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第一鋼

俺が腹上死してから10年、地球には脅威が迫っていた。

突如として異界より出現した敵対生物“ワルイド”が東京征服を宣言し、

週1ペースで怪人を作り出し、暴れさせているのだ。


その怪人たちはまだ人間の手に負えるくらいには弱いものの、

ワルイドが本気を出せばこんなものでは済まないらしい。


俺が暮らしている妖精界の軍上層部はこの事態を重く受け止め、

こちらへ飛び火する前に人間界で脅威を排除してしまおうという方針を固めた。


そして考案されたのが“魔法少女作戦”である。

人間の少女に妖精の力を分け与え、戦士に仕立て上げようというものだ。

妖精は人間よりも遥かに強大な力を持っているが、

その力を発揮できるのはこの妖精界でのみに限られる。

人間界でその力を最大限に活かせるのは、やはり人間だ。


少女を対象とするのにも理由がある。

俺は専門家ではないので詳しくはわからないが、

妖精界から送られるエネルギーの変換効率だとかの様々な理由だ。


自分で言うのもなんだが、我々妖精は可愛らしい姿をしている。

特に俺はウサギだかネコだかよくわからない見た目をしており、

動物アレルギーでもない限り少女から嫌われることはないだろう。


そんな愛らしい見た目と、地球の日本出身だという理由から

俺は魔法少女作戦における重要任務を担わされてしまったのである。

戦士適性のある少女を確保し、エネルギーの受け渡し役となることだ。

つまりは魔法少女のマスコットになれという命令だった。






そして出会ったのが小学生の鋼音(はがね)ちゃんだ。

腰まで伸びたツインテールにピンクのフリフリドレス、

これぞ少女といった出立ちで、よく似合っている。

俺はロリコンじゃないし、顔で選んだわけではない。


妖精界から送られるエネルギーを分け与える際に

シンクロ率とかいうのが低いと器になる人間が壊れてしまうのだが、

俺と鋼音ちゃんのシンクロ率はほぼ100%で無駄がない。

本人もやる気充分で、物語の主役になれることを喜んでいるようだ。


そして記念すべき第一戦は原宿の路地裏で行われた。

相手はシンクロ率の低い成人男性が変異したモノだ。

彼は全身の皮膚が爛れてゾンビのように呻いており、

そのグロテスクな外見に鋼音ちゃんは怯んでしまった。


いきなり相手が悪かったようだ。

この程度の怪人なら警察でも対処できるし、今回は撤退しよう。


「わたしは……諦めない!

 ここで逃げたら町の人たちを守れない!」


逃げようとした矢先、鋼音ちゃんが戦意を取り戻した。

意外と根性のある子だ。もう少し様子を見よう。


「わたしに呪文を教えて!

 敵を倒せるやつね!」


呪文なんてものは必要無いのだが、

せっかくやる気になっているのだから協力しよう。

俺は妖精エネルギーを分け与えながら助言した。


「心に浮かんだ言葉を叫ぶんだ!

 それが君の魔法だ!自分を信じろ!」


俺は丸投げした。

鋼音ちゃんは困惑したが納得してくれたようで、

高密度のエネルギーを放出しながら呪文を叫んだ。



「──ラーズ・ウルリッヒ!!」



8000度の熱光線が怪人を襲い、跡形も無く消え去った。


やがて騒ぎを聞きつけた野次馬が集まってきたが、

俺たちは姿を消す魔法で身を隠してその場から退散した。




もし鋼音ちゃんに戦士としての適性が無かったら

記憶を消して新しい子を探そうと思っていたが、

このぶんなら心配する必要は無さそうだ。


彼女とはシンクロ率が高いだけではなく趣味も合いそうだが、

元人間だと知られたくないので最低限の会話に留めておいた。

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