第2話 世界の理を乱す者
周りが急に暗くなった。海だった場所も暗くなり、陸なのか何なのか分からない。
これじゃ本当に俺が死んだみたいじゃないか…。
そんな不安な顔をしていたのか、グレースさんが声をかけてくれた。
「ゆう君、死んだら人ってどうなると思う?違うな…人だけじゃなく全ての生物」
「?…天国とか地獄に行くって話ですか?それって俺が死んだって事ですか!?」
そんな話をしていると、すこし離れた所に3本の光る柱が現れた。
「生き物が死んだら消滅するの。人間だったら肉体だけを残して、ゆう君の言う場所や生まれ変わりとかそういった事は起きない…ただの無になるの」
「だから俺は死んでないって事?」
そんな事を言うと、グレースさんはどこか悲しげに笑った。
3本の光の柱に少し近づく、そして1本ずつ指し始める。
「左の光柱はあなたがいた世界、そこにはもう戻れない」
薄々感じていた。戻れないという現実。ただ世界という表現が気になった。そんなことはお構いなしにグレースさんが説明を続ける。
「右の光柱はあなたがいた世界とは対になる世界、お勧めはしない」
遠回しに行くなって事なのだろうか?何故そんな回りくどいことを?
今度は真ん中の光柱を指した。
「ゆう君がいた世界とは似ている所もある、でも根本的に違う世界」
選択肢が有るようで無かった。そこしかない、グレースさんの表情が物語っていた。
俺は何も言わず、真ん中の光柱に向かって歩き出した。
光柱に近づくとグレースさんに呼び止められた。振り返ると…。
「ゆう君!!君は賢いから、何か解ったのかもしれない。…周りの目も重要かもしれない、でも少しは自分にも目を向けてあげて」
…きっとこの人は俺の名前だけじゃない、俺が抱えている悩みを知っているんだ。「自分にも目を向けて」か…。
「ゆう君、お願い…」っと言ってきて、手に何か渡された。
この人の事は分からない。初めて会った人だから、でも今度会ったら謝りたいって気持ちになった。
俺は光柱に入ると目の前が真っ白になった。何となく目が覚めると、この出来事を忘れるような気がした。
目が覚めると視界に草が入ってきた。えっ外?慌てて体を起こして周りを見渡すと、森なのか?
周りは木ばかり。何か夢でも見ていたようで、頭がぼーっとする。しばらく座り込んでいると。
「おっ!!起きた起きた。おはようー」っと何処からともなく現れた…女子高生?
肩までかかる黒髪の女の子だった。急に人が現れたことよりも、森で学校制服っぽい姿で現れた女の子に面食らっていた。俺は立ち上がると、女の子は近づいてきた。
身長165くらいか?俺より少し小さい感じだ。
「竹馬 友君だよね?私は橘 遥。よろしくね、ゆう君」
「あっよろしくお願いします。あの…遥さん?ここは何処だかわかりますか?」
「呼び捨てで良いわよ。同い年なんだし。ここは何処だか分からない。…えっ何?………はいはい、わかったわかった」
同い年ってなんで分かるんだ?あと誰かと話しているのか?電話?
「ゆう君、ステータス開いて。こう手でシュッシュッって。」
遥が右手を前に出し、その手をスライドさせる。何かよく分からないが遥の真似をした。
半透明な画面が出てきた。
「何か出た。えっ何これ?ユウ=オーズ マロウニー村出身って書いてあるんだけど?」
「あっ…やっぱり同じ出身か。私はハルカ=オーズって書いてあった。…あっそうじゃない、画面の左下のアイコン」
「えっ左下どころか、名前と出身地しか書いてなけど?他には…何もないな」
「えっちょっと待ってね。ちょっとクロロさんどいう事ですか?……私はそうじゃなかったじゃないですか?……まあ確かに……それで見えなかったら?……うわでた。いるよねそういう人…はいはいわかりましたよ~」
やはり誰かと話ししているのだろうか?あいてはクロロさんって人?誰だろう。
話が終わると、遥は手を差し出す。握れと言う事だろうか?遥の手を俺は握った。
「どう?何か聞こえた?」 「…あっでも何か聞こえたかも?」
遥を通して、クロロさんが指示を出した。その指示を遥は特に嫌がることなく、俺に提案した。
「ゆう君、体を密着させろだって。はいっ」 「マジで…」
両手を大きく広げ、早く来いと言わんばかりにパフォーマンスをする遥。女の子ってあまりこういうこと気にしないのかな?っと思いながら遥に近づいた。そして抱きついた。
『もしもし…もしもーし?聞こえてますか?』 「遥どうした?聞こえてるけど」
「えっ?何も喋っていないけど」 『ゆうくーん聞こえてますかー』
あっ遥の声じゃない、これがクロロさんなのか?「クロロさん聞こえてます」って答えると。
『あっ私はクロロじゃないです。私の名前はシロロ=マーズです。遥さんと話していたのはクロロ=カーズです』
「あっそうなんですか…。遥…クロロさんじゃない人が出たぞ」 「えっそうなの?私には何も聞こえなかったけど」
『あっ私の声は遥さんには聞こえないです。そうですね簡単に言うと……』
シロロさんの話を要約すると。
俺がいた世界 管理者シロロ=マーズ 遥がいた世界 管理者クロロ=カーズ
【俺がいた世界】と【遥がいた世界】は対になっているらしく、文明以外はほぼ一緒らしい。
【遥がいた世界】の方が200年くらい文明が進んでいるらしい。(なぜそこだけ違うの?)
異世界の者同士、交わることができない。俺はクロロさんの声が聞こえない。遥はシロロさんの声が聞こえない。
では何故、異世界の者同士の俺と遥が話せるかというと。
『遥さんは先に知っている思うけど、あなた達は【世界の理を乱す者】になったの。【世界の理を乱す者】は世界の脅威になると判別された者に与えられる罰みたいなもの』
「意味が分かりません。周りにも迷惑かけていないし、世界だなんて…意味が分からない。それに、あなたは管理者じゃないんですか?何か知っているんでしょ?」
『私たち管理者は【世界の理を乱す者】が現れて、その者を探しこの世界に送ることが仕事。
前例は100年くらい前、その者たちも何故【世界の理を乱す者】になったか解らないの』
やり場のない怒り、この世界に飛ばされた事よりも、犯罪者扱いされているみたいで気分が悪い。シロロさんを責めても無駄だと思った俺は。「元の世界には…」と聞いた。
『戻れない。ゆう君も遥さんも|【世界の理を乱す者】《イレギュラー》になった時点で、その世界から存在が消されるの。その者を見つけ出し、この世界に送るのが私たち…』
そういう風に聞くと、シロロさんが存在が消えた者を見つけ出し、この世界に避難させてくれたように感じた。実際はどうだか分からないけど。
『あと知りたいことは、クロロを通して遥さんが聞いているから聞いてみて。ゆう君、本当にごめんなさい』
「別に…もういいですよ。殺されなかっただけでも、まだマシですし」
『ゆう君…その…覚えていないかもしれないけど…。ゆう君って家にいたよね?』
「はい…。たしかリビングで寝ていました」
『そうだよね…。ごめんなさい。それじゃ…』
引っかかるような言葉を残し、シロロさんと会話を終えた。シロロさんと話すために、遥と抱きついていたのだが、当の本人は寝ていた。遥が眠っていた事に気づかない俺も俺だが、この状態で眠るとは大物だと思った。




