3-15 一瞬
観客席に着いたアルクとグラウスは辺りを見渡した。
それはさっきまでの試合が嘘の様に賑やかになっているからだ。恐らく先程までのグラウスとシルアの戦いで驚いたのだろう。だが、一番の理由は次の試合であった。
「次はフローランスとレイラの戦いか」
「氷の女王と水君との戦いか。楽しみだ」
闘技場内はフローランスと十魔剣序列七席の話で持ちきりだ。
「なぁ、グラウス。十魔剣序列七席ってどんな奴なのか?」
「確か十魔剣序列七席レイラ=スプリング。水魔法を得意とする人だ」
「そうか……ん?出てきたぞ」
アルクは闘技場に上がる審判に気がついた。
「皆さん!お待たせしました。Aブロック第3試合!十魔剣序列九席フローランスと十魔剣序列七席レイラの入場です!」
「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」
審判が言うと観客席は歓声で包まれた。そしてフローランスとレイラは審判が合図と同時に闘技場に上がった。
「またお前と戦うんだな。フローランス」
「そうだな」
と、フローランスとレイラは話していた。レイラは身長が190cmあり青髪で黄眼の男だ。
「どうだ?フローランス。前よりも力は上がったか?」
レイラは冷やかす様にフローランスに言う。
「まぁ、前よりは上がったと思う。」
と、二人が会話していると、
「御二方。準備はよろしいか?」
と審判が聞き、
「「問題ない」」
と二人が返した。
「それでは……始め!」
審判の合図と共にフローランスとレイラは剣を取り出した。
だがフローランスは剣を構えたまま動かない。
「どういう……っ!?」
フローランスの動きにレイラは驚愕した。
何故ならフローランスは魔力を全身に込め始めた。
その魔力量はレイラを超えるほどの魔力量だ。
「そうか……そう言うことか。」
と、レイラはフローランスの意図が分かった。
(勝負は一瞬か……)
するとレイラもフローランスと同じように全身に魔力を全力で込め始めた。
そうする事5分経ったその時翼の使用を許可するブザーが鳴ったと同時に二人は魔力を解放した。
フローランスは魔法を使い、レイラは距離を詰めた。
瞬きすれば氷の柱が発生し、瞬きすれば水のドームが発生し、瞬きをすれば氷や水が切れていた。
それほどまでにすざましく早い攻撃だった。
しかし試合は唐突に終わった。
レイラがフローランスの魔法によって氷漬けにされていた。
だが余りの速さに観客だけではなく審判までもが何が起きたのか分からなかった。
「こ……この勝負フローランスの勝ち!」
気がついた審判が言ったが観客は未だに何が起こったのか分からなかった。
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フローランスの戦いを見たアルクは次の試合に憂いていた。
「なぁ、アルク」
「なんだ?」
「今の戦いの状況が分からなかったんだ」
と、グラウスはアルクに先程の戦いについて聴いた。
「確かに……早かったな」
「どうなっていたんだ?」
「確か試合が始まったのと同時に二人は全身に魔力を貯め始めた。おそらく身体強化の部類に入ると思う」
「それで……」
「それで5分経った時に二人は魔力を解放して勝負に挑んでこの結果になったところだと思う」
と、状況が分からないグラウスに簡潔に説明をした。
「そうか……というかよく分かったな」
「伊達に冒険者をやっていなればこんな風に説明出来ないだろ?」
「確かにそうだな」
「ところでグラウス。次の試合は見るか?」
「いや、次の試合はdブロック代表とaブロック代表だから見ないつもりだ。」
「そうか。じゃあ俺は次の試合まで休んでるよ」
アルクは次の試合に向けて休憩室に向かい、グラウスは自分の寮に戻った。
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先程試合を終えたフローランスは闘技場を出るために廊下を歩いていた。だがフローランスは試合が終わってから頭痛を感じていた。
(失敗した…さっきの戦いで魔力を使い過ぎた)
フローランスは先程の試合を振り返りながら廊下を歩いていると後ろから声を掛けられた。
「さっきの戦いは凄かったぞ!フローランス!」
「……レイラ」
「どうした?」
「いや、いつも偉そうに物を言うのに素直にすごいなんて言うなんて」
「いや、俺は弱い奴には厳しく、強い奴には敬意を払うだけだ」
「……そう」
「まぁ、次の戦いも楽しみにしているぞ」
と、レイラはフローランスの次の試合を見るために観客席に向かった。
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しばらくした後dブロック代表とaブロック代表の戦いが始まった。
結果はdブロック代表がいい感じに押していたがaブロック代表の翼展開により勝負が互角になりお互い時間切れになり、引き分けになった。
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アルクは休憩室にて仰向けになり休んでいた。フローランスとレイラの戦いを見て、次はどうやって動こうかと考えていた。
すると休憩室の扉が開いた。
「アルク……」
「フローランス。次だな」
「うん。お互いに全力を出そう」
と、フローランスは休憩室を出た。
(アルク。今度こそ私はあなたの全力の勝負がしたい)
フローランスそう思いながら闘技場に向かった。




