第8話 タイムマシンが不要な生き方
時間も時間だったので、おっさ…村長に宿を案内してもらった。
宿に泊まりって明日、畑荒らしの調査をしようと思った。
宿はやはりというか、村の規模を考えたら妥当なのか、二部屋しかなかった。
遥も一応女の子だから、別々の部屋が至極当然なのだが、お金が無い。
くそ~さっきかっこつけて、30万のバック買ったから…。
っと思ったら、遥が『一部屋でお願いします』っと言ってくれた。助かった~男から言うよりも、女の子が言ってくれた方がまだ印象が良い。誰に対する印象かはよく分からないけど、何となくそう思った。
先に食堂に案内された。【ご飯 味噌汁 野菜炒め 漬物】…味噌汁この世界にあるんすか…。
食事を終えるとお風呂に入り、電気をつけないで、ベッドに横になっていた。
少し考え事をしていた。主にこの世界に来てからの…一人反省会を開いていた。
部屋のドアがゆっくりと開く、遥だろう。
「ゆう君…寝た?」 「…うん…寝た」
しようもないやり取りを終えると、遥は窓の近くに行き「月綺麗だよ…月なのかな?」
特に返事しないで目を瞑っていた。すると遥は、俺が寝ているベッドに腰掛ける。
しばらく無言でいると、寝ている俺をベッドの端に追いやり、空いたスペースに遥が横になる。
「ゆう君…ゆう君はさ、どうして私が【世界の理を乱す者】になったか、聞かないの?」
「俺は心当たりがないし、遥もそうだと思った。仮に心当たりがあったとして…表現が難しいけど、デリケートな問題だと思ったからかな?」
「ゆう君は戦いが終わって、自分の事を話してくれた。でも私は何も…私が居た世界のことだけで、私の事は何も話していない」
ハヤテとの戦闘が終わって、遥に嫌な思いをさせて、そして誤って。
あの後、バレッタの町に向かうとき、遥の世界の話を聞いていた。普通に自分がいた世界より、文明が200年進んでいるって聞いたら気になるだろ?
全部ではないが、車は全て空飛んでいるし、人型のロボットは居るし、色々な話をしていた。
実は遥は研究者で、話を聞いていると、結構すごい事をやっていた人だと思った。
しかもそれを鼻にかけない。ただその時の事を嬉しかった、楽しかった。
そんな感じの…結果より過程を楽しそうに喋る姿が、好きになった。
遥の話で印象に残ったのは、物体の転送装置だ。
今までは、【Aの機械】から【Aの機械】へと、同じタイプの機械でしか物が送れなかった。しかも距離も最長で、100キロメートルまでしか飛ばせなかった。
遥はその枠を壊し、【Aの機械】から【Bの機械】へと、違うタイプの機械へと送れるように開発し。距離も世界全体をカバーできるようにしたらしい。
遥の嫌いな天才って言葉…遥の周りは、遥の結果の部分しか見ていない人からの、よく聞く言葉だったから、嫌いだったのかなと思った。
「前に話した続きってわけじゃないんだけど、転送装置が改良できるようになって、周りの目も変わった。当たり前かもしれないけど、それがとても気持ち悪かった。
普段話しない人が、急に話しかけてきたり。
私の両親も周りとは別の形で態度が変わった。きっと私のこと、疎ましかったんだと思う。
父も母も研究者だったから、たかだか10年しか生きていない小娘に、追い抜かれたんだから。
家にいても外にいても地獄だった。それで転送装置からタイムマシンを作れないか?って考えたのが始まり」
少し自分と境遇が似ていると感じた。タイムマシンか…それが…。
「タイムマシンを作って6年…その間に両親も、はやり病で亡くなったわ。それでも作った。過去に戻って、私自身に研究の道から遠ざけるために、それが出来なければ、私自身を…。今思うと私って冷たい人間なのかも、両親を助けたいだなんて、微塵も考えていなかった」
嫌いな人間はとことん嫌い…遥の中でそういう位置に両親はなったんだと思う。別に冷たい人間だなんて、それこそ微塵も感じなかった。
「それでいつものように実験していたら、この世界に来たの。完成してたのかな?だから【世界の理を乱す者】になったのかな?って思ったの」
管理者自体が原因を解っていないんだ。はいそうですね…何て軽々しく言えない。
遥に、タイムマシンを作った事、この世界に来る事になったことを後悔しているのか聞いてみた。
「どうだろう?私の所為で、他の人が不幸になっていなければ…そう言い聞かせているのかも」
「そうか…じゃあこの世界で遥が、タイムマシンを作りたいだなんて、思わないように頑張らなくちゃな」
「……ありがとう。…期待してるぜ、ゆう君」
遥の方に視線をやると、少し…泣いていた。俺の中で…生まれて初めて、目標ができた気がする。
そして遥は唐突にとんでもない事をぶっこんできた。今日出会ったばかりだというのに…。
「…ゆう君って私のこと好き?」 「…好きだよ」
「……私とキスできる?」 「……っ。できるよ…」
しばらくの無言の時間、遥が確認したいことは…おそらく。
「遥、相手が俺じゃなきゃ、たぶん誤解を受けると思うよ?」
「えっ…でもなんて聞いたら良いか分からないし。私、付き合った経験ないし」
「俺だってないよ。でも、好きだし安心できる存在だから。今はシンプルにそれでいい。この想いに理由をつけると、たぶん変な解釈をつけてしまう」
「…そうか~ゆう君も同じだったか」 「あっでも顔はかわいいと思った」
「…顔は?ゆう君はどうして一言…」 「ごめん。女性としてもちゃんと見てるよって言いたかった」
深いため息をつかれた。まあでも、伝わったからいいや。
そして何時になったら、自分のベッドに戻るの?まさか…。
そのまま遥はぐっすり眠った。どうしよう俺?




