第26話
防具が揃ったら、次は武器だ。
今回、ワンさんとヨンさんを除いては、特に武器を必要とはしない。
とはいえ、襲われたり丸腰と見せて余計な厄介事が来るよりは、武器を明らかに持たせて警戒させる方が、より安全であるように思えた。
なので、公平に武器を買い揃える事にした。
やはり、金貨100枚は飛んで行った………。
「良しっ、方針を戻す!
次の目的地は貴族街だ!」
目的は、宝石の売却である。
ちと稼いでおかないと、不自然に思われかねない。
金無い為に、宝石を売却するのだ。
しかし、俺のアバターは本当に卯辰の上がらない運命なんだな。
幸運に見放されている。
かと言って、然程悪い事が起こるほど、運に見放されもしていないのだ。
人生に『投了』は無い。
故に、投げやりにならずに、『最善手』を信じて打たねば、或いは指さねばならぬ。
もし人生に『投了』があるとするならば、ソレは自殺であるだろう。
だが、考えても見て欲しい。
『投了』を目指して手を打つ・指す意味を。
将棋のプロの暗黙のルールに、『形作り』というものがある。
結果論、一手差で負けたように指す、ルールというよりマナーだ。
コレをやらなくなったら、将棋の世界は途端に面白味を無くし、人気は衰え、『プロ棋士』が成り立たなくなるだろう。
まぁ、形作りをする程度の努力すらしない者は、プロ棋士にまで届かないだろうが。
俺も、一手差で負けても良いから、勝つ直前の状態にはなるように生きたいものだ。
その為には、一度で良いから、大きな価値を拾う必要があるのだろうけれど。
消える事が可能なら、とっくのとうに消えてやってるよ!
でも、この物語を消す行為は、俺が消える事との直接の繋がりを見出だせないんだよ!
俺は助かりたかった。だからといって、俺が『助ける』という行為は、無意味どころか、余りにも傲慢だと気が付いた!
だから、二度と誰も助けない!何も助けない!ありとあらゆるものを見捨てる!
愛の囁きなど要らない!子供も諦める!パートナーなど要らない!
ただ、希望さえ持てて、幸せでさえあれば、他には、何も………。
「ナナさん………」
自走車に乗って、制御しながら、隣に座るナナさんに声を掛けた。
「俺が、ナナさんを『要らない』と言ったら、どうする?」
分かっている。コチラの世界でナナさんを求めようが突き放そうが、何にも変わらない事は。
「死にます」
「………!」
返ってきた予想以上のパワーワードに、俺は圧倒される。
「………何故?」
「奴隷として、ゼロさん──いえ、ここはご主人様と呼ばせて下さい。ご主人様程の厚遇をしていただける主人を他に私は知りません。
それ故──」
「ナナさんは、いつでも奴隷から解放されることが出来るんだよ?」
「いえ。それでもいつかは食い詰めて、再び奴隷落ちはするでしょう。
そしたら、再び絶望の日々がやって来るでしょう。
それは、今の私には、余りにも辛い経験となるでしょう。
ですから──」
「死ぬ、と」
コクリと、ナナさんは頷いた。
なら、公開処刑の時、ヤバかったんだな………。
「俺、頑張って生きるよ」
「はい」
「頑張って稼ぐよ」
「はい」
「頑張って、皆が幸せになれるよう頑張るよ」
「はい」
「こんな愚かな俺だけど………ついてきて貰えるかな?」
「はい」
「夕飯、豪華にしようか!」
「………はい!」
この、虚しい幸せに、俺は価値を見出そうとしていたが、未だその領域に、俺は至っていない事を知るのだった。
スミマセン、コレでも頑張って執筆しているんです!
ブックマークが無かったら、とっくに心が折れている所でした。
数少ないけど、ブックマークに感謝!
僅かである事は否定出来ないけれど、そのブックマークが筆を進ませています!




