第1話 俺らって家族やん。
前職から転職して次の会社へ就職した主人公大津。
新天地でも波乱が続く。
新しい会社に入社した。
今後は中規模建設会社である。
前回の失敗は自分たちで頑張らなくても会社が潰れないという安心感から社内政治に傾倒したことが原因と分析した。
次の会社選びの際は自分たちで利益を出している会社に絞って転職活動をした。
その結果東日本大震災と東京オリンピックで活況に沸くとある建設会社に勤めることを決めた。
2015年から2018年までこの会社で勤めることになる。
入社して1カ月。
中途採用ということで最初の数日で実業務を担当するようになる。
1人で複数のプロジェクトをまわさないといけない。
前職での経験があるので問題なくこなせていた。
それでも入社したばかりということで定時に帰ることができた。
そんな生活が1カ月ほど続いたある日。
出社すると課長から呼び出された。
「入社して1カ月経ったけど慣れたかい?」
私ははい、と答えた。
「君はね、中途採用だから前職での経験がある。これは単に仕事だけの知識じゃない。
コミュニケーションの取り方とかチームを円滑に回す方法とかそういうノウハウも持っていると思うんだ。
そういうこの会社でも役立ちそうなものがあったらぜひとも教えてほしい。」
「うーん、そうですね。そういえば前職で・・・」
「はぁ、何マジで言おうとしてんの?
今の空気はさ、”そんなことありません、この会社が一番です”って答える場面だよね。
おめぇ空気よめねーな。
みんなから聞いたぞ、お前定時で帰ってんだって?」
「仕事が終わっていますので。」
「そうじゃないだろう。社会人が定時で帰って言い訳ねーだろうが。
そんなんだから前の会社も辞めることになったんじゃないの?
空気読もうよ。うちの会社は定時後からが仕事なの。
課長の俺よりも早く帰るなんてそんな非常識なことが許されると思ってんの。」
なんということだ。
今度はしっかりと会社を選んだはずなのにどうしてこうなってしまうのだ。
定時で帰ってほしくないならそれとなく伝える方法はあったはずだろう。
1カ月何も言ってこなかったのに、朝一で呼び出されて怒鳴られるのか。
「会社辞めるわ。」
「え?」
「会社辞める。こんなことを言われるために働いているんじゃない。
バカらしい。
辞めるわ。さよなら。」
私は席を立とうとした。
「いやいや待って、え?冗談だよね。」
「冗談?こんなこと言われて笑って許せるほど人間できていないんで。
あきらかなパワハラですよね。
つーか1カ月経って言うことがこれですか。」
「あーいやー。ごめん。言い過ぎた。
だから会社を辞めるって言わないで。」
「簡単に謝んなよ。
あなたも50代半ばとかでしょ、20代に人に簡単に謝ったらだめでしょ。
しかも自分で言っておいて。」
「こんなん冗談やん。
あえてきついことを言って君を試してみたんや。
どういう子なんかなーって思って。」
私が無言で睨みつけていると
「会社って一つの家族やからな。
家族やからたまに喧嘩もするよね。
そういうときにすこーしきついこと言ってしまうことってあるよね。
私と君、パパと息子、家族だよ。
みんな家族。
家族だから仲直りしよ?」
「二度と俺に話しかけるな。」
私は会議室を後にした。
席に戻ると今までにないくらい仕事の依頼が来ていた。
こうして私の定時で帰れる日は入社1カ月で終わったのだった。
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