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超魔導剣士の逃避行  作者: ジグ
第2章 亡国の魔神
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そして自由を希求する

ようやくインスグリースに到着する。

来たる魔神の脅威にレオンハルトは・・・。

私とアイコはインスグリースに足を踏み入れる。

空が暗くなり、黒い雲が渦巻く。


「アイコ、この地図に従って衛兵隊舎にいってこれから起こることを説明するんだ。」


『まっかせぇ。』


アイコはあっという間に街の中に消え去った。

すごい機動力だ。


街の中央のマルトリツカ中央広場に向かう。

大きな円形の広場に大勢の人がひしめいている。


その中に一際目立つ少女がいた。

噴水のふちに腰をかけている、北風に白銀の長い髪をなびかせた、白いケープ付きのワンピースの少女。

ミハと名乗ったイントミークの化身。または私のように魔神の取り憑いた人間。


『やっと来てくれたのね。』


テレパシーで脳内に直接話しかけられる。

二人は見かけ上、何も言葉を交わさず見つめ合っているよう。


「何をするつもりなの?」


『ここの人間を殺すわ。穢らわしい同族殺しの本性を見せてあげる。

そして思い出してほしい。アーカイレンや、私たちの同胞はこんな奴らに蹂躙されてしまったことを。』


「止めると言ったら?」


『・・・ミアルケート。あなたは本当に人間につくことを望んでいるの?』


ミハはワンピースのポケットから石を取り出すと、それを天に掲げる。

青い光が石に集い、やがて白銀の光とともにイントミークに変身する。


4Mほどもある体は鏡のように周囲を反射しており、周囲の人間の動揺している姿を鮮明に映し出していた。

イントミークは”熔却(プロミネンス)”をばら撒き、広場に4つの獄炎の塔が立ち上がる。


ようやくイントミークが脅威的な存在であると認識した人々は口々に「魔神の再来だ」と叫んで逃げ惑う。


私は剣と盾を引き抜いて、イントミークの眼前に立ちふさがる。


「魔神イントミーク。これ以上暴れるというならばこの私が許さないぞ。」


イントミークは黒雲の渦に飛び込み、2本のケルト十字を持って急降下する。

一閃、2本の十字から繰り出される一撃になすすべなく直撃した。


全身の骨が折れたのではないかと錯覚するほどの激痛が脳を支配する。


「ぐっ・・・やはり魔神の力がなければ勝てないというのか・・・?」


でも、ここで私が止めなければこの街の住人が。そして世界中の人間がこの魔神の手に落ちる。

アイコ、オリアク、ヘルミナ・・・私に少しだけ力を貸してくれ。


ちょっとだけでいい、魔神に対抗できる力を。


・・・


・・・


「ふふ。」


「私を挫いたところでこの世界から希望がなくなるなんて思うなよ。私の後ろにはヘルミナやオリアクがいる。」


「だからこそ私は全力で戦える。」


心の奥底から力が湧き上がる。魔神の力ではない、純粋な想いの力が。

この1年忘れていた、私に備わった究極の力が。


私の中にいつもいる、仲間たちの力が。


「そう簡単に倒せると思うなよ。」


剣は銀色に、盾は金色に輝く。

ミアルケートの力は必要ない。人間としての底力であいつ(イントミーク)を倒す。


“風王の外套”、”鬼神の肉体”、”超能力(アーツ):魔導剣士の開現”を起動する。


まずはファーストステップ。この街から追放する。


“付与:風王の嵐剣(ストーム・ブリンガー)”


イントミークの眼前に迫り、付与を施した剣を一閃する。

激烈な竜巻が魔神を街の外まで吹き飛ばす。


風王の外套を用いて飛翔し、追撃の体勢をとる。

“付与:核熱剣(メルト・ブレード)”。


魔神の二刀流の連続攻撃を掻い潜り、土手っ腹に核熱剣を叩き込む。

光が収縮し、爆裂する。続けて体をよじ登り、右腕、首、頭頂部と流れるように切りつけて空を舞う。


“石塊(ストーンブリック)”を発動し、いくつかの石の塊を生成する。

続いてそれを火炎魔法で溶けかかるまで加熱し、魔神の足元の雪へ放り込む。


水蒸気爆発。高温の物質が水と接触することで発生する爆発現象だ。


高温の水蒸気の爆発が発生し、魔神に強烈なダメージを与える。

水蒸気は再び低音の空気に晒されて凝結し、ダイアモンドダストとなった。


『ミアルケート・・・もう私たちに味方してくれないというのなら・・・!』


膨大な量の魔力がイントミークに集う。私はこの魔法を知っている。

巨大な魔法陣とともに、世を滅する業火が現れる。


火属性究極魔法:”灰燼に帰す開闢の熱月(テルミドール)”


これを止める術を私は1つしか知らない。再び使わせるのか、この土地で。


「オリアク、お願い。力を貸して!」


“超幸運(グレーター・ラック)”の呪符に魔力を込める。ずっと前にオリアクにもらった幸運の呪符だ。

金色のベールが私を覆い、呪符は焦げて崩れる。多幸感、今なら何でもできる気がする。


究極魔法には究極魔法を。

「”究極魔法:天元凍死す飢饉の霜月(ブリュメイル)”!」


出力を一方向に絞り、撃ち出される世界を凍てつかせる究極の凍結魔法。

極太のレーザーのごとく、一直線に”灰燼に帰す開闢の熱月(テルミドール)”に突き刺さる。


極寒の冷風と灼熱の熱風が吹き荒れ、大規模な水蒸気爆発を起こし、究極魔法同士は対消滅する。

“超幸運(グレーター・ラック)”のおかげだろうか。世界を危機に陥れる究極魔法同士がぶつかっても街には傷ひとつ付いていない。


「ありがとう。オリアク。」


魔神は奇声を上げる。慟哭を。


『もう私一人で十分だ。殺戮の魔神の力を借りなくても、私一人でできるんだ!』


二本の十字を一本にし、重厚長大な1本のケルト十字と化す。

それを振り上げると、周囲の大気が十字架に向かって吸い寄せられていく。


慟哭とともに振り下ろされる渾身の一撃。地面に近づくほどに風が強く・・・。


私は盾を捨てて構える。ヘルミナ、力を貸して。


「”超能力(アーツ):反射の剣戟(ソードダンス)”!」


振り下ろされた十字架が私の剣に触れた瞬間、その威力は0となり、失われた威力は衝撃波として魔神に跳ね返る。

魔神の右腕が吹き飛んだ。


ヘルミナの見様見真似で繰り出した超能力(アーツ)は的確に相手を自滅に追い込んだ。


「ありがとう、ヘルミナ。」


魔神は血相を変えて転身する。

私を無視して街の方へ向かう。


思いっきり息を吸って叫ぶ。


「アイコちゃん!お願い!!」


黒い影が空から落ちてくる。

それは間違いなくアイコの影だった。


『”超能力(アーツ):影縫い(シャドウステッチ)”』


魔神は自らの影から伸びる黒い糸に縫われて動きを止める。


「ありがとう、アイコ。」


『殺すの?』


「任せて。」


縛られた魔神の胸ぐらに飛び乗り、顔面に迫る。


『はやく殺して。所詮私は模倣の魔神。オリジナルには決して敵わない。』

『ジアグのような確固たる決意も、あなたのような絶対的な戦闘能力もない。』


『私も人間と争って死ぬことになるのよ。』


私は魔神の顔面に向かって魔法を撃ち込んだ。

“衝撃弾(ブラスト)”。衝撃の砲弾は激しく魔神の頭部を揺さぶる。


「気が済むまで何度でもかかってくるがいい。私はお前を殺さないし、誰も殺させない。」


「もし気が済んだら・・・友達になってほしいな。ミハ。」


魔神は白銀の光とともに少女の姿に戻る。

呆然と地面を見つめて、ピクリとも動かない。


・・・


しばらくの時間が経った後、少女はよろよろと力なく立ち上がる。


『何言ってるのかわからないよ。』


そう言い残して、彼女は吹雪の中に消え去った。


「アイコ、私はこれでよかったのかな。」


アイコはとても嬉しそうに答えた。


『それがハルトちゃんの望んだことなら間違いないんじゃないかな。』


『じゃあ、街のみんなのところに報告にいこ。』


私はアイコに腕を掴まれて、一緒に街まで向かう。

戦闘のあった場所から少し離れたところに住人が大挙していた。


「何これ?」


アイコは叫ぶ。


『みなさん!あの魔神はこちらのレオンハルトさんが撃退してくれました!』

『たった一人で打倒し、街に損害も与えていません!!』


なんだ?彼女は何をしているんだ?

人混みの中から一人の男が前に出て叫ぶ、それはベヒモスの時の隊商の元締だった。


『あのレオンハルト卿は文明を滅ぼすとさえ言われたベヒモスに襲撃された我が隊商を救ってくださった方だ!』


『これ以上、あの英雄を亡国の魔神呼ばわりする不届き者がいるというならば、このバーミッシュが許さん!』


まばらに拍手と歓声が上がり、やがてそれは全体に伝播していった。


『名誉挽回のチャンスだと思ってね、頑張って伝えて回ったんだー。』



数日後。


インスグリースの自宅で久しぶりに起床する。

寒々しい朝だ。暖炉に薪を入れて、”種火(マッチ)”の魔法で着火する。


使用人が朝食を運んでくれる。

1年以上も家を空けていたのにまだ仕えてくれているとは思わなかった。


『レオンハルト様。本日は式典の参列と、午後から会食がございます。』

『その後は平和宣言の演説を経て、王城にて夕食会に参加する予定となっております。』


魔神撃退から、私への風当たりの強さはなくなった。

亡国の魔神と恐れられることも、非難されることもなくなった。


すっかり救国の英雄扱いで、かつての扱いの差を鑑みると笑えてくるレベルだ。


「ねぇアイルス。」


アイルスとは使用人の名前だ。


『はい、なんでしょうか。』


「馬車の手配してくれない?」


『はい?本日は自由に外出できる時間は・・・。』


「また逃亡するから、なんとかしといてよ。給料弾むからさ。」


『ええぇ!? 待遇にご不満があるならば王に陳情されてはいかがでしょうか・・・。』


「私を満たせるのは自由な冒険だけさ!」


大きく右手を振り上げてみる。

彼はうまくやってくれる優秀な使用人だ。


『かしこまりました・・・良い逃亡生活になることをお祈り申し上げます・・・。』

『そ、それでも。私はこの家をお守りしておりますので、いつでも帰って来てくださいませ。』


「おっけー。インスグリースに寄ったら顔出すよ。」


オカタイ式典と会食をこなす。

レイギサホーとかいう呪文はいつも息をつまらせる。


やっぱり向いてないよなーこういうの。


『それでは、レオンハルト様から平和宣言の演説を行っていただきます。

 レオンハルト様、よろしくお願い致します。』


演説台に立つ。そろそろ15時、計画の時間だ。

耳をすませると、馬の足音がかすかに聞こえてくる。


「あー・・・あー・・・。さて皆さん。」


「先日現れた魔神で、私たちは再びあの時の恐怖の再来を実感しました。」


足音はより強く、確実に近づいている。


「幸い、大きな損害なく魔神を撃退できたのは、みなさんと衛兵さんたちの献身的な互助精神にあると考えています。」


白い馬が真横で停止する。それを繰っているのはアイコだ。

会場は騒然とする。


『ハルトちゃん!お待たせしました!』


「あー、なんか時間みたいですので締めます!皆さん平和を享受してください!」


私はアイコの繰る馬に飛び乗る。


『みなさんごめんなさい! “超能力(アーツ):煙玉(スモークスクリーン)”!』


演説会場は一気に煙に包まれ、私とアイコは混乱に乗じて逃げ出した。

あの時よりも遥かに清々しい逃亡劇だ。


インスグリースを駆け、ようやく出口の門が見える。


『やはりそう来ましたか!レオンハルト様!』


げ、あいつはコーディだ。

何故あいつには私の行動が筒抜けなのか。


『ここを通りたければ私と決闘してください!あの時のリベンジをいたしましょう!』


「いいよ。今回は私の自由がかかってるからね、本気で行くよ!」


・・・


・・・



コーディを一瞬で下してインスグリースを去る。


私はおてんば英勇として翌日の新聞を飾ったらしい。


「さあアイコ、どこに行こうか。」


『待ってください。ハンター登録するの忘れてませんか?』


「あー・・・じゃあ最寄りの登録できるギルド会館に行こうか。」


私たちはひたすら南に旅を続けることにした。


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