5ー2 ミル商業都市
アルクがセリオン山の小屋に入る前、空が薄暗くなった時、ハリスは酒場にいた。
「おい。ハリス。とんでもないネタがあるんだ。聞いてみないか?」
酒場で酒を飲んでいた鷹の爪のパーティーリーダーであるハリスは情報屋に声を掛けられた。
「ネタ?」
「ああ。とんでもないのがある」
「……金は払わねえぞ」
「いや。お前も俺と同じ共有者にしたいからな」
ハリスは情報屋から話を聞こうかと迷ったが心の底から気になる自分が居たので、情報屋の話を聞くことにした。
「それで?話してみろ」
「ああ……それがよ。ミリス教の奴ら……勇者を召喚しようとしてるんだぜ」
「勇者召喚?なんかの御伽噺話か?」
ハリスにとって勇者召喚は御伽噺話に近い。
今までに勇者は何度か召喚されたことがあるがそのほとんどが本の中の話である。噂によれば最後に勇者が召喚されたのは200年前になる。
「いや違う。ハリス……これは結構ガチらしい」
「情報源はどこからだ?」
「すまねぇ。それは言えない。だが勇者召喚についての話は結構ガチだ」
「ふーん。それで?勇者召喚の目的は?」
ハリスが情報屋にそう聞くと、情報屋はニヤつき始めた。
「それは勿論、闇の使徒アルクの討伐だろうな」
「はいはい、分かったからもうどっかに行け」
ハルスは情報屋にそう言うと「分かったよ」と言いハリスの下を離れた。
(アルク……お前は一体何者なんだ?)
ハリスはそう思いながらも酒を飲み続けた。
――――――――――
夜の教会の一室に教皇サハルが聖書を読んでいると扉が叩かれた。
「だれだ?」
「私です」
「入れ」
教皇サハルがそう言うと一人の司祭が入って来た。
「教皇様。勇者の準備が進んでおります」
司祭の言葉に教皇サハルは頷いた。
「後、どれぐらいかかる?」
「このまま行けば1週間後に、何も問題が無ければ一か月後になります」
「そうか……以外と早いな」
教皇サハルは勇者召喚の準備が進んでいる事に安心していた。
「それで教皇様。勇者召喚をした後の件についてですが……」
「わかっている。聖女シエラとの約束で手厚く扱えと言われているのでな……宿と騎士団の手配を頼む」
「分かりました。」
司祭がそう言うと頭を下げ、教皇サハルの部屋を出た。
「今回も。闇が世界に破滅混沌をもたらす前に」
教皇サハルはそう呟くと眠りについた。
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「ところでよ~。ほんとに闇の使徒が生まれたのか?」
ミル商業都市の門番がもう一人の門番に質問する。
「なんでだ?」
「だってよ。闇の使徒が生まれたってのに凶暴な魔物が全然出ないだろ?」
「確かにな。でも平和でいいじゃないか」
「そうだな……ん?誰か来たぞ」
門番がそう言い指を刺した方向にはマントを羽織った一人の青年がいた。
「ミル商業都市に何の用だ?」
門番がそうマントを羽織った青年に声を掛けた。
「旅の途中でな。しばらくは野宿が続いたから今日は宿を取って休もうかと」
「身分を証明できる物は?」
「それがすまない。旅の途中で盗賊に襲われてな。ほとんど取り返したのだが冒険家カードが見つからなくてね」
マントを羽織った青年がそう言うと、青年の相手をしていた門番は他の門番に指示をした。
「なぁ。水晶を持ってきてくれ」
「分かった」
「しばらくここで待っててくれ」
しばらく城門の前で待っていると、水晶を持った門番が戻って来た。
「ここに手をかざしてくれ」
門番が青年にそう言うと、青年は水晶の上に手をかざした。
「いいか?これから質問する質問に「はい」か「いいえ」で正直に答えてくれ。当たりだったら色は透明のままだが、嘘だったら黒になる」
「分かった」
青年はそう言うと、水晶に触れる。すると、青年は門番にバレない程度に水晶に細工を施す。
「それじゃほんとに盗賊に襲われて身分を証明する物は取られたのか?」
「はい」
門番は水晶に目を移したが色は変更していなかった。
「どこから来た?」
「最初はタルバンの街。次に王都。それで今度はここだ」
水晶はまだ透明のままだった。
「お前は指名手配犯か?」
「……それは……」
門番の質問に青年は口を噤んでしまう。
「ん?どうした?」
青年の行動に門番が疑問を持ち始めた。
「もう一度聞くぞ?お前は指名手配犯か?」
「そ……それは……」
すると青年のバックが動き始めた。
「な、なんだ!?」
青年は背負っていたバックを下ろしバックを開けた。
するとそこにはホワイトスパイダーがいた。
「ホ、ホワイトスパイダー!?」
青年を質問していた門番は驚いた声を上げるとホワイトスパイダーは青年の胸に飛び込んだ。
「そのホワイトスパイダーはお前の従魔か?」
「まぁそうだな。旅をしていたらついて来た」
青年がそう言うと門番は考える仕草をした。すると門番は何かの紙を取り出した。
「ホワイトスパイダーが懐くのは珍しい事だし、俺も初めて見た。今回は特別に仮の身分証明書を発行する。後で必ず身分証明書を発行することだ」
門番はそう言いながら仮の身分証明書を書き、青年に渡した。
「それではようこそミル商業都市へ」




