新しい旅立ち
カーミッシュ共和国 ギルド会館
私は今、危機に瀕しています!
ハンター登録試験がもうすぐで開始だというのに、急に緊張で腹痛が・・・。
私ですか?私はハルトちゃんではありませんよ。
サトナカ アイコと申します。ハルトちゃんにはアイコちゃんと呼ばれています。
『アイコさん、試験を始めますので位置についてください。』
あああ!ついに呼ばれてしまいました!
私は震える足を無理やり動かして闘技場に向かいます。
顔は熱いしお腹は痛いし足は震えるし、もうめちゃくちゃです!
『あの・・・大丈夫ですか?』
ついには試験官の方にさえ心配されて声をかけられてしまいました。
恥ずかしいやら情けないやら・・・。
鐘の音とともに、門が開きます。
ダイアウルフ2頭が唸り声を上げながら私の背後を取ろうとゆっくり旋回しているのが見えました。
ええと、私は忍者を自称しているのですが、実は生き物を傷つけるのは苦手で、傷つけられるのも苦手です!
ギルドの登録用紙には以下のように記載しました。
名前・・・アイコ
年齢・・・18
性別・・・女
住所・・・不定
魔法・・・使えない
武器・・・クナイ及び投擲武器
クラン加入希望 ハルトさんと一緒
ロール・・・忍者。
私は投擲武器と、クナイと忍術を駆使して戦えます。
ですが、実は対人訓練ばかりでモンスターとの戦闘はからっきし・・・。
ダイアウルフが跳躍の体勢をとり・・・飛びかかってきます。
「”超能力:変わり身”!」
私の代わりに、どこからともなく出現した丸太が攻撃を受け、私の体は三歩分後方に瞬間移動。
これは好機、必殺の一撃でノックダウンさせるべく次の技を準備する。
「”超能力:麻痺矢”!」
指で輪を作り、吹き矢の要領で勢いよく息を吹き込むと、金色に光る小さな針が飛翔し、ダイアウルフに命中・・・
するはずが、変わり身で出現した丸太に突き刺さる。
「あちゃ〜・・・」
「”超能力:煙玉”!」
闘技場全体を濃い煙が覆う。
私は逆手持ちしていたクナイを順手に持ち変える。
「お願いだから死なないで!」
「”超能力:影討ち”!」
私は一瞬のうちにダイアウルフの後方に瞬間移動し、クナイの柄を急所に捩じ込む。
罪悪感が心を満たした。
ゴムボールのようにダイアウルフが跳ね飛び、痙攣しながら横たわる。
なんとか生きているようだ。
「ご、ごめんね・・・!」
これで1対1(タイマン)。なるべく苦しませずに戦闘不能に追い込みたい。
残り1頭のダイアウルフは煙幕の中で獲物を見つけられずにいるようで、
警戒しながら歩を進めている。
煙幕が晴れ、ダイアウルフのギラついた眼に捉えられる。
“超能力:土遁”を発動して地面に潜り、ダイアウルフの背後に移動。
「”超能力:麻痺矢”!」
指で輪を作り、吹き矢の要領で勢いよく息を吹き込むと、金色に光る小さな針が飛翔し、今度こそダイアウルフに命中する。
数秒間を置いて、ダイアウルフは地面に倒れ込んだ。
「ふーっ」
まばらな拍手が起こる闘技場を後にして、控え室に向かった。
『アイコさんですね。』
試験官が真新しい手帳を持って控え室に入ってくる。
『お見事でした。今後のハンターとしての活躍をお祈り申し上げます。』
ギルド手帳を手に入れる。
これで私もハンターの仲間入りだ。
『本日はこれで終了ですので、帰宅していただいて構いません。お疲れ様でした。』
「ありがとうございましたー。」
大きくガッツポーズをしてギルド会館に戻る。
そこには短い栗毛がチャームポイントの、少し目つきの悪い女の子がいた。
私の大先輩で、憧れの冒険仲間だ。
「ハルトちゃん!やったよ!」
『かっこよかったよ!』
ハルトちゃんは青いマントをはためかせてギルド会館を出る。私も追いかけた。
『さあ、私の新しい仲間。剣を出して。』
私は腰からクナイを引き抜き、天に掲げる。
ハルトちゃんも片手剣を天に掲げ、いつかの日のように唱える。
「『地方を救い、世界を救う冒険を!』」




