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これからの愛音

「この人は天翔さんの何なんッスか!!?」


「…………」


 前回、天翔はフツヌシと顔を合わせた後、妖館に向かって歩き出した。そうして、彼はそのまま妖館に向かう。フツヌシのことがあったとはいえ、目的を捨てたわけではないからだ。その後しばらくして、彼は妖館へ辿り着く。すると……


 天翔が妖館へ入ってくるのを見止めた瞬間、エントランスにいた河野が彼へと大声で問いを投げかけたのだ。そばで困惑した様子の愛音を指差して、だ。彼女はそのまま、天翔と愛音が黙っているのにも構わずに続ける。


「急に手を貸してくれって言われたんでそうしたッスけど、もし、もしも! この人が天翔さんの女であるなら……」


 だが、河野は長くしゃべることはなかった。天翔が怒鳴って、河野に怒鳴り声をあげたからである。


「違うわ馬鹿ッ!」


「ひゃいっ!」


「まったく……お前は人の心に気というもんが遣えないのか」


「……す、すいませんッス。つい……取り乱して」


 天翔の大声での注意を受けると、河野はその場に縮こまって彼に謝罪した。天翔はそれを、溜め息混じりに目の端に入れる。


 そして、蚊帳の外の愛音だ。彼女は本当に、今の状況が点で分からなかったのだろう。首を傾げて、天翔に問う。


「あの……その方は?」


「ん、ああ。私の……後輩だ。そうだな?」


「えあっ! ああ……そうッス。天翔さんには本当、すごい恩を受けて……」


 天翔の言葉、そして視線を受けると、河野は愛音に自分のことを話す。それを愛音は、ゆっくりと聞いていた。彼女にしてみれば、未だ困惑と悲壮が抜けきっていないのだろう。だから、あまり大きく頷いたりだとか、返事を返すことが出来なかったのだ。だが、天翔と河野はそれを気にすることはない。そのことを、しかと了解しているからだろう。


 天翔はそこで話を変える。愛音に向き直って、真面目な表情をして言った。


「堀田さん。アンタには、しばらくここで暮らしてもらう。家に戻れば、危険かもしれない。かといって……娘さんにはあまり、会いたくないんだろう?」


「……はい」


「分かった。河野、頼むぞ」


「あ……はい。了解したッス」


 天翔は河野が頷くのを見届けると、振り返って、妖館の出口へと向かう。その途中、愛音は……ずっと俯いて、まだ明るさというものが顔にはなかった。

 そんな彼女に、天翔は言い残す。


「私は戻らなければならない。アンタの娘に、アンタの無事を報告しなくちゃならないからな。無論、会わせないようにはする」


「…………はい」


「……これから、何もなければ一生会わないという事もある。ただな……」


 そこまで言って、天翔は振り返る。そして、俯いたままの愛音へ告げた。


「アンタに随時、伝えに来よう。アンタの娘が、ちゃんと幸せでいるか。ちゃんと笑えているか。……これはアンタのためだけじゃない。娘さんのためでもある。……アンタに、会う気を起こさせるためだ。いつか……待っているぞ。いつでもいいんだからな」


「…………!」


 天翔の言葉を受けると、愛音は俯かせていた顔をゆっくりと上げ、彼の背を見た。その背には、確かに優しさというものがある。それを見て、しかと彼の意を感じて、愛音は……


「ありがとうございます!」


 と、天翔の背に伝える。天翔の言葉、その意思は、愛音の心を少しだけ、動かしたのだ。


 愛音の礼に対して、天翔は手をフッと上げるだけで、そのまま帰って行ってしまうのだった。

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