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 女の意外な質問に豊はさらに考えをめぐらせる。三日前、この店に鳴り込んだときに居合わせた女のようだが、全く記憶にない。まあ、それは仕方ないとして、なぜにこの女はそんなことを聞くのか。自分を探しているというのか。なんのために。豊には嫌な予感しかしない。よもやこの女、私服の警察官ではあるまいか、あるいは興信所か。どちらにしろ、あまり関わらない方が無難に思えた。

「なんぞ。あんた、そんなことを聞いてどうするつもりなんぞ」

 しらとぼけてみたが、女の表情は急に明るくなり、胸の前で手を合わせた。

「やっぱり! あのときのお父さんですね。私、目も頭も悪いけど、耳だけはいいんです。ぜひ聞きたいことがあって、昨日からここで張り込んでたんですよ」

 嬉しそうな表情の女とは対照的に、豊は張り込みという言葉に背筋が寒くなった。周囲の年寄りたちが意外そうな顔でこちらに注目している。一体どういうことなのかと聞き耳を立てている。が、聞きたいのは豊も同じだった。

「すまんがのお、俺はもう歳じゃけん、保険には入れん。宗教もお断りじゃ。建託ならどこぞの農家でも当たってくれや」

 そう言いながら豊はリュックを取って腰を上げた。早くこの場を逃げ出したかった。

「あ、待ってください。私はそんなんじゃありませんから。お父さんとどうしても話をしたくって、ずっと待ってたんですよ」

 女が豊の袖を掴んで引き留めにかかる。反射的に豊は手を振りほどき、駐車場に向かって歩きだした。女はなおもついてくる。やはり話を聞いてくれというようなことを言っている。どうせろくな話ではあるまいと自分に言い聞かせる。逃げるようにタプリに乗り込むが、女は窓越しになおも訴える。

「お父さん、お気に触ったのなら謝ります。私、どうしてもお話がしたいんです。また、次の機会にでもお願いします。私もできるだけここで待ってますから」

 委細構わずエンジンをかける。そのまま出口に向かいつつルームミラーで後方を確認すると、女はまだその場に立ったまま手を振っていたが、表情は困惑している風だったのが気にかかった。

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