オーガ退治した結果
――こうして私たちは強敵・食人鬼を打ち倒したのだった。第一部完。
「終わらすな、終わらすな」
律儀に突っ込んでくれるニッツだった。
それはともかく戦果報告。
討伐成功:食人鬼一匹。
あとは森の中でニッツたちが倒したゴブリンが何体か。
ちなみに食人鬼の『軍勢』となったゴブリンだけど……クリカラが満足そうな顔をして帰ってきたからたぶん大丈夫でしょう。ふふふ、私は従魔を信頼する良い飼い主なのです!
『みゃ!』
誰が飼い主じゃ! とばかりに手を甘噛みされてしまった。ツンデレさんめ。
おっと、戦果報告をしたなら被害報告もしないとね。
暁の栄光にケガ人はなし。
冒険者ギルドにいた冒険者のうち何人かが負傷。そのうち一番重傷だったのは自称勇者であるユー・シャーだった。食人鬼にぶっ飛ばされたあと、なぜかは知らないけど感電したらしい。なぜかは知らないけど。
まぁ重傷とはいえ、お仲間の魔術師の治癒魔法ですぐに治してもらっていたけどね。
あとの被害は……演習場の地面に大きな穴が空いてしまったし、演習場を取り囲んでいたギルドの壁は所々が黒く焼け焦げ、窓もほとんど吹き飛んでしまった。
おのれ食人鬼め! ギルドをここまで破壊するなんて!
「――おまえの攻撃魔法のせいだろうが!」
ガッツーン! っと、ギルマスにゲンコツされてしまった。メッチャ痛い。
「な、何するんですか! こんな美少女に向かって! 暴力反対!」
「うるせぇ! アホなガキを叱るのは大人の役目だ!」
「アホとは何ですかアホとは! 食人鬼討伐成功! 大戦果じゃないですか! 褒められこそすれ、叱られることなんて!」
「結果が出てなかったらこんなもんじゃ済まねぇよ! 冒険者はクビだし建物の修理費も請求するところだ!」
「おお……」
つまり、クビにはならないし修理費も払わなくてもいいらしい。何だかんだで甘い人である。
よしよし。死者はいないし食人鬼も討伐できた。大団円ね。あとはいい感じに丸焦げになった食人鬼のお肉を試食しましょうか。
「やっぱり肉かよ」
「肉しか頭にないのか?」
「あんな危ない目に遭ったのに、よく食べる気になりますね……」
「肉欲騎士……」
口々の大絶賛を聞き流しつつ食人鬼のお肉を――
「は? 駄目に決まっているだろうが」
無情なるギルマスの言葉だった。
「な、なぜに?」
「あのなぁ、よく考えろ? ただでさえ目撃情報が少ない食人鬼。しかも、オークから進化したところを目撃された個体だ。まずは王都に移送して徹底的に調査。その後は貴重なサンプルとして保管するに決まっているだろうが」
「…………、……つまり、お肉は食えないと?」
「当たり前だ」
「なぜだ……」
力なく地面に両手をつく私であった。ちっくしょーめ。




