所々壊れていたり、汚れていたり、随分と使い込まれているようだ。岩を椅子にし腰を下ろし、刀を地面に突き刺したポーズで動かない。

 周囲はかなり広い。ここで戦うことを想定して作られたようなフィールド。周囲は岩の壁、入り口は俺達が居る扉が1つだけ。

 本当にゲームみたいだ。

 俺は試しに鎧武者に情報看破のスキルを発動した。


ーーーステータスーーー

・名前 鎖金(サコン)

・レベル 150

・種族 人族

・スキル

 縮地 朽ちる肉体 バグ修正プログラム

 境界剣気 明鏡止水(使用不能) 狂戦士化

 直感 肉体補強 限界突破

・装備

 古びた甲冑 

・武装

 古びた刀


『レベル…150…だ?。』

『え?。』

『マジッスか?』


 俺の言葉に睦美と白が各々 情報看破 を発動し鎧を観察する。

 この間も鎧はピクリともしていない。やはり、ゲームの時と一緒なのか?。


『本当じゃのぉ…。しかも朽ちる肉体とは、あのスキルは徐々に自身のHPが減っていくデメリットスキルじゃ。』

『でも、おかしいッスよ?白達みたいに限界突破2のスキルが無いのに150だなんて。』

『分からないことばかりだな…バグ修正プログラムなんてスキル聞いたことないぞ。』

『どうするッスか?。』

『…レベル150を野放しには出来ないしな…何よりも情報が欲しい。俺が試しに…。』

『ワシも行くぞ。』

『白もッス!。』

『そうか。わかった。3人で行くぞ!。』


 俺達は互いに頷き合い、広い空間内に入った。

 その直後…。


『がぁぁぁぁぁぁぁ…。』


 鎧の化け物 鎖金が立ち上がり地面に刺さった刀を抜いた。そして、腕の肉が地面にボタボタと地面に落ちる。


『やっぱり、ゲームの時と同じッスね。中に入った途端、あの鎧が戦闘態勢になったッスよ!。』

『皆。油断するなよ!。』

『ああ。任せろ!。』


 武器を取り出し鎖金の動きを注視する。

 俺は一先ず智鳴の能力を持つ神剣 炎舞神剣を構えた。この神剣は剣身から炎を出し自在に操ることが出来る。

 睦美は青龍刀を持ち、炎の翼を広げた。

 白は4本の宙に浮く刀の中から1本を抜き構えた。白の周囲に浮かぶ4本の刀は各々違う性質を持ち、状況に合わせて持ち替える戦闘スタイルだ。

 樺緒楽を刺した刀は刀身を自在に伸ばすことが出来た。


『がぁぁぁ…バグの気配だぁ…。バグはぁ…お前かぁぁぁあああああああ!!!。』

『はやっ!?』


 一瞬、睦美と白の方に視線を向けた瞬間、鎖金がスキル  縮地 によって俺の目の前に迫っていた。予備動作が無く、俺が気付いた時には眼前に刀の刃が迫っている。この速さは…。


『くっ!。』


 避けられねぇ…。的確に捉えている首。圧倒的速度と正確さで狙って来やがった。


『閃!。』

『先輩!。』


 刀は振り抜かれた。


『!?。消えた?。』


 あっぶねー。 初撃無効 が無かったら死んでたぞ。

 無凱のおっさんの箱で鎖金から離れた位置に移動する。


『そこか!。』


 再び発動された縮地。今度は目を離してねぇぞ!。

 矢志路の神剣 呪血神剣を取り出し鎖金の刀を防ぐ。


『っ!コイツ…力も…ぐっ!?』


 煌真の剛拳神剣も使い、腕の筋力を向上させる。


『っ…らっ!!!。』


 全力で呪血神剣を叩き込む。

 この剣は剣身から滴る呪血の刃を飛ばすことが出来る。飛ぶ血液の斬撃だ。


『遅い。バグの攻撃など効かぬ。』

『なっ!斬撃を素手で!?。くっそ!煌真の力でも互角かよ。伊達にレベル150じゃねぇな!。』


 俺の斬撃を掴み粉々にした。

 人のことバグとか呼びやがって…。コイツ何を言ってやがる。


『まだッスよ!。呪伸刀!。』


 スキル 鬼法縮地 を持つ白が斬り掛かる。

 同じ移動術を持つ者同士の剣撃。ぶつかり合う2つの刃と響く金属音。


『お前はバグの仲間…バグの持つウィルス侵食されたか…。』

『何を言ってるんスか!閃先輩はバグなんかじゃないッス!。やっ!。』


 渾身の一振。その一閃も難なく躱される。だが…。


『隙ありッスよ!。』

『む!?。』


 避けた体勢の僅かな隙を狙い白の刀が伸びる。刃は鎖金の右肩を捉え貫いた。その衝撃で刀を落とす鎖金。


『ぐっ!?。珍妙な…。』

『この呪伸刀で斬られると呪いの力で腐食するんスけど…もともと腐ってるんで効かないッス!。』

『こんなモノ…。』

『あっ!そんな腐ってる手で触らないで欲しいッス!。』


 伸びた刀身を縮める白。

 そして、鎖金の後ろに回り込んだ睦美の攻撃。


『こっちにも居るぞ!はっ!。』

『む…まだ。汚染された者が居たか…。』


 青龍刀で左の肩口から腰までを斬り裂いた。


『お主を 綺麗にしたら 何処まで戻るかのぉ。』


 睦美のスキル 転炎光 が鎖金を包んだ。このスキルは対象者の最も 綺麗 だった状態に戻すというもの。傷口に当てると傷が綺麗に最初から無かったように治り。生物に使うと対象者が一番、綺麗…純粋だった年齢まで若返る。だが、生物限定の能力なので壊れた物には効果がない。


『おお。朽ちた身体が…。』

『おっと!?これは逆効果じゃ…あやつ、朽ちた身体が最初の状態に戻りおったぞ!ワシ…もしかしなくても…足手まといじゃな…。』


 鎖金の失って腐れ落ちた肉体が元に…この部屋に俺達が入った時の状態に戻ってしまった。

 表示はされてないがHPも回復しただろう。


『10!吸魂神剣!。魂への攻撃ならどうだ!。』


 全力で壁を蹴りその勢いで斬り掛かる。


『無駄だ。直線的過ぎる。』


 落ちていた刀を拾った鎖金は俺の剣を受け止めようと刀を構えるが、この剣はすり抜ける。


『何!?我の刀を?』


 俺の剣は鎖金の胴体を斬り裂いた。もちろん魂への斬撃なので外見の傷はない。だが、胴体を斬り裂いたのだ鎖金の下半分はもう動けないだろう。


『何をしている?。』

『はっ?何で動いてやがる!?。ぐっ…。』


 鎖金に首を掴まれ持ち上げられた。くっ…力が…強い…。

 鎖金は動いている。

 何故だ?。考えられることは…。


『終わりだ。バグよ。む。』

『呪巨刀!!!。』


 途轍もなく大きな…巨大な刀が俺と鎖金を引き裂いた。

 そのまま地面を大きく抉り周囲の岩を吹き飛ばした。俺はその衝撃で吹き飛ばされたが空中で睦美に抱き抱えられた。


『完全に不意討ちのタイミングだったんスけどね…直感のスキルがうざいッス!。』

『ちと…まずい状況じゃのぉ。』

『助かった。ありがとう。睦美!白!。』

『なんのッス!。』

『当然じゃ。』


 土煙の中から現れる鎖金。完全に避け切ったようで傷1つ付いてない。相変わらず視線が俺に向いているし。


『1つ、わかったことがある。』

『何じゃ?』

『アイツは…おそらく死んでいる。ただの死体だ。魂も無い。現に灯月の神剣で斬っても効果がなかった。』

『死?だが、ヤツには意志があるように見えるぞ?。』

『意志というより…誰かに、そう行動するようにプログラムされているんじゃないだろうか?』

『行動を強制されておると?。』

『ああ。多分、あの本体の…鎖金というプレイヤーの死体を操っているヤツがいる。』

『む…。じゃがどうする?それでは操っている者を倒さないとヤツは止まらぬのではないか?。』

『いや、方法はある。朽ちる肉体を加速させる。』

『ダメージを与え続けると?。』

『ああ。』


 俺は男の姿に変わる。


『内効魔力をアイツの身体に流し続ける。』

『じゃが。それには…かなりの魔力を溜める必要があるぞ?。ヤツのHPは朽ちる肉体で削れていくとは言っても、まだまだ残っておるだろうし…。』

『大丈夫ッス!。』

『白?。』

『ここは白に任せるッス!。』


 宙に浮く4本全ての刀を解き放つ。宙を旋回する刀。そして、腰の小刀を抜き放つ。


『時間稼ぎするッスよ!。久し振りの本気モードッス!。』

『何だ…その…刀は?。』


 小刀から溢れ出る身を切り裂く程の異常な魔力。

 属性は雷。


『呪巨刀…呪伸刀…呪透刀…呪霧刀…全ての刀を今1つに…。』


 4本の刀が小刀に吸収される。


『黒呪光…雷豪風雲!』


 身体全体を雷が纏う。自身を雷の化身とする白の切り札。

 その速度は…。


『何!?』


 鎖金の反応速度を軽く上回る。


『行くッスよ!。』

『ぐっ…。』


 圧倒的な速度の差は鎖金の攻撃を封じ防御に徹底させた。

 速さと手数で鎖金の動きを完全に封じたのだ。


『今のうちじゃ。閃!。』

『ああ。もう始めてる!。』


 俺は目を閉じ身体の内側に流れる魔力を高めていく。

 全身に描かれている刻印が徐々に光を放つ。この刻印が全て光るまで5分の時間が必要。

 それまでは、白を信じるしかない。


『炎翼転盾!。』


 俺の周囲を守る炎の翼。自らの身体を盾とする睦美の防御スキル。


『これくらいしか、役に立てんからな…。』


 そんなことはない。俺は睦美も白も信じているし。助けられていると思っている。


『睦美にも俺は助けられてるさ。だから、そんなことは言うな。』

『…ああ。すまん。弱気になった。』


 俺を包む炎が強くなる。


『時間まで…閃には指一本触れさせはせん!。』


 白の攻撃は最早目で追える速さではない。言うなれば雷そのものだ。到底…生物が反応できるものではないのだが。

 白は攻めあぐねていた。


『直感と境界剣気の組み合わせは厄介ッスね…翡無琥っちと戦ってるみたいッス!。』


 境界剣気のスキルは自身の刀が届く範囲内の、あらゆる動きを知覚すると同時に反応できる能力。

 一方、直感はそのまま感覚で察する能力。

 白の攻撃は紙一重で躱されるか、剣で防がれるか、受け流されるかのどれかで捌かれている。

 神具の力を使い続けている白。魔力はどんどん消費されていく。

 

『ぐっ!攻め切れないッス!。』


 だが、それは鎖金も同じ、ただ速い。その一点で防御以外の行動を封じられているのだ。それに常にスキルを発動している状態を余儀無くされるため魔力を消費し続けている。


『ぐっ…速すぎる…。』


 攻撃と防御。互いに魔力を消耗し続ける戦い。


 だが、それも長くは続かなかった。

 次の瞬間。それは起きた。


『パラララダッダ…ダッダダ。ドドドド。パララ~。』


 音楽が流れる。


『え?これ?。』

『む…。何だ?。』


 音楽はこのフィールド全てに響いた。


『閃…これは…。』

『ああ。エンパシスウィザメントの…。』

『ボス戦BGMッス!。』


 何故?この空間に?いきなり?

 様々な考えが3人の思考を駆け巡る中…鎖金に異変が起きた。


『がぁぁぁぁっぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!。』


 スキル 狂戦士化が発動した。

 一部のスキルを使用出来ないようにする代わりに理性を消しステータスを大幅に上げる能力。

 それが…発動した今…。


『がぁぁああああああ!!!。』

『なっ!?。』


 白の反応を上回る速度で地面ごと吹き飛ばした。

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