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二百五十話 お前のような原始人がいてたまるか

 阿蘇パノラマラインを通って阿蘇ファーマー王国に到着した。

熊本でも有名なレジャー施設で火口にも近い。

2500台駐車可能な広い駐車場があり、そこに数多くの自衛隊や消防・電力会社等の車両が集結している。

車両のナンバーには統一性が無く、ここに集まっている人達が復旧支援のために日本各地から集まってきているのがわかる。


「大山さん、あれじゃないすか? あのコン柱オムニ局……」


 コン柱というのはコンクリート柱の事。

町中で見かける電柱などと同じ物と思って差し支えない。

オムニ局というのはオムニアンテナという無指向性…… つまり360度全方位に電波が出て通信ができるアンテナを実装している基地局の事だ。

 全方向に通信ができる反面、他の面でデメリットもあるのだが、遮蔽物の少ない地方の田舎だと、このタイプの基地局でも通話エリアやトラフィックが確保できるので多く使われている。


「そうだな、コン柱に横づけするか」


 立ち入り規制されていて一般人の立ち居は規制されている上に、ファーマー王国は当然営業していない。

自衛隊や警察・その他復旧に関わる面々が100台や200台車両を乗り付けたところで駐車場全体としてはガラガラだ。


 情報ではセンターから全く基地局が見えていないということだったけどな……。

見た目的には無事そうに見える。

奈良・和歌山の大水害の時は地滑りに巻き込まれて基地局丸ごと押し流されていたようなのもあったからな。

ああなったら始末に負えないが、これならこの場で何とかなる可能性もある。

とりあえず、開けてみてみるか。


 ノートPCで基地局の情報を確認して、装置が収納されている機器BOXの南京錠の番号を確認して解錠する。

そしてマスターキーを差し込んでBOXの箱を開けた。


「電源は落ちてますね」


 後ろから様子を見ていた藤村が一言。

中の危機に目視できる範囲で異常は見られない。

ただ、装置のLEDは全て消灯している。

一応、停電していたとしても基地局のバッテリー稼働に切り替わって数時間は動作するのだが、すでに地震発生から24時間以上が経過している。

バッテリーに切り替わったとしてもとっくにバッテリーの容量も尽きているだろう。


「……だな。藤村、原因の切り分け始めるぞ」


「はい」


 藤村が車の荷台から手際よく機材を引っ張り出し始める。

そこからテスターを取り出して主幹ブレーカーの電圧を確認する。


「やっぱ一次側から電気来てないっすね」


 そう言うと、藤村は次々と基地局のブレーカーを落とし、ものの数秒で全てのブレーカーをOFFにした。


「まぁ、そうだろうな」


 俺はノートPCを起動させつつ答えた。

これはバッテリーが空になっている時点で察しがついていた。

ここで藤村が全てのブレーカーを切ったのは、これから復旧を試みる設備や俺達の安全を確保するためだ。


 今、ここには停電復旧のために、日本中から電力会社の復旧部隊が応援に駆けつけている。

なので、俺達が復旧のためにあれこれ設備を触っている最中にいきなり復旧(復電)する可能性もある。

 タイミングが悪いと機械がショートして壊れたり、俺たち自身が感電するかもしれないからな。

この手の災害復旧作業にかかる時は設備を無電圧にするのは鉄則なわけだ。


「あ、大山さん、ここ伝送は活きてますよ」


 通信用の光回線に測定用のパワーメーターを繋いでいた藤村がそう言って、液晶画面をこちらに向けた。


 液晶画面には規定値内の出力を示す数値が表示されている。

携帯やスマホの設備の障害で原因が伝送の破断だった場合、俺達だけではどうしようもなない。

伝送が無事だったのはデカい。

これなら何とかなるかもしれない。


「よし、無線機無事か確認するぞ。発発用意するか……」


「……そうなりますよね……」


 俺と藤村の二人で車からクソ重い発電機を引っ張り出すことになって藤村はげんなりした表情で車の方に歩いて行った。



 1月23日



「ちょっと、ハルト! いつまで寝てるの? もうみんな食堂に集まってるわよ!」


 アルの声で意識が現実に引き戻された。

たまに見る昔の夢を見たが、起こされるまで寝たのは久しぶりだ。

ベッドが良かったせいかな?

緑の泥にある俺の自宅にある日本製のベッド並みに良く眠れた感覚がある。


「ああ…… すまない。今起きる」


「あっ! またピリカはそんなところに……」


 ピリカさんは俺の隣で横になってピッタリとくっついている。

こんなことはいつもの事なので好きにさせておけばいいのにな……。

アルがピリカに何やら抗議しているようだが、当のピリカは全く意に介していない。

なんとかピリカをベッドから引きはがそうとしているが、無駄な努力である。

アルには物理的な質量を持たないピリカにどうやっても触れることは出来ないのだからな。

ピリカを持ち上げようとするその手はピリカの身体をすり抜けて虚空を掴むだけだ。


「むぅ……」


 どうやってもピリカを俺から引きはがすのは不可能だと悟り、アルは小さく不満の声を漏らして諦めた。


 勇者の叙任まで一週間ほどあるらしいから、二度寝したい誘惑は決して小さくはない。

だが、王都に滞在できる時間は有限だ。

ここでやっておきたいことを考えると、時間は無駄にはできないか……。

この寒い季節は布団から抜け出すのに幾ばくかの勇気が要る。

意を決して体を起こしてベッドから降りた。


「う~っ。やっぱ起きる時はさみぃな…… 着替えたらすぐに行くよ。何だったら先に食べていてくれてもいいぞ」


「みんな待ってるから早くしなさいよ」


 そう言うとアルは部屋から出て行った。


  ……。


    ……。



「……で、ハルトきゅんは今日はどうするつもりなんだい?」


「しばらくは昨日見かけた図書館に行こうと思っている」


「何で図書館なのよ? 本ばかりで面白いものなんて無いと思うわよ」


「この社会での俺の位置付けは田舎者どころか、密林からやってきた原始人だからな……。まずはこの世界や社会の事、常識や知識は身につけておきたい」


「何をいまさら…… お前のような原始人がいてたまるか」


 アルドがこの世界独特の微妙なパンを齧りながらそんな風に返してくる。


「はは…… まぁ、このとんがった知識や常識の偏り方がハルトきゅんの個性というか…… 面白さの一面でもあるんだけどね。でもまぁ、いい心がけだと思うよ。知識も常識もいくらあっても邪魔になることは無いからさ」


 そういうこと…… 金と同じだ。

こんなんなんぼあってもいいですからね…… ってやつだ。


「昨日は私の行きたいところに付き合ってもらったし、私もハルトと一緒に図書館に行こうかな」


 そう言って、アルが俺の方をチラチラと見てくる。

えっと、あれかな?

この振りに俺は何か嬉しそうなリアクションしなきゃいけない流れなのだろうか?


「そうですね。知見を深めるのも大切かと。丁度良い機会ですので、図書館で学びを深めるのもいいでしょう」


 俺より先にシアさんが反応してきた。


「えっ? そ、そうよね…… たまにはそういうのもいいかも、ね」


 俺と図書館に行くところまでは計画通りだったみたいだが、そこからは何かアルの中で巡らせていた思惑が外れたみたいだな。


「では、私もご一緒させていただいきます。久しぶりにアルエット様の勉学を見て差し上げられそうです」


「だったら、今日は全員で図書館を見に行くのもいいんじゃないかな? アルドもそれで構わないかな? ちょっと退屈かもしれないけど……」


 ヴィノンも付いてくる気のようだ。

アルドにも誘いの声を掛ける。


「わかった。ハルトに付き合おう。昨日の今日だからな…… 大丈夫だとは思うが、昨日の勇者が仕返しに来ないとも限らないしな」


「それは大丈夫だと思うけどね。ホリプスがこれ以上ばかな真似をしないよう、昨日グランツにしっかりと釘を刺しておくように言っておいたからさ」


 ヴィノンが手をひらひらさせながらそう答えた。

この様子だと、ヴィノンはホリプスの一件はこれで大丈夫だと確信しているのだろう。

なら、気にしなくても大丈夫か。


 そんな流れで朝食を済ませたら、俺達全員で王都の図書館に全員で向かうことになった。



  ……。


    ……。


 シアさんとヴィノンが一緒なので、図書館の入館はあっさりしたものだ。

二人のやり方を見て手続きの方法はわかった。

明日からは俺一人で来ても問題なくやれそうだ。

日輪級の二人は入館料が無料。

俺とヴィノン、シアさんは若干の入館料を支払うことになった。

ちなみにピリカさんも無料だった。


 図書館の中は外観に劣らず想像以上に立派なものだった。

さて、ここで俺が知りたいことこのどこまでが分かるのか……。


「ね? ハルトは図書館で何が知りたいの?」


「まぁ、何でもだな。この国や世界の成り立ちや歴史。魔法や魔道具の技術に至るまで、王都にいる間に得られる知識は手当たり次第にいこうかと思っている。何も知らない秘境集落出身の俺が最初に見るのにお勧めは何かないか?」


「そうね……」


 アルは図書館内を軽く見まわして、本棚から一冊の本を持ち出してきた。


「これなんかどうかしら? 王国の子供たちが皆、最初に教わる人類の歴史なんだけど」


アルが手にしているその本の背表紙のタイトルが目に入った。


【ラライエ創成記】


 まずは北陸地震の被災地に心からのお見舞い申し上げます。

一日も早い復興をお祈り申し上げます。


 ちょっとリアルの社畜ライフがヤバいことになっていて

全然投稿できませんでした。

本当に申し訳ないです。もちょっとで過労死ラインを

越えてくるレベルでちょっと投稿に向き合えませんでした。


その間にPVが20万超えていて、うっひょ~っ!ってなっています。

ずっと担当している仕事がワンオペ状態でしたが、先週から

一人、応援の人員が回されてきたので、少しだけ仕事の負荷が

減ってきました。

今の内に少しでも投稿進めようと思います。


 よければブックマーク・評価ポイント・いいねなど反響いただけると

嬉しいです。


今後ともよろしくお願いいたします

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