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巻き込まれて異世界召喚、その果てに  作者: ねむねむ
四章 堕天の雪華
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プロローグ

第四章始まりです。

 雪が舞っている。

 否、それは正しい表現ではない。正しくは吹雪いているというべきだ。

 万年雪に覆われる北方の大地、平時であれば積雪で白く染まっていただろう。

 けれども今は違う。馬蹄が踏み荒らし、雄たけびを上げる兵士たちが生み出す流血淋漓によって朱く染まっていた。

 万を超える軍勢がぶつかり合うその様は圧巻の一言。しかし当事者たちにとってはそのような感慨などまるでなく、あるのはただ生きたいという原初の欲求だ。

 殺伐とした戦場は混沌としている。だが、そんな戦場にあってぽっかりと開けた空間があった。普通ならあり得ない光景――されどその空間で対峙する二人の人物に近づけば死ぬと誰もが理解しているために現実の物となっていた。


「……ルイ殿下、できればあなたのことは傷つけたくない。どうか退いてはくれませんか?」


 阿鼻叫喚の戦場にあって異様に静寂な空間――対峙する白髪の少年が言った。

 手にする白銀の剣と蒼光放つ盾が合わさることで神秘的な存在といえよう。しかし顔の左半分を覆う武骨な眼帯がそれを邪魔している。加えて右眼――漆黒の瞳に宿る殺意が少年の禍々しさを表していた。

 そんな少年に対する青年は掛け値なしに神秘的と言えた。

 絹糸のように滑らかな銀髪に金剛石(ダイヤモンド)の如き美しさを持つ銀眼、中性的な美顔と合わさることで正に妖精のようであった。

 彼は腰に差していた青く透き通った剣を抜き放つと少年に微笑みかける。


「それは出来ないね。たった一言で退くならボクは今ここにはいないさ」


 肩をすくめて見せる青年、どこか軽い調子だ。

 されど、そんな青年の態度とは対照的に、彼が身に纏う魔力は異常だった。

 常人――否、人族では到底持ちえない量の魔力を有している。

 そんな彼を見つめる少年の表情には苦いものがあった。


「〝堕天〟……そうまでしてあなたは玉座に就きたいと?」

「ヤコウくん、キミならわかっているはずだよ。この先のことを考えれば力ある者が王位に就いた方がいいってね。もう二百年の安寧は終わってしまったんだよ」

「……確かに今後を考えればそうかもしれません。しかし武力による統治は長くは続かない。この先に待つ苦難を乗り越えたあとはどうするんです?」

「それはその時考えればいい話さ。今はこの国を護ることが優先される。そしてそれを実現できるのは真に力ある者だけだ」


 青年はそういって天を仰ぎ見る。その表情は戦場には似つかわしくない物憂げなものだ。

 しかしそれは――顔を戻した時には消えていて、後には鋭い殺気を放つ銀眼があるだけ。


「対話では解決できない。ボクを止めたければ力ずくでやってみるといい。新たなる〝王の盾〟くん?」

「…………なら、そうさせてもらいますよ」


 苦々しい表情から一転、()()を湛えて嗤う少年は自らの変化に気づけない。その身から本来持ちえないはずの魔力があふれ出たことも、歪んだ覇気をまき散らしていることにも。

 そんな彼を見た青年は納得気に頷いた。


「なるほど……やはりキミはボクと同じ――いや、似て非なる者というところか」


 半透明な剣を構え、腰を落とす。呼応するように対峙する少年もまた臨戦態勢を取った。

 両者が放つ覇気は常人に耐えられるものではない。故にこの場には二人しか存在していなかった。

 

 軋む空気の中で〝堕ちた天〟と〝夜の王〟が今――激突する。

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