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お嬢様は恋煩い  作者: 霧原善光
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第3-13話 襲来(3)

 

 

「……」

「……」

「……」

 桃香さんに二人が呼んでると言われて来たのはいいものの、特に呼ばれている雰囲気はなかった。

 麻夕ちゃんがなんとなく不機嫌そうなのは気にかかるが、落ち着き払ってコーヒーを飲む琴葉さんの様子を見る限り、問題ないということだろう。

 このまま厨房に帰ろうかとも思ったが、さすがに失礼な気がしたので、俺は自ら口を開くことにした。

「……働いてる俺見て、何か得るものはありましたか?」

 今日、二人がブルーメにやって来た理由がそれだ。

 まあ、実際は冷やかし半分というところなのだろうが。

「はい、ありました」

 琴葉さんは、そう答えはするものの、具体的に何が得られたのかは教えてくれない。

「いいところで働いておられるのですね。家では基本的に紅茶を飲んでいるのですが、たまにはコーヒーもいいかもしれません。」

「それは良かったです」

 いいところで働いてる……それは確かに俺も実感しているところなのだが、もしかして心配されていたのだろうか。

 保護者じゃないのだからそこまで気に掛けられる謂れもないのだけど、それでも少し嬉しかった。

 二人に出会うまでは、この町で俺のことを気にする人なんて、一人もいなかったのだから。

「麻夕ちゃんはどうだった?」

 訊いてみると、麻夕ちゃんは顔を上げて、逆に俺に問い返してきた。

「……慶太が淹れてくれたの?」

 一応、二人のコーヒーを淹れたのは俺だ。

 もっとも、手順は確立されているから誰が作ったって同じ味にはなるのだけど。

 すごいのはこの豆を作った人と、豆を買って卸した人と、コーヒーの淹れ方を考えた人であって、最後に誰が淹れたかはまったく問題ではない。

 しかし、ここは素直に答えておくことにした。

「そうだよ」

 すると、麻夕ちゃんは少し顔を俯かせて、

「とってもおいしかった」

 呟くように答えてくれた。

 ちょうどそのタイミングで、新たなお客さんが店に入ってきた。

「いらっしゃいませ」

 俺は二人から離れて新たなお客さんの応対をする。

 席に通してメニューの説明をして、厨房に戻ろうとしたところで麻夕ちゃんと琴葉さんは席を立った。

「それでは私たち、これで失礼しますね」

「そうですか。またいつでもいらしてください」

 今度は俺のことは関係なく、普通にコーヒーを飲みに。

 会計を済ませて店から出ようとしたところで、ふと麻夕ちゃんが足を止めた。

「慶太、今週の土曜日空いてる?」

 その真っ直ぐな眼差しに、俺も真っ直ぐ頷き返す。

「空いてるよ」

「じゃあ、また私の家に来てくれる?」

「うん、じゃあ土曜日またお邪魔するね」

「うん!」

 最後に素敵な笑顔を見せて、麻夕ちゃんは店を後にした。

 

 

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