第5話 懺悔と決意
「改めて私の名前は、アリス=ファーブルだ。本当に助かった。多分あのままだと、殺されていたかもしれない」
アリスさんは、Cランク冒険者 テイマー兼バッファーらしい。分からない用語がいっぱい出てきたが、あえて聞かなかった。気になることがあって、あまり時間をとりたくない。
それと捕まえた男の名は、ハヤテ、なんと冒険者を7人殺した、犯罪者だそうだ。飛び出す前に聞いていたら、たぶん戦わなかっただろう。まっ…顔を見たときから普通じゃなかったし、結果的に良かったのかも。
「君たちは、これからどこに向かう予定だったんだ?」 「近くに町があると聞いたんで、そこに」
「バレッタの町だな。よかった私も、そこで活動しているんだ。では一緒に向かわないか?ギルドに報告しなきゃいけないし」
「すいません。少し疲れたんで、休んでから向かいます。あとギルドに顔を出しますんで。先に町に戻ってもらっていいですか?」
「そうか?わかった、ではギルドには話を通しておく。ハルカの方も体調が悪そうだしな。ではまた後程」
アリスさんと殺人犯を担いだモンスターを見送ると、黙っている遥の方を振り向く。
「遥、ごめん。さっきあんな事言って」 「私もごめん…」
戦いが終わって、遥に「人だよね?」って言葉が、昔言われた…嫌なことを思い出した。
そんな俺は「人だよね?って、遥には俺の事、何に見えるんだ?ロボットか?モンスターか?反撃しちゃいけないのか?あいつに大人しく殺されてればよかったか?」って言ってしまった。
少し泣きながら誤った遥、それを見てすぐに冷静さを取り戻したが…もう駄目だと思った。
お互い立っていたので、その辺に座ろうと促す。遥もそれに応じる。そしてしばらくの沈黙の後。
「俺、昔っから協調性が無いって言われてさ。原因は解ってはいたんだ、納得は今でもできていないと思う。…子供の頃から、何でもできた。勉強やスポーツ、何でもだ」
嫌味な言葉だと思う、教えられたことを理解できて何が悪い?教えられた通りに動いただけなのに、なぜ批判される?できることを、ひけらかしてもいない。俺の事を見て、周りが勝手に劣等感を抱いているだけだろ?
そう思いつつも、周りの目は…何でもできる自分には乗り越えられなかった。
「遥、バレッタの町で俺と別れないか?」 「どうして?」
「…逃げたいんだろうな。遥から向けられる目から」
「…何でもできるんでしょ?それじゃそれも乗り越えてよ」
遥をそんな顔にしてしまっている、自分が嫌になるんだよ。
「ゆう君?私の事を守ってよ…さっきみたいに」
さっき?…男が遥の方に向かって行った時か…あれは魔法。そうだ遥に教えてもらった。
「遥、ありがとう魔法を教えてくれて。おかげで大事な女の子を守れたよ」
「女の子?アリスさん?私?どっちの事言っているの?」
遥から顔を背けていた、そんな俺の肩を揺する。
今までみたいに、自分の力だけで解決したきになっていた。
遥は魔法で守ってくれていたのに、そんなことも忘れて、言葉で傷つけてしまった。
「遥、本当にありがとう。助けてくれて。」 「それじゃ別れるって話は?」
「…保留……いや無しでお願いします」 「2度と言わないでね?一番傷ついたから」
遥は、俺の何倍も大人だ。彼女を守る為なら手を抜かない、もう周りの目なんか気にしない。
少し休憩して、二人でバレッタの町に向かった。会話は少なかったが、自然と手をつないでいた。
バレッタの町 石の外壁に囲まれた、にぎやかな街だ。入口の近くに門番らしき人が立っている。
身分証の提示を求められたらどうしようかと、遥に話したら既に持っていた。まただ、この子は俺の知らない所で色々と…。因みに【ステータス】から出せるらしい。
準備万端これで問題なし。門番に身分証を見せると、顔が曇った。偽造身分証だとバレたのか?
「…マロウニー村…か」と門番が言うと、気まずい空気になったので、逆に堂々とした。
特に何があるって訳でもなく、俺と遥はすんなり?通してもらった。
町の中に入ると、建物が密集しており、道も整備されている。つまり普通の町だ。
「…ゆう君、門番の人の反応が意味深だったね」
「そうだな。今度買い物の時、マロウニー村出身だ!!って叫んでみるか?負けてくれるかもな」
などと冗談を言いながら、アリスさんが言っていた【ギルド】を探すことに。
町ゆく人々に場所を聞きながらたどり着いた【ギルド】。周りの施設に比べると、一線を画している。
中に入り周りを見ると、屈強な野郎ばかりの…うーん…ニオイがきつい。遥の方に視線をやる
と、鼻はつまんではいないが、あかるさまに臭いっと言わんばかりの顔になっていた。早く用を済ませてここから立ち去ろう。
受付に向かいそこに立っていた、お姉さんに『アリスさんの』って言おうとしたら。
見かけない人だからか…『こんにちは。本日は冒険者登録ですか?』っと切り出された。予定にない事を聞かれた俺は遥の顔を見る。どうする?登録だけでもしておく?っとそんな軽いノリで、身分証を提示し冒険者登録をすることになった。
登録の過程で、出身村を見られ『マロウニー村…ですか…』っと、門番と同じような反応が返ってきた。特段それ以上聞かれなくて、登録は順調に進んだ。少し安心した。偽造身分だから、マロウニー村なんて聞いたことない。聞かれたら、面倒くさい事になるからだ。
「パーティーの登録をしますか?」 「パーティーの登録って何ですか?」
パーティーの登録とは、端的には言えば報酬の取り分の揉め事を、解消するためのものである。
ソロ同士が同じ依頼の報酬で、自分が素材を見つけたとか、自分がモンスターに止めを刺したとか、報酬の受け取りの時に揉める事があるらしい。
ギルドは面倒くさいから『報酬は渡すから、配当はパーティー内で行って下さ』という意味らしい。
名前決めるのって面倒くさい。遥かに何かないか?って聞いたら、すこし考えて。
「【イカロスの翼】ってどうかな?」 特に嫌って感じも無かったので、この名前で活動することになった。イカロスって何かで聞いたことあるけど、よく覚えていなかった。
登録を終え、受付のお姉さんが奥の部屋に向かうと、何か忘れているような気がした。
「ゆう君?アリスさんの事…」 「あ~すっかり忘れていた」
しっかり者の遥と、楽観的な俺がこうして冒険者として活動していくことになる。




