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僕も異世界に行きたい  作者: 十条王子
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横断歩道

 深夜に、数秒で渡りきれそうな距離の横断歩道が、でも赤信号だから立ち止まって、でも車が来る気配は全くなくて、他に人の姿も全くなくて、でもやっぱり赤信号だから一応、渡らずに待ったりするのだけれど、こういう時、どうしていいかわからない気持ちになる。

 渡ってしまっていいのか。待っていた方がいいのか。

 待っていればそれはちゃんとルールを守ることになるし、間違ったことはしていないのだろうけれど、その姿を見て「自分で判断できないのか」と笑う人もいそうな気がする。判断というのは、「車が来ているかどうか」というところだけじゃなくて、時間帯とか、周囲の状況とか、いろいろを含めてのもので、そう考えてみると、これが日中であれば、基本的にはちゃんと待ちそうな気がする。それもそれでなんでだろう。なんで夜の方が、渡ってしまおうという気になるのだろうか。

 分からないけれど、おそらく、やはり赤信号を渡るには、ルールを破っているという後ろめたさがどこかにあって、それが夜の方が、闇にまぎれて感じにくくなるからじゃないだろうか。たぶん結局は、人に見られているかどうかというところが、自分の判断基準になってしまっていて、それはなんだかとても人として小っちゃいような気がして、まさに恥の文化の中にいきているような気がして、ただまぁ、それは置いておいて、とにかく、自分の判断基準はそこなのだろう。

 そこなのだけど、この場合、渡らずに待っていれば、「偉い」とか「それが普通だよね」とか思われるのか、それとも「馬鹿じゃねーの」と思われるのか分からなくて、逆に渡ってしまえば、「だよね、渡るよね」と思われるのか、それとも「あ、悪い奴。クズや」と思われるのか分からなくて、で、どうしようか、分からなくなる。

 自分で自分に対しても、渡らずに待っていれば「馬鹿だなぁ」とも思うし、渡っても「馬鹿だなぁ」と思うし、どうしたらいいのかわかんなくて、ただ自分が傍観者側になった場合を考えてみると、待っている人の方がなんだかちゃんとして見えるというのはある。それは何も考えずにただ信号が赤だから待っているというのであればロボットかよとかも思うけれど、車も来ていないし全然渡れるけど、しかしルールとしてあるものだから信号は守る、という、その人なりの、自分の中の判断基準によるものだとしたら、それは、うん、しっかりしてるなぁと思う。

 結局は自分なりの判断基準を持っているかどうかで、他人がどう思うかに基準を置いてもそんなものは見る人によりけりで千差万別なのだし、そんなぶれぶれのものに基準をおいて振り回されても仕方がないじゃないかということで、何より、他人はお前にそんなに意識を向けてねぇよこの自意識過剰野郎ということで、はい、すみませんということで、だから何より、自分の判断基準で動くことが大切なのだろうし、他者の目線を気にするならそれはいっそ人間じゃなくてお天道様の目を気にした方がきっとよい。お天道様が人間の作り出した交通ルールを守る守らないについてどう思うのかは分からないけれど、きっと守った方が暖かく見守ってくれるのだろうと信じてみようと思う。

 結局なんの話だよって思うかもしれないけれど、短い横断歩道なのになかなか青にならないこの横断歩道をどうしようか迷った挙句に考えたことで、もっと言えば、こういう時に他にも歩行者がいるとなんか気まずい感じがするよね、って話とか、一本待ったあとの世界と渡ってしまった世界は別物だよねとか、そういう話をもっとしたいんだけど、もう青になったから渡るね。またね。

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