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閑話 『組織』の男・4


「――おのれぇ! なんなのだあの女は!?」


 組織の再建を目指す男・ゼニーは怒りを抑えることができなかった。いくら他の人間もいたとはいえ、まさかオークまでも倒してしまうとは。


「いやぁ、こちらとしてもあの女は倒して欲しいんですがねぇ」

「難しいようなら、ほら、こちらとしても別の方法を考えますが……」


 護衛の騎士二人はどこか嘲るような口調でゼニーに話しかけている。


 ――屈辱だった。


 本来であれば『ウロボロス』の幹部としてこのような卑しい者たちと会話すら交わす必要がないのがゼニーという男だ。だというのに、今は、そんな騎士共から侮られている。


 このままでは、終われなかった。


「……次に見つけたオークを、進化させる」


「ほぉ、進化。では例の『(やじり)』を?」

「これは期待してしまいますなぁ」


 どこかバカにしたような騎士たちへの怒りを必死に押さえつけながら、ゼニーは再び森に分け入ったのだった。





 オークは比較的すぐに見つかった。


 だが、本来であればそれは妙なことだ。

 オークの個体数は少ないので、いくら森に入ったところでそう簡単に見つけることはできないはず。しかも一体だけではなく、二体連続で。


 しかし、魔物に関する知識がほとんどないゼニーや、魔物退治など卑しい仕事だと侮っている騎士たちには今の状況を『おかしい』と思えるほどの知識はなかった。


「――よし」


 まずは『笛』でオークを大人しくさせ、続いて『鏃』をオークの太ももに突き刺すゼニー。


 ゴブリンに使ったときは、即座に反応があり、ゴブリン・マジシャンへと進化した。


 だが、今回は何も起こらなかった。


「……なぜだ?」


 まさか鏃に注ぎ込む魔力が足りなかったのか? あるいは、鏃が壊れたか?


 二度、三度と鏃をオークに突き刺すが……やはり目立った変化は確認することができず。


「馬鹿な、なぜだ!? ゴブリンならすぐに進化が始まるというのに!」


 冷や汗を流すゼニーの背中に、冷たい声が掛けられる。


「あーあ」

「なんだよ、期待外れだな」


「なんだと貴様ら――」


 怒りと共に振り返ったゼニーは、見た。


 自分に向けて振り下ろされる、騎士の剣を。





「ったく、無駄な時間だったぜ。だいたい森の中に入るのなんざ冒険者に任せればいいんだ」


「まぁ、そう言うな。『笛』と『鏃』の使い方は分かったんだから無駄じゃなかったさ」


「それもそうだけどよぉ」


 まだ不満げな騎士はゼニーの死体に蹴りを入れる。


「おっと、そうだ。そいつの死体も回収しろって命令だ」


「げぇ、何でだよ気持ち悪ぃ」


「この笛と鏃が使い物にならなかった場合、そいつの死体を使って『一連の事件の犯人を成敗した』という話にするみたいだぜ。そうすりゃ手柄は全部第八騎士団(うちら)のもんだ」


「はー、そんなことまで考えてるのかよ。やっぱ団長は腹が黒いねぇ」


「まったくだ。だが生真面目よりはマシさ。……ほら、さっさと持って行くぞ」


「へいへい。……あのオークはどうするよ?」


「放っておけ。もし暴れても冒険者が何人か死ぬだけだ」


「それもそうだな」




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