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10.マスコミュニケーション

30/7/1 本文の修正と加筆

 悠夜は、部屋に帰ってきて早々にソファーについた。


 いやー、気持ちよかった……。


 今も残る熱気に身体は火照っていた。


 満足に頬を緩め、体を包み込んでくれるソファーに身を委ねる。


「ん、でも髪はもう少し乾かすべきだったか」


 薄くなれた髪の毛を触ると、やはり拭き足りなかった事が分かった。


 時刻は午後の9時。実家の生活と変わらない感じで、風呂上がりの特にすることがない時間である。

 なんとなしにテレビを点けてみたが、番組表に面白そうな番組もなく、暫くして静かな空間へと戻った。


 やっぱり、特に何もないよな。明日の準備もしたし、英気を養うとしても酒を飲んだらダメだし。


 そう、飲酒は禁止なのである。これは決まりで、冒険者活動3日前からは飲んではいけないのだ。


 つまり、晩酌もなく、程よい安価な眠りも手に入れられない。仕事終わりの締めがないから、なんか事が終わった気がしない。


 退屈で、暇だ。


 こうしてソファーに構えていても、誰か話し相手がいるわけでもない。ただ一人、テレビの前で構えるだけ。……一人暮らしをしたら、話す相手(一方的)はテレビだけになるのだろうか。そうなると非常につまらないな。


 静かな空間に、時計の針だけがチクタクと音を鳴らした。


 あまりの退屈にボーッと意識を捨てると、その時間が進んでいるという知らせが、小耳良い音となってウトウトと頭を落とした。


 明日からダンジョンだよな。準備は万端だ。

 もう眠いし、明日のために寝るか。


 睡魔が自分を飲み込む前にベッドに行こう。そう考えた瞬間、意識が遠のいた。






「誰だ!?」


 危機察知スキルが至近距離で危機が迫っている事を警鐘する。

 耳が潰れそうなくらいに煩い警鐘。

 それのおかげで対処に移れることもある。


 だが、見渡そうとすると部屋は暗く、とてもそんな状況じゃなかった。


 俺が眠りに落ちた時は明るかったのに、今が暗いという事は誰かが消した。もしくは、そういうシステムなのかもしれはい。


 自動照明。ここもそうなのか? と言われればどうなのかは答えられない。


 だけど、それは違う事を警鐘が証明している。

 誰かが俺に何かをしようとしたんだ。


「<周囲生命探知(アリージメントサーチ)>」


 そして、背後から迫る気配。

 この部屋だけに絞って意識をズームする。こうすると、その生物の動きが細かく分かる。


 背後から迫る手。


 悠夜はその手を掴み、誤差のない速度の脚払いで身体を浮かせたところを、床にねじ伏せた。


「誰だ、何の為に侵入した」


「……」


 侵入者は答えない。顔は読み取れないが、押し黙る位に言いたくないらしい。

行動としても侵入者はバタバタと抵抗した。脚を絡めようとしたり、テコの原理で動かそうとしたり。侵入者はそうして抵抗はしている。


だが、悠夜との力の差にそれは無である事が分かったのか、抵抗の勢いは無くなった。


「はぁ……」


これ以上の抵抗意識が無いのだろうか、ぴたりと動かない侵入者にため息をつく。


「お前が誰なのかは、この際いいわ。電気点けたら顔を見れるし、侵入者である君を通報すればいいし」


 少しブラフをかける……いや、ブラフでもないか。どちらにせよ、通報なんていまはどうでもいい。

それより気になっているのは……


「で、俺が聞きたいのは何で俺を襲おうとしたんだ? どう考えてもその格好は、無差別に襲う奴の格好じゃないだろ」


 アリージメントサーチはズームすればするほど、情報が正確になっていく。初期の点だらけの情報に比べ、今は相手を限定して探知しているため姿形服装ですら読み取れる。

 擬似千里眼とでも言おうか。


 それで、侵入者の服装なのだが。

 液体入りシリンダー10本。空のシリンダーが20本。20個のウエストポーチ。暗視ゴーグル。注射器10本。極め付きはガスマスクと脚ベルトにナイフが5本ずつあった。


 こいつは何に染まろうとしているのだろうか? まぁ、格好的には完全に犯罪者のそれであって___


 バタン


「嶋崎悠夜……。この人、本当何でもありだな。シリンダー10本で漸くって。睡眠煙(スリープボール)も効かなかったから焦ったよ」


「…………」


 悠夜は気絶するように眠った。







「___さん___さん、しま__さん、嶋崎さん」


「んあ?」


 体を揺さぶられながら誰の声かと目を開ければ、そこには狭山さんが居た。


 その状況に少し戸惑いながら眠気まなこを擦り、体を起こすが体が痛い。それでも、取り敢えずは返事をしようと顔を痛みに顰めながら返事をした。


「おはようございます、狭山さん」


 頭がぼんやりとし、眠気が軽くジョブしてくるので眠たい。だが、意識を無理やり保たせていると眠気も取れてきた。


 数刻の時間の後。


 あれ? まて、狭山さん?


 気付いた違和感に顔を狭山さんに向けると、確かに狭山さんが居た。


「あの、狭山さん。一つ聞きたいのですが」


「はい」


「なんで俺の部屋なんかに?」


 俺は部屋で寝ていた。なのに何故狭山さんがいるんだ……というか、どうやって入った。


 そんなハテナを作って聞くと、狭山さんは困り顔で答えた。


「何言ってるんですか。ここ、フロント広間ですよ」


「え……?」


 困惑___


 悠夜は辺りを見回した。


 バカ広い空間、フロントと受付の人。素朴かつ豪華な絵画。そんな空間に、俺の使用している部屋の面影と言えるテレビは無い。


 確かに、俺の部屋じゃない……。あれ? 俺、部屋の鍵持ってるし、用意済みのバックを背負ってるんだけど、なんでだ。


 眉をひそめ頭を掻く。目を瞑り昨日の記憶を思い出す。


 そうした混乱の果てに、悠夜は思い出した。


 まて、そういや俺、昨日襲われたんだ。怪しい変態に……。ナイフやシリンダー、注射器で、ってあれ? よくよく考えたら俺はもしや、殺されるところだったのか?


「嶋崎さんっ!」


「はいっ、な、なんですか?」


 驚きのあまり声を裏返した。


「あの、取り敢えず行きましょう。どうやら外が凄いことになってるので、今から裏口に出て出発するそうです」


「そと……?」


 そう思い、顔を左に向けると沢山のテレビカメラとマイクを持った人たちが、開かない自動ドアに阻まれていた。


「あー、なるほど」


 あれはちょっと、面倒だな。うん。


 所謂マスコミという奴らだろう。なんか目がイッてるのだが、やはりこのダンジョンに関するネタは美味しいのだろう。


「行きましょうか」


「そうですね」


 俺は鍵をフロントに返し、裏口まで狭山さんに連れていってもらった。

 そうして外に出ると、既に昨日の人達が武器を背負ったり携えたりしていた。他にも30人くらいの黒いスーツを着込んだ方々も。


「あー、嶋崎さん。何処にいたんですか?」


 川端さんはそう言って近づいてきた。


「いや、すいません。ちょっと自分でも分かんなくて……」


「なんですかそれ……」という呆れた言葉に「あはは」とから笑いがでる。


 だってしょうがないじゃん、分かんないもん。


「えっと、ではこれで全員揃いましたね。ではついてきて下さい」


 河田さんが指揮を執るようだ。

 その言葉に隊列を取るわけでもなく、各々夢想しながら軽い足音でついて行った。



 そうしてダンジョンまで先導されていると、突然声が発せられた。



「いたぞ!」



 その一声に全ての人の目がこちらに向いた。


 マスコミに囲まれながらダンジョンに入るのは想像ついていたが、なんかもう嫌だ。


 そんな事を考えていると、30人程の黒スーツの人達が俺たちを囲み出した。

 それに皆唖然とする。


「ボディーガード……です。取材とかは軽く受けてあげて下さい」


 ボディーガード……。


 この人らに囲まれて移動する姿って、なんか傍から見たら面白いんだろうな。


「あの! 今回一般の方がダンジョンに潜るという事なのですが、今のお気持ちは!?」


「武器の使用はどのような感じでしたか!」


「冒険者の宿について詳しくお願いしてもよろしいでしょうか!?」


「ダンジョンの中にいる魔物はゲームの敵と似ているという話なのですが、そこらへんはどうなんでしょうか!」


「レベルの差とはどのような感じなんですか!」


 だけど一つ言わせろ。俺らは聖徳太子じゃねぇ。


 誰に答えているのかも分からず、ダンジョンのゲートに着くまで精神的に揉みくちゃにされた。

お読みいただきありがとうございました


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