弟ができたので、悪を行ってみた(4歳)
「う〜ん・・・」お昼寝から起きて身体を伸ばしてストレッチを始めたシンシア。
アンがそれに気がついて、シンシアの傍に寄ってきた。
「おはようございます。お嬢様。よく眠れましたか」
「うん、良い眠りだったのです。さすが私、眠る時も油断はしないのです」キリッとした表情でポーズを決めるシンシア
「はいはい、何と戦っていたのですかお嬢様」少し呆れ顔なアン
「!・・・。・・・。あなたにはまだいうことができない危険な存在となの」
視線を逸らし、告げるシンシア
「思いつかなかったのですね・・・」
反論が思いつかなかったので、寝たふりをすることにしたシンシア
「ぐーぐー・・・。はっ!アンなにかいったかしら」
「何も言っていないので大丈夫ですよ」
「そう、よかったわ」
そんな感じで話をしていると、執事のガーランドがやってきた。
「お嬢様、旦那様がもうすぐお帰りです。お迎えをなされますか!」
「するー!」ジャンプして応えるシンシア。お父さんが大好きなのだ。
そして、玄関まで走り出すのだった。
「お嬢様ー。走ると危ないですよー」
「ワハハー。大丈夫〜」
「シンシア、走るのは危ないわよ」玄関に着くと女性が待っていた。シンシアのお母さんのカトレーヌ侯爵夫人だ。
「だって、お父様が帰ってくるんだもの」ジャンプして待っていたことをアピールするシンシア
そんな感じで話をしていると、扉が開いて、男性が入ってきた。シンシアのお父さんのラーディス侯爵だ。
「お父様、おかえりなさいー」とラーディス侯爵に抱きつくシンシア
「ただいまシンシア。今日も可愛いね」
「ふふふ〜。それほどでもあるのです」満足げなシンシア
「そして、ただいま、カトレーヌ」
「おかえりなさい。あなた」抱き合う二人。仲良し夫婦なのだった。
そんな感じで抱き合っている二人を見ていたシンシアだったが、その後ろに男の子がいるのに気がついた。
「お父様、後ろにいる子はどうしたの〜?」
「そうだった。今日はシンシアに弟ができたんだ」
「えっ・・。お父様浮気していたの・・?そんなお父様嫌い・・・」テンションが一気に暗くなるシンシア
「ち、違うぞ。お父さんは浮気なんてしてない。ほらカトレーヌからも何か言ってくれ」慌てるラーディス侯爵
「シンシア、大丈夫。お父様は浮気する人じゃないから」
「それならどうして子供ができたの・・?」
「私たちの親類の子でね。ご両親が事故で亡くなったから、引き取ることにしたの」少し悲しそうな顔で話すカトレーヌ
「そうだったんだ。ごめんなさい、お父様疑って」しょんぼりしたシンシア
「大丈夫、誤解が解けてよかった。改めて紹介しよう。ロイだ。お前の弟になる」
そう言って紹介されたロイ。彼は、金髪で綺麗な顔の子供だった。笑顔であればかわいいとみんなが言いそうな顔だったが、今は不安から顔がこわばっていた。
「えっと、その・・ロイ・・です」
近寄って、手を握って挨拶するシンシア
「よろしくね。ロイ、私はシンシア」
「うん」なぜか目を逸らすロイ
ん?と思ったシンシアは前世の記憶を探ることにした
『ロイは、攻略対象のキャラの1人で、孤独を好み、いつも図書館で本を読んでいることが多い。人と接するのは苦手なので、それを考慮して交流を持つと良い(by公式ガイド)』
(あら・・・。この子もゲームの登場人物なのね。孤独を好むから、近寄ったことでちょっと変な感じになったのかしら)
攻略ガイドにより、それに気がついたシンシア。
「はっ!」
「急にどうしたんだシンシア」
「なんでもないわお父様。私、ロイを案内するね」
そう言って、ロイの手を引いて駆け出すのだった。
(まずはこの子で最強の悪になるための第一歩を踏み出すのよ。そのために前世の記憶から良い方法を・・・っと)
『今日は、友達と遊ぶ奴らを見て感じだことを日記に残そうと思う。私は友達に頼ったりするということは人間としての強さを弱めるものだと考えている。したがって、私は友達ができないわけではない。人間としての強さを高めるために友達を作っていないのだ。いないったらいないのだ!』
(ふむふむ、理解したわ)
家の庭に出てきたところでシンシアはロイの方に振り向いた
「さあ、仲良くしましょう。私のことは本当の姉だと思っていいのよ」片目を隠してかっこいいポーズをとるシンシア
ロイは、何故か一歩下がって言った。
「僕にあまり近づかないで下さい。僕は、呪われた子なんです」
「ほえ?なんで?」
「この黒髪と黒目は魔王の継承者の印と言い伝えられているのです。いつ、その封印が破られて魔王として覚醒するかわからないって・・・。だから、僕は一人でいる方が良いのです」辛そうな顔をするロイ。
「ふむふむ。完全に理解したわ」
「はい、だから僕を」
「つまりロイは、魔王になってしまうかもしれないから危ないって言いたいんでしょ?でも残念だったわね。私の方がもっとかっこいい悪を目指しているんだから!ロイが魔王になるなら、私は大魔王になってやるのです!」
「えっ・・・」
「だから、魔王になってもロイは私の可愛い弟なんだから仲良くなりましょう。この将来の大魔王シンシアがにとって魔王なんて気にするものじゃないから。えっへん」
「でも僕は・・・うっ・・・」突然苦しそうな顔をするロイ。ロイの周りに黒い霧が渦のように巻き出した。
「こ・・・これは・・・」記憶を辿り、似た事例を探すシンシア
『う・・・呪われた右目の邪眼が疼き出した。みんな離れるんだ。暴走したらこの辺り一帯が吹き飛んでしまう。私もできるだけ被害が少ないところに移動するから!!・・・・そう言って私は、走り出した。別にみんな友達と話をしていて輪に入れなかったとかじゃないんだからね!』
「なるほど、そういうことね」理解したシンシアは、ロイに近づくと、両手で抱きしめた。
「えっ・・・、何を・・・」
「ロイ、私はね、とってもわるーい大魔王を目指しているの。だから、ロイがどんなことがあっても、大魔王シンシアからは逃げられないのです。ふふふ、理解しましたか?」ロイの顔を正面から見つめて笑うシンシア
「う・・・」
「う?」
「うわーん、うわーん」
「泣き出しちゃった。どうしよう・・・」オロオロ
そうこうしているうちに、霧は収まったのだったが、泣いているロイに対してどうすればわからなくて途方に暮れて泣いているところをアンに発見されたシンシアだった。