悔いても遅い
はめられた……!
この女、俺にあの装置を埋めこみやがった……!
最初はロデリック卿を捕まえることだけが目的だった。魔王を誰かの手に渡されないために、監視するのが本来この世界にやって来た目的なのだ。
けれど、この女につかまった。同じく、魔王を必要としている奴に。抵抗する隙すら与えられなかった。
「マギア・ユスティシアを私の前に連れて行きなさい」
それが尋常な意味を持たないことは明白。
こいつは過誤なく、俺を使捨てる積なのだ。
俺を。
「あのマギア・ユスティシアは偽物よ。けど、確かに反射炉は身体の中に埋めこまれている」
「あれを使わないと世界の融合は起こせないのよ。天使の力を使っても、世界そのものを動かすほどの力を持ち得ないと聞いたからね……」
マギア・ユスティシアがこの世界で死亡し、その力が本来こちら側とは何の関係も持っていない奴の手に渡ったと知った時はむしろ愉快だった。あの魔王が、魔法も知らぬ野蛮な連中の、粗野な方法で殺されたのだから! 本来ならそこで全てが終わるはずだった。だがさすがに魔王はしたたかな策略家だった。
奴が体の中に宿していた反射炉は、この世界のとある人間の体内にそっくりそのまま移植されたらしい。
アルカディアの連中が聞いたら驚くことだろう。コンスタンティンがいまだ姿を現さない今、事態は本国が恐れている以上に進展している。
「もしこれを拒んだら……分かるよね?」
こいつの脅しなんてもう、そこからは聴いてなかった。
俺に最初から選択肢なんてなかった。アルカディアにも居場所がなく、まして無理やりにこちらに連れこまれた今となっては破滅の運命しかない。
いいだろう、叛逆してやるよ。この女に、そして勇者コンスタンティンにも盾突いてやる。
全てを破滅させてやる。世界の命運なんぞどうでもよいのだ。
「テオドール、あなたの命は無駄にはしないわ……私はこの世界を必ず、一にしてみせる」
車椅子の上で魔女の眼光をもてあそびつつ、俺を脅しにかかる。
そしてそのためには、異世界人がもう一人相手にせねばならない。
「おい小娘、中村翔吾はどこにいる?」
マギア・ユスティシアに問いかけるが、答はない。
虚ろな目をにらみながら、両手で無理やり引きずって暗闇の中、静かに光る魔法陣の中へと突入していった。
「奴をおびきよせに行くぞ」




