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二百二十三話 私自身の手で全てを終わらせておきたいの

 シュルクが発動させようとしていた破壊魔法は起動していない。

ただし、俺が見た感じだと術式の記述はすでに完了している。

発動に必要な魔力(マナ)を充填完了する前に奴を仕留めることが出来たみたいだな。

ピリカさんが術式の上から発動を阻害する妨害魔法を重ね書きしている。

この術式によって、赤黒い破壊術式は水が砂の地面にしみこんでいくように消えていった。


 さっきのピリカとシュルクの会話にはいろいろと突っ込みたいところだが、それは全部後回しだ。


「終った…… ってことでおk?」


 さすがにここからシュルク復活は無いと思うが、念のためピリカに確認を取る。

ピリカはにっこりと頷いて肯定する。

よし、だったら……


「ガル爺、終わったぞ。シュルクは死んだ」


 俺はピリカ、アルと共に横たわっているガル爺の所に戻ってきた。


「すまんな…… アルを差し置いて勝手に見せ場を奪ってしまってさ」


「構わんよ…… あの状態のシュルクでも、アルには止めはさせん…… 小僧はそう思った ……ということだろう?」


「ま…… まぁ、そうだな」


 ちょっと違うが、ガル爺達が納得するならそういうことにしておこう。


「小僧…… 感謝する。わしの代で【セントールの系譜】の宿命に ……決着をつけることが出来た」


「ああ、気にするな。俺は俺達のためにやったことだ。そこにガル爺達の運命が重なっていた ……それだけだ」


「勇者ガルバノ……」


 ピリカがガル爺のことをクソ勇者ではなく、名前で呼んだな。

どういう心境の変化だ?


「小僧の精霊か? どうした? 改まって……」


「ガルバノが戦ってくれたおかげで、魔王化したシュルクを討つことが出来たからね。ラライエの命運を脅かす魔王と戦う者を正しき勇者と認める。それだけだよ」


「……そうか」


「まぁ、あれはかつて現れた魔王とは比べるべくもない程に弱い存在だけどね。それでも、ここでシュルクを倒せたことは確実にラライエの延命につながる行為だったから…… そこは認めざるを得ないかなって思うの」


 魂が(けが)れること、そして死を恐れずにシュルクと戦ったこと……。

そこはピリカなりに認めてガル爺の呼び名を改めることにしたのか。


「小僧…… 頼みがある」


「なんだ? 可能な範囲でなら聞こう」


「アルのことを頼む……」


 そう言ってくる気はしたよ。

アルはこれで天涯孤独になる。

ここまで関わってしまった以上、自分の生き方を見つけるまではアルの手助けをしてやるくらいは必要だろう。


「引き受けよう。アルが自分の道を見つけるまではな」


「お爺ちゃん…… いやだ」


「すまんな。それと ……ヴィノン」


「ああ、わかっているよ。諸々(もろもろ)の面倒事は気にしなくていいよ。悪いようにはしないと約束する」


「そうか…… では任せた」


「ああ、そこは安心してくれ」


 ヴィノンの回答に満足したのだろう。

ガル爺は静かに目を閉じる。

間もなく最期の時が来る。

アルに看取られて終わることだけは出来そうだな。


 こういう光景を何もできずに見ているのは苦手だ。

それにいつまでも全裸で突っ立っているわけにはいかない。

俺は向こうに放置している服や装備品を回収に向かう。


 ……。


  ……。


 脱ぎ散らかしている服を拾っていると、ピリカが隣にやってきて治癒術を掛けてくれた。

そういえば、回復はまだ途中だったな。

極限の緊張で気にならなかったが、まだ背中の火傷はそれなりにひどい状態だったはず。

リミッター全解除で酷使した身体もボロボロだ。

気にしてしまうと、なんだかすごく全身痛い気がしてきた。

ここはおとなしくピリカの治癒術を受け入れることにする。

数十秒もすると痛みは完全に収まった。


「ピリカ、ありがとう。完全復活だ」


 ピリカはにっこりと微笑むと、散らばっている服の回収を手伝ってくれる。

服と装備品を身に付けて、リュックとポーチを持ってガル爺達のいる場所に戻った。

アルがガル爺の上に突っ伏している。


「……今さっき逝った」


 アルドが一言、そう教えてくれた。


「……そうか」


「いつまでもこうしていられないし、ガル爺を屋敷に運ぼう。アルド、手伝ってくれるかい?」


「ああ」


 ヴィノンにそう言われてアルドがガル爺を運ぶのを手伝いに行く。



  ……。


    ……。



 セントールの屋敷にあるガル爺の部屋のベッドに遺体を安置することにした。


「それで…… これからどうするんだ?」


 アルドがこれからのことを問いかけてくる。


「シュルクが死んだことで最大の障害がなくなったからな。封印の場所に戻って本来の目的を果たしてくる」


「ああ、地脈に(けが)れが混ざる原因を取り除く ……だったね。でもそれってシュルクの仕業だったんじゃないのかい?」


 ヴィノンがそんな事を言ってくる。


「もちろん犯人はシュルクで確定だ。だが、シュルクが封印の裏に仕込んだものは今も地脈に(けが)れを垂れ流し続けているはずだ。 ……と、いうことだな?」


 そうピリカに確認する。


「そうだね ……封印が無くなった。シュルクもいなくなった。今なら簡単に目的を果たすことが出来るはずだよ」


 ピリカが俺の言葉を肯定する。


「わかった ……すぐに準備する」


 アルドが装備や食料の補充のために部屋を出て行った。


「ちょっと ……ガル爺とアルはどうするんだい?」


「もう、そこまで危険はないだろうさ。最悪、俺とピリカの二人だけでも……」


「私なら大丈夫…… 大丈夫だよハルト……。私も行くから……」


 ガル爺を安置しているベッド脇の椅子に座って力なくうなだれていたアルが立ち上がる。


「アル…… 本当に大丈夫なのかい? 無理しなくても」


「心配してくれてありがとう、ヴィノンさん…… でも、ここまでの代償を払ったんだもの…… だからこそ、私自身の手で全てを終わらせておきたいの」


「そうかい? わかったよ。だったら僕も何も言うことは無いよ。そういうことなら、さっさと終わらせてしまおう。僕もアルドを手伝ってくるよ」


 そう言ってヴィノンも部屋を出て行った。


「……お爺ちゃん ……ちょっと行ってくるね。すぐに戻ってくるから……」


「ピリカ……」


 俺の呼びかけにピリカは頷いて術式を発動させる。

ピリカの魔法で客間の室温が急激に下がってきた。

ピリカが使ったのは室内を対象にした低温化の魔法だ。

ここから封印の場所までは普通に徒歩で進むと三日かかる。

往復で一週間近くかかる計算だ。

このまま放置すればガル爺の遺体が傷んでしまうからな。

ラライエの風習は知らないが、埋葬を終えるまでは遺体の保存は必要だろう。


「ありがとうね、ピリカ ……いこう、二人とも」


 屋敷のエントランスでアルドとヴィノンが準備を終えて待っていた。


「僕たちが出かけている間に誰かここに来るかもしれないからね。簡単に状況を書置きにしたためておいたよ」


 ヴィノンの視線の先…… エントランスの目立つところに無地の封筒が置いてある。

ここに入ってくることが出来る者となると…… 屋敷の鍵を持っているオルタンシアさんあたりかな?

彼女ではなくてもおそらくは連盟の関係者ということになるのか。

確かにシュルクの襲撃に備える必要がなくなったことは報せておく方が良いだろうな。



 ……。


    ……。



 アルが屋敷の扉を施錠する。


「よし、それじゃ行くか」


「……だね。長らくこの森に魔物を引き寄せ続けてきた物の正体というやつには僕も少し興味があるよ。この目で確かめてはおきたいかな」


 俺達は再びモルス山脈にあるシュルクの封印があった場所に向けて出発する。


 今回は少し短めですいません。

展開的にキリのいい場所がこの辺しかなかったもので……。


 今回なんかメッチャいいね増えていました。ポチってくれた方、

ありがとうございます。

どんな形でも反響はとても嬉しいです!


よろしければ、今後ともよろしくお願いいたします。

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