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End magic and war.  作者: 椎茸トマト
A組始動
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期待

ユウキは足早に学園に向かう。先ほど渚の部屋でレモンティーを頂いたのだが、本来は渚を介抱のため一時授業を抜けていた。歩きながらスマホを手に持ち、さっき夏季から送られてきたメッセージに目を通したのだが、もう1件あったので確認すると『今日の授業は早く終わった。後で飛鳥から愚痴を聞かされると思うので覚悟しといてくれ』という内容だった。


「あの後何があったんだ?あ、飛鳥からのメッセージもある」

『松原のやつほんまに嫌いಠ︵ಠ!アイツは渚を侮辱しよった!絶対許さん!』


どうやら相当お怒りのようだ。見てないので不明だが、渚のことを悪く言われるとユウキも気分は良くない。ユウキは飛鳥の止まらない愚痴を聞く羽目になりそうだ。



15:15 2年A組教室


学生寮から学園は隣同士で近いので時間はかからなかった。

教室に戻ってみると、ユウキ含め教室に残っていたのは、

赤坂千早

池田飛鳥

狭山夏季

松原竜馬

都島日和


ホームルームの時間だが、人数は明らかに少ない。


「小娘と楽しめたか?」

「まぁそれなりに」


松原が何か言ってたが、ユウキは軽く流す。飛鳥の顔は、恐ろしいほど怖い顔になっている。席につき、隣の夏季にひっそりと訪ねる。


(飛鳥の怒りのメッセージが来てたよ。また松原が何か言ったんだね?)

(そうだ)


これだけの小さな確認だけでユウキは何があったのか想像できる。

松原の挑発に飛鳥が怒ってケンカという流れは何回も見たが、2年になっても変わらないみたいである。

飛鳥は明るくてコミュニケーション能力が高くて誰とでも打ち解ける性格であるが、松原だけはずっと相性が悪いようだ。松原の性格は誰が相手でも難しいとは思われる。

狭山先生が入室する。クラスメイトも先生の入室に気を引き締める。


「守口くんお帰りなさい。今から説明します」


クラスメイトが少なくなり教室内は静かである。


「守口くんたちが出た後、授業は早めに終了することになったの。終了後に明日からA組として覚悟があるものは教室に残ってもらうことになりました」

「他のクラスメイトがいないということは、そういうことですか?」

「ええ。授業終わりにA組を降りると伝えられたわ。明日から別の教室に通うことになります。柏原先生は今手続きに追われています。教室内にいるクラスメイトはA組に残る覚悟をもった者よ」


A組に残るということは今後戦いに参加することは必須。さっきの授業で、反発とは言わなくても、戦いに参加することを嫌がっていたクラスメイトが何人かいた。


「守口くんと交野さんからまだ答えを聞いてないわね。交野さんは明日の朝に答えを求めます。守口くんは決まってる?」

「僕はA組で戦う覚悟は出来ています」


ユウキは即答で答える。


「了解しました」

(姉さん……っ!?)


ユウキがA組に残ると答えた時、狭山先生の表情にほんの少しだけ笑みがこぼれたと夏季が感じた。夏季しか分からない冬美の表情の変化。狭山冬美は本気でユウキに()()してるのだろうと。


「明日からA組は新たなスタートをします。A組を抜けたクラスメイトたちの分まで戦い抜いて下さい」


A組のクライスメイトを狭山先生は後押しする。


「再三お伝えするけど、あなた達はこの先、過酷な運命になることは間違いないわ。訓練を怠らないで」

「分かりました。狭山先生、私達はまだ学生ですが、というと今更おかしなことを仰ってはいるのは承知ですが、この先の戦い方を教えていただけないでしょうか」


都島はいつも通り、気になったことをその場で質問をする。


「あなた達の戦い方は今後、()()()()()()()()を考えて頂戴」

「うわぁ……超ハードモードですね。僕たちの力では魔族に勝つことは不可能ですよ」


赤阪の低いトーンは教室に響く。自ら話すタイプではないので、周囲も珍しく感じる。


「今のあなた達ならね。鍛錬を積めば必ず勝てます」

「がっはっは!俺は魔族より先生方を滅ぼしたいぜ!」

「私達教師より強くなってほしいわ。1年前と変わらない実力だったら失望よ」


A組は1年前より確実に強くなっている。1年間の成果を2年目で出さなければならない。


「小娘以外全員揃ったんだ。彼氏の答えも聞けたしそろそろ帰っていいか?」

「構いません。現時刻をもって解散とします」

「そうと決まりゃ帰るぜ!千早付き合え」

「えぇ……また?」

「いいから来い!」


松原から強引に身体を持ち上げられる赤阪。松原の巨大な体躯は細身な赤阪を赤子のように軽く持ち上げる。バッグを背負うのと変わらない感覚のまま教室を後にした。解散と宣言した狭山先生は教室を出る。各々帰宅準備を終えていたが、1人だけ荷物をまとめようとしない者がいた。


「ぐ、ぐぬぬ!」


まだ怒りが収まらない飛鳥は机を叩き出す。松原の挑発で怒ることはよくあるのだが、相当引きずっている。後ろから都島が声を掛ける。


「池田さん」

「何や委員長」

「池田さんはお強い人です。柏原先生が仰っていたように、挑発に乗ってしまっては、あなたの戦力は大きく下がってしまいます」

「カッシーみたいなことを言うなや。ウチはイラついとんねん。委員長とはいえ、今のウチは気が短いで」


松原に渚を侮辱された怒りはまだ残っている。刺激を与えてしまうと、飛鳥はまた爆発するかもしれない。


「ですので私が……交野さんみたいな癒やしは得意ではありませんが、こうさせて下さい」


都島は席についている飛鳥の背後からハグをする。途端に2人から青いオーラが出始める。


「池田さんは偉いです。仲間思いのあなたは尊敬に値します」


飛鳥の怒りの力が抜ける。都島が飛鳥から離れると、飛鳥は席を立ち、後ろの都島に振り向く。


「え?今の魔法は何や?」

「私の得意な魔法です。スッキリしましたか?」

「スッキリした!したした!え?なんなん!?どうやって覚えたん!?そんな癒やし魔法あったっけ!?」


怒りの気持ちがなくなり、スッキリした気持ちもあるが、困惑や疑問が生まれた飛鳥は都島に少々詰め寄った。

その様子を少し遠目に見ていた夏季とユウキ。


「飛鳥は癒やしだと思っているようだぜ。ユウキはどう思う?」 

「俺も一瞬そう思ったけど、やはり違う魔法なのか?」

「ああ。都島さんの魔法は俺も覚えた魔法と同じだ」

「夏季が覚えた魔法って確か」

「『ディスペル』だ」


都島の使用した魔法『ディスペル』は、能力のステータスに、プラス・マイナスにつけられたものを除去する魔法である。例えば、攻撃力を付与する魔法によって、攻撃力を増した者にディスペルを使用すると、付与された攻撃力が除去される。


「夏季。飛鳥に何かマイナス要素はなかったはずだ。あったとしても怒りの感情だけど……そういうことか」

「そうだ。飛鳥の怒りの感情を除去したのだ。俺もユウキもディスペルは使えるが、都島さんの技は真似が出来ん。姉さんも柏原先生も出来ないぞ」

「感情を除去か。都島さんの魔力は日々アップデートしているし、俺も負けてられないな」


付与されたステータスを除去する魔法を覚えることは出来るが、感情を除去することが出来るのは都島日和(みやこじまひより)だけである。この先大きな武器になれば良いのだが。


「委員長!今まで委員長と呼んでたけど、これを機会に、その、名前で呼んでええか?」

「いいですよ。私は飛鳥(あすか)さんと呼べば良いですか?」

「飛鳥と呼んで!ウチはヒヨリンって呼んでいい!?」

「ええ。良いですよ」


飛鳥が相手を呼ぶニックネームがまた増えたようだ。ヒヨリンというニックネームは、飛鳥がずっと裏で呼んでいて、本人の前で言うのは初めてだ。日和の公認があり、飛鳥はますます距離を近づけてきた。日和の魔法も気になって仕方がない。

A組のクラスメイトは、この1年間で魔族と戦うための、戦いの基本を徹底的に磨き上げてきた。魔法はその途中で教えて貰っていて、各々訓練していた。明日から始まるアリーナで、自分たちの実力を発揮できる場でもある。飛鳥は日和が覚えた一部の魔法を経験した。

飛鳥と日和は、ユウキと夏季の席に近寄る。


「今からヒヨリンとお茶にするわ。お礼しなあかんし」


いつの間にやら日和と飛鳥の2人で、お茶会を楽しむことになった。

教室内よりゆっくり出来る場所で魔法について語り合いたいとのことだ。すっかり機嫌が直った飛鳥である。今後、飛鳥のご機嫌回復は日和に任せようと2人は思った。


「守口さんと狭山さんもご一緒にいかがですか?」

「一緒に行こうや!美少女2人とお茶やで」

「今日は姉さんの帰りが遅くなりそうだから、俺が部屋の準備をしなきゃいけないんだ。都島さん、また次の機会で」

「いえいえ。急なお申し付けすみませんでした。守口さんはどうされますか?」

「俺もこのあと予定があるんだ。ごめんね」

「ヒヨリン。コイツらは美少女のお誘いを断るほど何かあんねん。ウチラだけでイチャイチャしとこう」

「今日はそれでいいかもしれませんね」


2人の美少女のお誘いを断ったユウキと夏季は荷物をまとめて教室を出る。教室は飛鳥と日和のみになった。


「いつも思いますが、4人の仲が羨ましいです」

「たまたま気が合うだけやで。日和は5人目になれへん?」

「ふふ。お気持ちだけ頂きますわ。嫌というわけではございませんが、私は程よくが丁度いいんです」

「ウチみたいにズカズカ入るよりはええかもな」

「飛鳥さんはその方が良いと思いますよ。それでは行きましょうか。教室の鍵は私が持っていますので、このあと狭山先生にお渡しいたします。飛鳥さんもお荷物をまとめて下さいな」

「鍵ありがとうな。荷物はもうほとんどまとめてたから、すぐ終わるわ」


忘れ物がないかを確認し、2人は教室を出る。日和は教室の鍵をかけた。

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