プロローグ
第三章〝忠義の在処〟始まりです。
黒天が見下ろす地上では二人の男が対峙していた。
茶髪を風に揺らす青年の瞳は金――雄々しい覇気に満ち溢れている。銀色の刀身が映える剣を両手で正眼に構えていた。
彼の身体には風が巻き付き、魔力と覇気が合わさることで凄絶な雰囲気を醸し出している。
「…………」
対するは白髪の少年。身に纏う白が基調の服と手にする白銀の剣が合わさることで浮世離れした雰囲気を放っていた。
けれども少年の顔――左側が武骨な眼帯に覆われていることで不気味さが演出され、加えて残る隻眼が深淵を宿していることで隠しようのない禍々しさをも持ち合わせている。
光と闇――相反する属性を持つ少年は左手に蒼光を放つ盾を、右手に水晶の如き透明度を誇る白銀の剣を携えて口を開いた。
「何が真の忠義か、誰にその剣を奉げるのが正しいのか……あなたなら既に分かっているはずだ」
「……無論、理解しているとも」
「なら!」
「だが――」
少年の説得を遮る青年の顔は苦渋に塗れていた。
明らかに迷っている――けれども少年に向ける剣に揺れは微塵もない。
「某は国王陛下にお仕えすると誓った身。故に国王陛下の代理であるオーギュスト殿下の命令に背くわけにはいかぬ。それはすなわち国王陛下に背くことと同義であるからな」
その言葉に嘘偽りは感じられない。だからこそ余計に腹が立って少年は吼えた。
「その命令が本当に国王陛下が発したものだとどうして言い切れる?陛下は病床に臥せっているんだぞ!?ならそれがオーギュスト第一王子が勝手に言ってることだって、どうして察せないんだよ!」
「かもしれぬ。だが、そうであるという保証はどこにもない」
「クロード……あなたのいうことだって絶対に正しいって保証はどこにもないだろ」
どちらが正しいのか、どちらも確証を提示できなかった。それ故の膠着状態だったが――、
「……これじゃ一向に埒が明かない」
ならば、どうするのか。
その答えは彼らが武人である以上、たった一つだけだ。
「……いくぞ、クロード。あなたのその固い頭をほぐしてやるよ」
「ヤコウ殿…………分かった。某も貴殿も武人、ならばこれ以上は言葉ではなく、刃を交えて語り合おうぞ」
クロードと呼ばれた青年が深く息を吐く。戦闘態勢――見て取った少年もまた腰を落として。
「……行くぞっ!」
「いざ参る!」
エルミナ王国最強の武人――〝四騎士〟である二人の大将軍は、同時に地を蹴った。




