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二百五話 お前から秘密が漏れたらパーティー追放な

 朝食の席にアル以外の全員が集まっている。


「それで…… 一体何があったのかご説明をお願いしても?」


「もちろん」


 オルタンシアさんの目は笑っていない。

彼女は連盟の【セントールの系譜】の主任担当らしいからな。

アルに何かあったら、色々と面倒な責任問題になるんだろう。

少し迷ったが、俺はあった事を包み隠さず正直に話すことにした。

ただし、ピリカの【サイキックたらい】だけは眠りの魔法を使ったことにしておく。

誰も見た事も、使ったこともない魔法をテストも無しに、いきなりアルに使ったというのはマズい気がしたからだ。


「……と、いうわけです」


「そうですか…… 事情は分かりました。あれが突発的な不慮の事故だったということは信じましょう」


「それで、ハルトきゅん…… どうするんだい? このままアルが目を覚ましたらエライことになるんじゃ……」


 ヴィノンは心配そうにそんな言葉をかけて来ているが、表情は心底楽しそうだ。

こいつ…… 絶対にこの状況を面白がってやがる。


「ヴィノンの言う通りかもしれんぞ。アルはリコみたいに吹っ切りの良い性分じゃなさそうだしな……」


 アルドまでそんなことを言ってくる。

こっちは多少、俺の心配もしてくれているように見えるが……。


「それなんだが…… もうこれは、無かったことにしてくれないか?」


「アルの記憶を消す魔法でもあるのかい?」


「そんなものあるわけないだろ! そのためにみんなに協力してほしいんだ」


 俺はこの出来事を無かったことにする作戦を皆に説明した。


「そんな…… なんだかアルエット様を騙しているみたいで……」


 オルタンシアさんはあまり乗り気じゃなさそうだ。


「僕は別にハルトきゅんがそうしたいのなら、乗ってあげるけどさ。面白そうだし……」


 おい、そこのチャラ男! 本音が普通に漏れてるぞ!


「俺も構わないが…… そんなにうまく行くのか?」


「そこは皆が口裏を合わせてくれれば…… あとは何食わぬ顔で演技してくれれば大丈夫だろ」


「僕はちょっと自信ないなぁ。こんな面白い話、いつまでも黙ってるなんて……」


こいつ…… まさかこのネタで俺の弱みを握るつもりか!?


「あまり気は進みませんが…… こんなことをアルエット様がいつまでも気にして尾を引かれるのもどうかと思いますので…… わかりました、ご協力いたします」


「オルタンシアさん、ありがとうございます」


 なんとか皆の協力を取り付けることが出来た。



 ……。


  ……。


 脳内PCの時計は12:18を表示している。

アルを除く全員が集まって屋敷で昼食を取っていると……。

部屋の外の廊下をバタバタと音を立てて誰かが走ってくる音が聞こえる。

音の主は…… もちろん目を覚ましたアルしかいない。


 バアァン!


 勢いよく扉を押し開けてアルが姿を見せる。


 その姿は上下の肌着一枚だけで、髪も寝ぐせでぼさぼさだ。

うん、なかなかに残念ないでたちだ、


「おう、おはようというには遅いお目覚めだな……。もう昼時だぞ!」


 俺は何事も無かったようなふりをしてアルに声を掛ける。


「ちょっ! ……ねぇ、どうなってるのよ! 私、確か裏のビーチで……」


 アルは状況の理解が追いつかず、自らの記憶を辿りながらまくし立ててくる。


「訳の分からないこと言ってないで、早く身支度を整えろよ。飯食ったら出発するぞ」


 ヴィノンが必死で笑いをこらえている。

おい! そこのチャラ男! 絶対に笑うんじゃないぞ! おかしなボロを出したら怪しまれるだろうが!


「そうじゃなくって! そこで私…… ハルトと……」


「ん? 俺と? どうしたんだ?」


「水浴びしていたら…… そこにハルトが…… 裸で…… ゴニョゴニョ……」


「何を訳の分からない事を言ってるんだよ。疲れて夢でも見たんじゃないのか?」


「そんなはず…… だって、確かに……」


「わかったから、早く着替えて来い。……すごい格好だぞ」


「えっ……」


 俺にそう言われて、ようやく自分が肌着一枚でここまで走ってきたことに気付いたようだ。

意外とポンコツな一面があるな…… この小娘。


「!! きゃあぁっ! もっと早く言ってよぉ! もう信じらんないっ!」


 そう言い放ってアルは顔を真っ赤にして猛ダッシュで自分の部屋に戻っていった。


「ほらな? 案外簡単に無かったことにできただろ? あとはしばらく全員でしらを切り通せば本人も夢だったかも ……って思うようになる」


「いや~ ほんとにおもしろいね。僕、最後まで黙ってられるかな? ちょっと自信ないよ」


「お前から秘密が漏れたらパーティー追放な」


「そ…… そんなぁ、ハルトきゅん…… それは酷いよ」


「いやだったら、余計なことを言わずに黙ってろ。簡単だろ?」


「僕が話さなくても、アルドやシアさんが喋っちゃうかもしれないじゃないか……」


「その時は仕方がない…… その運命を素直に受け入れて俺は逃げる……」


 こんな冗談を言ってはいるが、俺はここにいる誰からもこのことが露見するとは思っていない。

もし、ばれても時間が経てばアルならもう少し冷静に俺の言い訳を聞いてくれそうな気はしている。


 この場を乗り越えられた時点で、アルの動揺を大きく沈めることに成功していると言える。

なら、この作戦は九割がた成功しているようなものだ。

少し出発が遅くなってしまったが、昼食を終えたら調査を再開することにしよう。


 今回の投稿はここまでです。

なんとか週末に一話投稿出来れば……とは思っています。


 ブックマーク・評価・いいね……つけていただければ嬉しいです。

引き続きよろしくお願いいたします。

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