3ー17 アルク対フローランス2
アルクとフローランスの戦いが始まってから5分が過ぎた。だがフローランスはまだ翼を顕現していない。
[上級炎魔法3つの巨炎球]
と、アルクは巨大な炎の球を3つ出現させフローランスに放った。
だがフローランスはそれらを全て身を捻り避けたが着地に失敗した。理由は水になった氷がフローランスの足元を奪ったからだ。
アルクはそれを見逃さずに、フローランスとの距離を詰め袈裟斬りをした。
[氷魔法・冬桜]
フローランスは周囲に冷気を放ちアルクとの距離を急いで取った。
「ぐ、ううううう」
だが完全に避ける事は出来ずに傷は浅いが食らってしまった。
「仕方ない。アレを使うか」
と、フローランスは呟き詠唱をする。
[氷の神よ、汝に力を与える。我に大いなる力を宿しーーー]
アルクはこれからフローランスが使う魔法は危険だと察知しフローランスに向かってファイアーランスを放った。
[地上を捌く大いなる氷結を齎せ!]
アルクの放ったファイアーランスがフローランスの目の前に迫った。
[聖級氷魔法・絶対零度]
と、フローランスにファイアーランスが当たる直前に魔法をドーム状に発動した。
するとアルクの目の前で信じられない光景が起きた。それは、アルクの放った魔法が凍ったのだ。
アルクは信じられなかった。炎が消えるどころか、凍ったのだ。
「聖級?……今九席、聖級って言わなかった?」
「やっぱり聖級って言ったよな?」
と、観客席が騒いでいた。
聖級魔法とは魔法の中でも最上位に位置し通常10人以上の魔法使いが居ないと発動できない魔法だ。
しかも一度、この魔法を使えば燃え盛る炎の中でも溶岩の中でもありとあらゆる物が凍る魔法だ。
アルクは驚いていた。炎が凍るほどの冷気だけではなく範囲も広い。
[氷魔法・氷の槍]
とフローランスは絶対零度]の中でアルク目掛けて魔法を撃った。
アルクは[アイスランス]を全て見切ったが、フローランスの[絶対零度]をどう対処すれば良いのか分からなかった。アルク自身も、フローランスの魔法を警戒していた。
[上級炎魔法・炎の怒り]
今度はアルクは、上級魔法を撃ったがフローランスに近づけば近づくほど小さくなり最終的には消えて無くなった。
「そんなに考えている時間はあるの?」
フローランスはそうアルクに言った。
「お前こそ。何閉じこもっているんだ?」
「閉じこもっている……」
と、フローランスは何を言われたのか分からなかったが理解した。
「それもそうだね」
と、フローランスが言うと折れた細剣を掲げた。
[独自氷魔法・絶対零度の細剣]
独自技能。それは既にある魔法や武術ではなく、その人が考えて、その人がのみが使える技能。例えば、アルクの我流剣術も独自技能の一つだ。
するとフローランスの細剣にドーム状に展開していた魔力が、フローランスの細剣に収束されていく。
しばらく経った後、闘技場内に漂っていた[絶対零度]の冷気や魔力が全てフローランスの細剣となった。
フローランスは何気なく細剣を横に振った。するとアルクの背後で何かが破裂するがした。
アルクが恐る恐る背後を見るとさっきまで出現していなかった氷の塊が出現していた。
「やった!遂に独自魔法が完成した!」
と、フローランスが嬉しそうな声を上げた。
「待ってくれ。フローランスと言う選手が今独自魔法と言わなかったか?」
「やはり、今独自魔法と言ったのか……」
「ま、待ってくれ!あの年で独自魔法だと!?」
「確か去年までは使っていなかったぞ」
と、観客席は騒がしかった。
だがアルクも気になることがあった。
「フローランス……今、どう見ても[絶対零度]をその折れた細剣の刃に変えたな?」
「凄いね。まさかこれを初見で見抜くなんて」
「まぁな。にしてもその年で独自魔法なんてな」
「ん?アルクも[我流剣術]と言う独自技能使ってるでしょ?」
「そうだが……お前みたいに聖級魔法を使って新しい剣の刃にするなんて、危険すぎて誰もやろうとはしないさ。」
[神速流・五月雨斬り]
フローランスが最初と同じ技をアルクに放った。
アルクは刀や体術を使いほとんど避けたが、何回か掠った。それだけでなく、アルクの左腕に鋭い痛みが走った。
アルクが見てみると左腕の切り口が凍っていた。
恐らくただの斬撃ではなく絶対零度の斬撃なのだろう。
アルクはフローランスの攻撃が終わると刀に[付与魔法・火炎]をやり、フローランスとの剣撃をやり始めた。
アルクが縦切り、横切り、袈裟斬りをしてもフローランスは正確に返してくる。
アルクは何気無く刀を見ると炎を纏っていた筈の刀は炎を纏っていなかった。
「アルク。そろそろ本気を出さないと負けるよ」
と、フローランスが忠告をしてきた。
「そうかい……それじゃあお望み通り本気を出すかな」
と、アルクが言うと全身に魔力を巡らせた。
[独自身体強化術・羅刹]




